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日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」⑤ 営利目的で官データ利用

2018-05-29 18:16:39 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」⑤ 営利目的で官データ利用

グーグルなどの大企業がデータ産業を席巻する中、日本政府と財界は、公的機関が保有する個人データを民間が営利目的で利用できる制度をつくってきました。
経団連は、2013年から企業のニーズの高い行政機関が保有する公共データを調査し、公共データを産業に利用する施策を政府に提言していました。これを受けて15年9月に改定した個人情報保護法は、法律の目的に「新たな産業の創出」を追加し、16年5月に改定した行政機関等個人情報保護法ではデータ利用制度の法的枠組みを盛り込みました。
経団連は16年7月に「データ利活用推進のための基本法を早期に制定」することを要求。政府は同年12月には「官民データ活用推進基本法」を成立させました。安倍晋三首相を議長とする「官民データ活用推進戦略会議」が設置されました。
16日に与党などの賛成で成立した生産性向上特別措置法では、主務大臣から認定を受けた事業者が、国や独立行政法人に対して、データの提供を要請できる制度を盛り込みました。公的機関が提供できるデータは個人情報も含まれます。


欧州の一般的データ保護規則と日本の個人情報保護法の比較
項目一般データ保護規則個人情報保護法
消去の権利(「忘れられる権利」)データが必要でない場合や違法に取り扱われている場合に、個人がデータを消去させる権利を持つ(第17条)条文規定なし
データポータビリティ(データ持ち運び)の権利個人が企業に提供したデータを取り戻し、他の企業に移転させる権利を有する(第20条)条文規定なし
罰則最大2000万ユーロ(約26億円)もしくは、世界全体における売上総額の4%の制裁金(第83条)30万円以下の罰金、または6カ月以下の懲役


個人特定の恐れ
政府は、公的機関が個人情報を提供する場合、氏名や住所を削除するなどして個人を特定できないよう「非識別加工」を施すとしています。ところが、公的機関から得た情報を、顔写真や名前を公表しているインターネット交流サイト(SNS)の情報などと組み合わせることによって個人が特定される危険性があります。個人情報保護委員会が作成したガイドラインでも、個人情報が復元される技術的な可能性をすべて排除することを行政機関に求めていません。
公的機関のデータを活用したい企業と、データを保有する省庁が直接対話する場として「オープンデータ官民ラウンドテーブル」が内閣官房情報通信技術総合戦略室の主催で18年1月から開催されています。
同会議では、SNSの利用状況、免税品の購入データなどの観光庁や国税庁が保有する訪日外国人に関するデータの提供を、民間事業者が要望しました。提供されたデータと、SNSなどのデータを組み合わせることで訪日外国人の観光行動を詳細に分析する事業を提案しています。
企業が注目しているのは、公的機関のデータを他の情報を組み合わせることで付加価値を生むサービスです。組み合わせた結果、個人が特定された情報が、流出した場合にプライバシーが侵害される恐れがあります。ところが、個人情報が流出した結果については、誰も責任をとらないことが明らかになりました(15日、日本共産党の岩渕友参院議員の質問)。
公的データを、非識別加工すれば民間ビジネスに提供できる制度は、日本以外の国にはありません。住民票や社会保険、就学などの公的機関が保有する個人情報は、国民が行政サービスを受けるために、提供せざるを得ないものです。その情報を民間企業の営利目的に利用するのは、提供した国民が認識していない目的での利用です。
欧米では一部の大企業がデータ産業で独占的な地位を占める状況を受けて、個人情報を保護する規制を強めています。

貧弱な情報保護
欧州委員会は25日に一般データ保護規則(GDPR)を施行し、情報を取り扱う企業に対する規制を厳しくしました。GDPRは、個人の尊厳を守る観点で、個人情報に関するさまざまな権利を規定しています。個人が企業に提供したデータの削除を求められる「忘れられる権利」や、企業に提供したデータを取り戻し、他の企業に移転できる「データポータビリティ(データ持ち運び)の権利」などを明記。これらの権利は日本の個人情報保護法には記載されていません(4月10日、衆院経済産業委員会、福家秀紀参考人に対する笠井亮議員の質問)。
欧州に比べると、日本の個人情報保護制度はぜい弱です。個人情報を守る対策を進めず、データの利活用だけを進めれば、憲法が保障する個人の尊厳が、企業利益のために犠牲になる危険があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月29日付掲載


欧州の一般的な情報の保護規定と比べても、日本の情報保護の規制はザル法とも言えるもの。
官の持っている個人情報を民間に開放するってもってのほか。