平和 新たな始まり 南北「板門店」会談③ 平和体制への転換期
首都ソウルから電車とバスを乗り継いで約1時間半。韓国北西部の坡州市には、いまは北朝鮮となった故郷の地を思う時に訪れる臨津閣があります。平和公園として整備されており、故郷の墓を訪れることができない人のために設けられた望拝壇や、朝鮮戦争(1950~53年)の時に爆破された橋の遺構などが残されています。
南北を分ける軍事境界線から南に約7キロに位置し、展望台に上ると、すぐ手前に臨津江が見えます。川の向こうには山があり、直接、北朝鮮を見ることはできません。
「この山の奥には開城工業団地がある」「平壌の方向はあっちだ」―。平日にもかかわらず、子ども連れやカップルなどたくさんの人が訪れていました。
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4月30日、韓国北西部坡州市にある臨津閣の展望台から北朝鮮の方向を見る少年
あの橋を渡り父親を故郷に
ソウルから夫が運転する車で来たイ・チョンジャさん(63)は「南北首脳会談を見て、思い立ってここに来た」と笑顔で語ります。
27日に行われた南北首脳会談の「板門店宣言」には、朝鮮戦争の終結が盛り込まれました。「もちろん大歓迎です。戦争の心配がなくなることはいいことでしょう。政治も民間も、もっと交流を活発にできたらいい」
ソウル近郊の水原市からきた男性(51)は、父親が北朝鮮にある成鏡北道の出身だと教えてくれました。
「父親は板門店宣言を聞いて、故郷を訪ねることができるかもしれないと言っていた。違う国として発展したが一つの民族には変わりはない。いつか、あの橋を渡って父親を故郷に連れて行きたい」と臨津江にかかる鉄橋を指差しました。
「韓国の軍隊」の著者、翰林大学の尹載善(ユンジェソン)教授は「(休戦から)65年間、韓国の国民は分断と徴兵という悲しみを背負ってきた」と語り、宣言の「戦争終結」に注目します。
徴兵制廃止へ議論の開始も
韓国は、北朝鮮の脅威を理由に徴兵制を敷いてきました。尹氏は「戦争の終結によって軍縮に向かえば、韓国社会に大きな変化が起きる」と語ります。「北朝鮮は若い人材を産業に回したいという思いがある。軍隊維持にはお金もかかる。これは韓国も同じで、徴兵制の廃止や募兵制の議論が始まるだろう」と指摘します。
コリアン・ポリティクス編集長の徐台教(ソテギョ)さんは、「終戦へのチャンス」と語る一方、「長く、険しい道になる」と分析します。
終戦から平和体制への移行で、担保となるのは「北朝鮮の体制保障」です。徐さんは、今後、平和協定の締結や北朝鮮の体制保障のための米朝国交正常化などを進めるためにも、「北朝鮮の核放棄は欠かせない課題だ」と強調しました。
29日、韓国大統領府は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)国務委員長が会談で「今後しばしば会って米国と信頼を積み重ね、(朝鮮戦争の)終戦と(北朝鮮への)不可侵を約束すれば、なぜわれわれが核を持って、苦しく生きていくのか」と語ったと発表しました。
65年続いた休戦状態から平和体制へ―。「朝鮮半島はいま大きな転換期を迎えている」(勇氏)といえます。(坡州市=栗原千鶴 写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月1日付掲載
北朝鮮の方を眺望できる「臨津閣」って平和公園があるんですね。
南北間に平和条約が結ばれることになると、両国の軍事費も減らせて経済発展に…
首都ソウルから電車とバスを乗り継いで約1時間半。韓国北西部の坡州市には、いまは北朝鮮となった故郷の地を思う時に訪れる臨津閣があります。平和公園として整備されており、故郷の墓を訪れることができない人のために設けられた望拝壇や、朝鮮戦争(1950~53年)の時に爆破された橋の遺構などが残されています。
南北を分ける軍事境界線から南に約7キロに位置し、展望台に上ると、すぐ手前に臨津江が見えます。川の向こうには山があり、直接、北朝鮮を見ることはできません。
「この山の奥には開城工業団地がある」「平壌の方向はあっちだ」―。平日にもかかわらず、子ども連れやカップルなどたくさんの人が訪れていました。
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4月30日、韓国北西部坡州市にある臨津閣の展望台から北朝鮮の方向を見る少年
あの橋を渡り父親を故郷に
ソウルから夫が運転する車で来たイ・チョンジャさん(63)は「南北首脳会談を見て、思い立ってここに来た」と笑顔で語ります。
27日に行われた南北首脳会談の「板門店宣言」には、朝鮮戦争の終結が盛り込まれました。「もちろん大歓迎です。戦争の心配がなくなることはいいことでしょう。政治も民間も、もっと交流を活発にできたらいい」
ソウル近郊の水原市からきた男性(51)は、父親が北朝鮮にある成鏡北道の出身だと教えてくれました。
「父親は板門店宣言を聞いて、故郷を訪ねることができるかもしれないと言っていた。違う国として発展したが一つの民族には変わりはない。いつか、あの橋を渡って父親を故郷に連れて行きたい」と臨津江にかかる鉄橋を指差しました。
「韓国の軍隊」の著者、翰林大学の尹載善(ユンジェソン)教授は「(休戦から)65年間、韓国の国民は分断と徴兵という悲しみを背負ってきた」と語り、宣言の「戦争終結」に注目します。
徴兵制廃止へ議論の開始も
韓国は、北朝鮮の脅威を理由に徴兵制を敷いてきました。尹氏は「戦争の終結によって軍縮に向かえば、韓国社会に大きな変化が起きる」と語ります。「北朝鮮は若い人材を産業に回したいという思いがある。軍隊維持にはお金もかかる。これは韓国も同じで、徴兵制の廃止や募兵制の議論が始まるだろう」と指摘します。
コリアン・ポリティクス編集長の徐台教(ソテギョ)さんは、「終戦へのチャンス」と語る一方、「長く、険しい道になる」と分析します。
終戦から平和体制への移行で、担保となるのは「北朝鮮の体制保障」です。徐さんは、今後、平和協定の締結や北朝鮮の体制保障のための米朝国交正常化などを進めるためにも、「北朝鮮の核放棄は欠かせない課題だ」と強調しました。
29日、韓国大統領府は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)国務委員長が会談で「今後しばしば会って米国と信頼を積み重ね、(朝鮮戦争の)終戦と(北朝鮮への)不可侵を約束すれば、なぜわれわれが核を持って、苦しく生きていくのか」と語ったと発表しました。
65年続いた休戦状態から平和体制へ―。「朝鮮半島はいま大きな転換期を迎えている」(勇氏)といえます。(坡州市=栗原千鶴 写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月1日付掲載
北朝鮮の方を眺望できる「臨津閣」って平和公園があるんですね。
南北間に平和条約が結ばれることになると、両国の軍事費も減らせて経済発展に…