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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

田沢湖姫観音と朝鮮人強制労働② 生保内発電所建設工事

2019-12-27 08:22:22 | 平和・憲法・歴史問題について
田沢湖姫観音と朝鮮人強制労働② 生保内発電所建設工事
茶谷十六

1940(昭和15)年に完成した生保内(おぼない)発電所建設工事は、東北地方を食糧生産と軍需産業の一大基地につくりかえようという「東北振興政策」の一環として立案された国策事業であった。

1934(昭和9)年、東北地方は冷害による空前の大凶作に襲われた。もともと窮乏にひんしていた東北地方の産業の開発と経済の振興を図るために、内閣東北局が直轄する国策会社として東北興業株式会社と東北振興電力株式会社が設立されたのは36(昭和11)年のことであった。
東北振興電力株式会社は、同地方の潤沢な水資源を活用して低廉で豊富な電力を供給することを目的として設立された。資本金3千万円、36年から45年までの10年間に、阿武隈川、田沢湖ほか数カ所に水力発電所を建設し、合計約15万キロワットの電力を開発しようという巨大プロジェクトであった。
一戸富士雄著『国家に翻弄された戦時体制下の東北振興政策―軍需品生産基地化への変貌』(文理閣)は、もともと東北地域住民への救済策として始まったはずの振興政策が、日中戦争開戦を契機に国家目的としての軍需生産推進政策へと変貌させられていく過程を詳細に解明している。



現在の東北電力生保内発電所

生保内発電所建設工事は、まさにその典型例であり、38(昭和13)年2月の着工から40年1月の運転開始までわずか2年間という、文字通りの突貫工事であった。
本来、水力発電所の建設にあたっては、河川の峡谷にダムを建設して貯水池を作り、その落下を利用して発電するというのが当然のあり方である。この常識をくつがえして、田沢湖の湖水を落下させていきなり発電しようという途方もない計画が持ち上がった。これが生保内発電所だ。
田沢湖はカルデラ湖、天然の水がめのような湖水を抜けば、たちまち水位は下がる。これを防ぐために上流から2本の導水路が掘削された。玉川導水路1・87キロ、先達川(せんだつかわ)導水路4・01キロ。これに田子(たご)の木取水口から発電所までの導水路2・63キロ、すべて手作業で行なわれたこの工事は、今日では想像もできないような難工事だった。
この途方もない工事が、いくつもの異常事態を生み出すことになる。
(ちゃだに・じゅうろく 秋田県歴史教育者協議会会長)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年12月4日付掲載


東北地方の産業復興の名目での生保内発電所建設などの一連の工事。途方もない難工事となり、様々な事態を起こすことに。

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