「経労委報告」を読む③ 惨事便乗型の「改革」
労働総研事務局長 藤田実さん
今年の『経労委報告』は、苦境にあえいでいる国民生活に目を向けていないだけではなく、コロナ禍を利用して賃金制度や働き方を変えようという「惨事便乗型」となっています。
とくにコロナ禍でテレワークが普及し、コロナ後も定着することをにらんで、「柔軟な働き方」の推進を掲げ、労働法制の規制緩和を求めています。
テレワークにおけるフレックスタイム制や「事業場外みなし労働時間制」の導入・拡大、厚労省ガイドラインにおける時間外・休日・深夜労働の原則禁止の見直し、裁量労働制の対象拡大、「ジョブ型雇用」の導入、副業・兼業の推進などを提言しています。
コロナ禍で在宅勤務の時間管理が問題になっています。
時間管理を緩和
テレワークにおける労働時間管理のあり方を検討すべきであるとしています。現行法制では、テレワークでも労働基準法の労働時間管理原則が適用されます。2019年4月施行の改正労働安全衛生法では、「事業者は、高度プロフェッショナル制度適用者を除く全労働者について、その労働時間の状況を、客観的な方法等によって把握しなければならない」と定めていますが、財界は「柔軟な働き方」による労働生産性向上を妨げていると考えています。
在宅勤務の場合、私生活時間と労働時間をどう区別するか、どのように労働時間を正確に把握するかが問題になります。
しかし、労働時間管理が難しいからと言って、『経労委報告』が主張するように、労働時間管理を「柔軟」にしたり、労働時間管理を行わないように規制緩和したりすれば、長時間労働が野放しになりかねません。
厚労省の委託調査(2020年11月)では、時間外、深夜・休日労働に関して、在宅勤務の方が多いという回答は少ない(企業調査)ものの、労働者調査では時間外労働を「働いた時間よりも実際には短く報告することが多い」と回答しています。
連合の調査では、時間外・休日労働を行った労働者は38・1%、時間外休日労働を申告しなかったことがある労働者は65・1%にのぼります。その結果、通常の勤務よりも長時間労働になることがあった労働者は51・5%になります。家庭内では、労働時間が私生活に容易に食い込みやすいからです。
自律的働き方を
このように、テレワークでは目標設定が過大な場合には、長時間労働になりやすく、評価を恐れて正確な労働時間を申告しないケースが多くあります。
労働時間管理の規制緩和や管理なしの制度を導入すれば、家庭内で長時間労働となり、私生活が圧迫される場合が出てきます。テレワークを真に自律的な働き方にするためには、労働時間が私生活に食い込まないように、在宅勤務中の「つながらない権利」の確立が必要です。EUでもコロナ禍でリモートワークが拡大し、時間外でのメール対応が増加したといいます。そこで、「勤務時間外や休日などに、仕事上のメッセージや電話への対応を拒否する権利」の確立を求める動きが出ています。リモートワークを推進するならば、日本でも「つながらない権利」の確立が必要です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月23日付掲載
コロナ禍のもと在宅勤務が増えています。在宅勤務の場合は、満員電車での通勤が無くなるってメリットはありますが、私生活と労働時間との区別が難しいって問題が発生します。
実際の労働時間の自主申告ができる仕組み、権利が求められます。
労働総研事務局長 藤田実さん
今年の『経労委報告』は、苦境にあえいでいる国民生活に目を向けていないだけではなく、コロナ禍を利用して賃金制度や働き方を変えようという「惨事便乗型」となっています。
とくにコロナ禍でテレワークが普及し、コロナ後も定着することをにらんで、「柔軟な働き方」の推進を掲げ、労働法制の規制緩和を求めています。
テレワークにおけるフレックスタイム制や「事業場外みなし労働時間制」の導入・拡大、厚労省ガイドラインにおける時間外・休日・深夜労働の原則禁止の見直し、裁量労働制の対象拡大、「ジョブ型雇用」の導入、副業・兼業の推進などを提言しています。
コロナ禍で在宅勤務の時間管理が問題になっています。
時間管理を緩和
テレワークにおける労働時間管理のあり方を検討すべきであるとしています。現行法制では、テレワークでも労働基準法の労働時間管理原則が適用されます。2019年4月施行の改正労働安全衛生法では、「事業者は、高度プロフェッショナル制度適用者を除く全労働者について、その労働時間の状況を、客観的な方法等によって把握しなければならない」と定めていますが、財界は「柔軟な働き方」による労働生産性向上を妨げていると考えています。
在宅勤務の場合、私生活時間と労働時間をどう区別するか、どのように労働時間を正確に把握するかが問題になります。
しかし、労働時間管理が難しいからと言って、『経労委報告』が主張するように、労働時間管理を「柔軟」にしたり、労働時間管理を行わないように規制緩和したりすれば、長時間労働が野放しになりかねません。
厚労省の委託調査(2020年11月)では、時間外、深夜・休日労働に関して、在宅勤務の方が多いという回答は少ない(企業調査)ものの、労働者調査では時間外労働を「働いた時間よりも実際には短く報告することが多い」と回答しています。
連合の調査では、時間外・休日労働を行った労働者は38・1%、時間外休日労働を申告しなかったことがある労働者は65・1%にのぼります。その結果、通常の勤務よりも長時間労働になることがあった労働者は51・5%になります。家庭内では、労働時間が私生活に容易に食い込みやすいからです。
自律的働き方を
このように、テレワークでは目標設定が過大な場合には、長時間労働になりやすく、評価を恐れて正確な労働時間を申告しないケースが多くあります。
労働時間管理の規制緩和や管理なしの制度を導入すれば、家庭内で長時間労働となり、私生活が圧迫される場合が出てきます。テレワークを真に自律的な働き方にするためには、労働時間が私生活に食い込まないように、在宅勤務中の「つながらない権利」の確立が必要です。EUでもコロナ禍でリモートワークが拡大し、時間外でのメール対応が増加したといいます。そこで、「勤務時間外や休日などに、仕事上のメッセージや電話への対応を拒否する権利」の確立を求める動きが出ています。リモートワークを推進するならば、日本でも「つながらない権利」の確立が必要です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月23日付掲載
コロナ禍のもと在宅勤務が増えています。在宅勤務の場合は、満員電車での通勤が無くなるってメリットはありますが、私生活と労働時間との区別が難しいって問題が発生します。
実際の労働時間の自主申告ができる仕組み、権利が求められます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます