新型コロナ 感染の脅威 不安に感じたら① 誰もがかかる可能性がある 今つらくても必ず変わるよ
新型コロナウイルスが、前例のない感染爆発の局面を迎えています。医療崩壊が叫ばれる中で、これまでになく感染の脅威が身近となり、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。精神科医で2児の母親でもある増田史(ふみ)さん(滋賀医科大学精神科助教)に対処法などを書いてもらいました。
滋賀医科大学精神科助教 増田史さん
感染した場合には、ただでさえ自分の体調に関する不安でいっぱいなのに、さらに周囲の家族や友人、同僚らに感染を広げてしまうかもしれないと心配して、非常に苦しい状況に追い込まれることが少なくないようです。体調そっちのけで謝罪を繰り返している方もいます。これでは心身ともに休まる暇もありません。
ところが「周囲に感染を広げてしまったのではないか」という不安や恐怖は、あまり積極的に共有されていないように見えます。これには“感染は自業自得である”というような一部の考え方が関連しているかもしれません。誰かに相談したくても「あなたが悪い」と非難されるだけだと思い、不安な気持ちを自分一人で抱え、孤独に陥ってしまうこともあります。
しかし、現在流行の主流を占めるデルタ株は感染力が極めて高いことを考えても、誰がいつ感染してもおかしくない状況であることは間違いありません。どれだけ感染しないように気を付けていても、残念ながら感染してしまうことはあるといえます。こんなに頑張っていたのになぜ自分が?と絶望することもあるでしょう。
出版されたばかりの増田さんの著書『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(ナツメ社税別1300円)。思春期の中高生をはじめ心がつらくなった方に、自身の体験を踏まえて対処法をやさしく語りかけます
落ち込んだときにはセルフケアを
時間と場所を区切ってみる
ここでは、感染に関連して周囲の人との関係に悩んだときや、落ち込んだときに使えるセルフケアについて、いくつか紹介したいと思います。
もしどうしようもなく自己嫌悪に陥ったり、誰も信じられない気分になったりしたときは、ひとまず、時間と場所を区切ってみましょう。たとえば「今から30分間は、他の人のことを考えなくてよい、自分だけの時間にする」などと決めるのです。その間は携帯電話もオフにします。家族にも宣言して協力してもらいます。
なるべく場所も工夫してみましょう。もちろん自分の部屋そのままでもよいのですが、自分の周りをついたてや布団などで囲うか、あるいはぬいぐるみなどを丸く床に置いて、その中に入ってもよいでしょう。
「ここの中は邪魔されない場所」という場所を、区切って作ってみましょう。
時間と場所が区切れたら、まずはゆっくりと深呼吸をしてみましょう。呼吸に集中して、まずは10数えながら吐ききると効果的です。いろいろな考えが浮かんできても、呼吸と数を数えることに集中してみてください。
そして自分に向かって「ほんとうによく頑張っているね、しんどかったよね」「早く元気になっていいんだよ、待ってるよ」とねぎらってあげてください。あとの時間は自由です。自分のことだけを考えて、その時間を使ってみてください。
眠れないほど責めなくても
考え方の工夫も大切です。たとえ感染経路で思い当たる節があったとしても、夜も眠れないくらい、自分を責めるべきなのでしょうか。そもそも一番の原因は新型コロナウイルスそのものです。そして「偶然」や「運」の分も背負いすぎていませんか。自分でどうこうできなかった部分にまで責任を負う必要はありません。
さらには自分の所属する「社会や組織の構造的問題」はどうでしょうか。誰か強い人に、自分のせいだと思わされていませんか。
一つひとつ確かめて、今のつらい状況をもたらした要素をノートに書き出してみましょう。そして、それぞれの要素がどのくらい影響しているのか考えてみましょう。全体を100とした時、あなた自身の責任はどれくらいになりそうですか。思っていたより小さいかもしれません。
大切なことは、あなたの心も他人の心も、そしてあなたを取り巻く状況も必ず変化していくことを忘れないことです。今まさに絶望していて、もうどうしようもなく八方ふさがりだと感じていたとしても、必ず変化していきます。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月31日付掲載
新型コロナに感染してしまった時。肺炎をおこして本当に大変な時、酸素吸入を受けている時などは考える余裕もないと思いますが…。
比較的軽症の方。自分を責めて、他に感染させていないか、自分が仕事を休んで迷惑をかけているなど、思考がグルグル巻きになってしまう方がいるとの事。
時間と場所を区切って、これから30分は、この範囲は自分だけの事を考えるって「逃避」することが大事だと。
コロナに感染して、つらいと思っている自分。その要因はどこにあるのか、リストアップしてみます。「偶然」や「運」が左右していて自分に責することは意外にも少ないはず。そうすると、心が落ち着いてくるものです。
新型コロナウイルスが、前例のない感染爆発の局面を迎えています。医療崩壊が叫ばれる中で、これまでになく感染の脅威が身近となり、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。精神科医で2児の母親でもある増田史(ふみ)さん(滋賀医科大学精神科助教)に対処法などを書いてもらいました。
滋賀医科大学精神科助教 増田史さん
感染した場合には、ただでさえ自分の体調に関する不安でいっぱいなのに、さらに周囲の家族や友人、同僚らに感染を広げてしまうかもしれないと心配して、非常に苦しい状況に追い込まれることが少なくないようです。体調そっちのけで謝罪を繰り返している方もいます。これでは心身ともに休まる暇もありません。
ところが「周囲に感染を広げてしまったのではないか」という不安や恐怖は、あまり積極的に共有されていないように見えます。これには“感染は自業自得である”というような一部の考え方が関連しているかもしれません。誰かに相談したくても「あなたが悪い」と非難されるだけだと思い、不安な気持ちを自分一人で抱え、孤独に陥ってしまうこともあります。
しかし、現在流行の主流を占めるデルタ株は感染力が極めて高いことを考えても、誰がいつ感染してもおかしくない状況であることは間違いありません。どれだけ感染しないように気を付けていても、残念ながら感染してしまうことはあるといえます。こんなに頑張っていたのになぜ自分が?と絶望することもあるでしょう。
出版されたばかりの増田さんの著書『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(ナツメ社税別1300円)。思春期の中高生をはじめ心がつらくなった方に、自身の体験を踏まえて対処法をやさしく語りかけます
落ち込んだときにはセルフケアを
時間と場所を区切ってみる
ここでは、感染に関連して周囲の人との関係に悩んだときや、落ち込んだときに使えるセルフケアについて、いくつか紹介したいと思います。
もしどうしようもなく自己嫌悪に陥ったり、誰も信じられない気分になったりしたときは、ひとまず、時間と場所を区切ってみましょう。たとえば「今から30分間は、他の人のことを考えなくてよい、自分だけの時間にする」などと決めるのです。その間は携帯電話もオフにします。家族にも宣言して協力してもらいます。
なるべく場所も工夫してみましょう。もちろん自分の部屋そのままでもよいのですが、自分の周りをついたてや布団などで囲うか、あるいはぬいぐるみなどを丸く床に置いて、その中に入ってもよいでしょう。
「ここの中は邪魔されない場所」という場所を、区切って作ってみましょう。
時間と場所が区切れたら、まずはゆっくりと深呼吸をしてみましょう。呼吸に集中して、まずは10数えながら吐ききると効果的です。いろいろな考えが浮かんできても、呼吸と数を数えることに集中してみてください。
そして自分に向かって「ほんとうによく頑張っているね、しんどかったよね」「早く元気になっていいんだよ、待ってるよ」とねぎらってあげてください。あとの時間は自由です。自分のことだけを考えて、その時間を使ってみてください。
眠れないほど責めなくても
考え方の工夫も大切です。たとえ感染経路で思い当たる節があったとしても、夜も眠れないくらい、自分を責めるべきなのでしょうか。そもそも一番の原因は新型コロナウイルスそのものです。そして「偶然」や「運」の分も背負いすぎていませんか。自分でどうこうできなかった部分にまで責任を負う必要はありません。
さらには自分の所属する「社会や組織の構造的問題」はどうでしょうか。誰か強い人に、自分のせいだと思わされていませんか。
一つひとつ確かめて、今のつらい状況をもたらした要素をノートに書き出してみましょう。そして、それぞれの要素がどのくらい影響しているのか考えてみましょう。全体を100とした時、あなた自身の責任はどれくらいになりそうですか。思っていたより小さいかもしれません。
大切なことは、あなたの心も他人の心も、そしてあなたを取り巻く状況も必ず変化していくことを忘れないことです。今まさに絶望していて、もうどうしようもなく八方ふさがりだと感じていたとしても、必ず変化していきます。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月31日付掲載
新型コロナに感染してしまった時。肺炎をおこして本当に大変な時、酸素吸入を受けている時などは考える余裕もないと思いますが…。
比較的軽症の方。自分を責めて、他に感染させていないか、自分が仕事を休んで迷惑をかけているなど、思考がグルグル巻きになってしまう方がいるとの事。
時間と場所を区切って、これから30分は、この範囲は自分だけの事を考えるって「逃避」することが大事だと。
コロナに感染して、つらいと思っている自分。その要因はどこにあるのか、リストアップしてみます。「偶然」や「運」が左右していて自分に責することは意外にも少ないはず。そうすると、心が落ち着いてくるものです。