岸田政権の経済・財政運営をよむ② 古臭い「官民連携」
岸田文雄政権が「骨太の方針」で「新しい資本主義の中核」と位置付けたのは「新たな官民連携」です。なかでも「PFI」(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ=民間資金の活用)を「抜本的に強化する」と強調しています。
PFIは、新自由主義真っ盛りの1990年代英国で導入された、公共サービス営利化・民営化の一手法にすぎません。
PFIの特徴は、公共施設の建設、維持管理、運営などを営利企業の資金と人員で行う点にあります。一般的に、事業費は金融機関からの融資で調達された後、自治体が支払うサービス購入費や住民が支払う利用料によって回収されます。複数の営利企業のグループでつくる特別目的会社(SPC)が事業主体となり、複数の事業を一括受注します。
多くの弊害発生
世界各地で公共サービスが営利化・民営化され、多くの弊害が起きています。▽人員削減によるサービスや品質の低下▽設備投資の不足による重大事故の発生▽議会と住民によるコントロールの欠如▽不透明な財務情報に基づく高額の料金設定―などです。
日本でも1999年にPFI法が制定され、道路・空港・上下水道・医療施設(医療行為を除く)などでPFI事業が実施されてきました。会計検査院の報告(2021年5月)によると、自治体のサービス購入費に依存する27のPFI事業では、自治体が運営する従来方式と比べ、維持管理費が1・06~2・85倍も高額でした。他方、各地で住民が運動に立ち上がり、水道の民営化を阻止しています。
岸田政権は3日、PFIなど「官民連携」の事業規模を今後10年間で30兆円拡大する行動計画をまとめました。「上下水道について、民間提案に対応することを補助金の交付要件とする」など、「各府省の支援策を拡充・集中投入」して、しゃにむに民営化を進める構えです。施設の所有権を自治体に残して運営権を営利企業に売却するコンセッション(運営権)方式についても、従来の空港・水道・工業用水に加え、文化・社会教育施設や公園などに拡大して加速する方針を掲げました。
宮城県の水道民営化を受け「水道民営化ストップ」と訴える「水道料金値上げに反対する川口市民の会」の人たち=4月1日、埼玉県川口市
新たな法人形態
もう一つ、「骨太の方針」が「新たな官民連携」の柱に据えたのが「民間で公的役割を担う新たな法人形態」の創設です。岸田政権の「新しい資本主義実行計画」は「医療、介護、教育」などの公的分野をあげ、「民間の主体的な関与が期待されている」と強調。「新たな法人形態」の例として欧米の「ベネフィット・コーポレーション」に言及しました。
ベネフィット・コーポレーションは社会と株主の利益を同時に追求する法人とされ、株主訴訟に対して一定の法的保護を受けますが、あくまでも営利法人の一種です。
日本の公的医療・教育や特別養護老人ホームでは、営利法人の参入が原則禁止されています。営利法人の参入を認めれば、利益追求と私的分配(株式配当)によって質の低下や費用の高騰を招く恐れがあるためです。「新たな法人形態」は、こうした規制の突破口とされる危険があります。
岸田政権の「新しい資本主義の中核」にある「官民連携」は、世界各地で失敗している新自由主義の古臭い民営化政策なのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月8日付掲載
岸田文雄政権が「骨太の方針」で「新しい資本主義の中核」と位置付けたのは「新たな官民連携」。なかでも「PFI」(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ=民間資金の活用)を「抜本的に強化する」と強調。
日本でも1999年にPFI法が制定され、道路・空港・上下水道・医療施設(医療行為を除く)などでPFI事業が実施。
「民間に任せられるものは民間に」の小泉・竹中路線の焼き直し。しかし、市民・住民サービスなどは自治体が直接責任を負わないといけません。
民間委託して逆に経費が増えたって話しもあるそうで。
岸田文雄政権が「骨太の方針」で「新しい資本主義の中核」と位置付けたのは「新たな官民連携」です。なかでも「PFI」(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ=民間資金の活用)を「抜本的に強化する」と強調しています。
PFIは、新自由主義真っ盛りの1990年代英国で導入された、公共サービス営利化・民営化の一手法にすぎません。
PFIの特徴は、公共施設の建設、維持管理、運営などを営利企業の資金と人員で行う点にあります。一般的に、事業費は金融機関からの融資で調達された後、自治体が支払うサービス購入費や住民が支払う利用料によって回収されます。複数の営利企業のグループでつくる特別目的会社(SPC)が事業主体となり、複数の事業を一括受注します。
多くの弊害発生
世界各地で公共サービスが営利化・民営化され、多くの弊害が起きています。▽人員削減によるサービスや品質の低下▽設備投資の不足による重大事故の発生▽議会と住民によるコントロールの欠如▽不透明な財務情報に基づく高額の料金設定―などです。
日本でも1999年にPFI法が制定され、道路・空港・上下水道・医療施設(医療行為を除く)などでPFI事業が実施されてきました。会計検査院の報告(2021年5月)によると、自治体のサービス購入費に依存する27のPFI事業では、自治体が運営する従来方式と比べ、維持管理費が1・06~2・85倍も高額でした。他方、各地で住民が運動に立ち上がり、水道の民営化を阻止しています。
岸田政権は3日、PFIなど「官民連携」の事業規模を今後10年間で30兆円拡大する行動計画をまとめました。「上下水道について、民間提案に対応することを補助金の交付要件とする」など、「各府省の支援策を拡充・集中投入」して、しゃにむに民営化を進める構えです。施設の所有権を自治体に残して運営権を営利企業に売却するコンセッション(運営権)方式についても、従来の空港・水道・工業用水に加え、文化・社会教育施設や公園などに拡大して加速する方針を掲げました。
宮城県の水道民営化を受け「水道民営化ストップ」と訴える「水道料金値上げに反対する川口市民の会」の人たち=4月1日、埼玉県川口市
新たな法人形態
もう一つ、「骨太の方針」が「新たな官民連携」の柱に据えたのが「民間で公的役割を担う新たな法人形態」の創設です。岸田政権の「新しい資本主義実行計画」は「医療、介護、教育」などの公的分野をあげ、「民間の主体的な関与が期待されている」と強調。「新たな法人形態」の例として欧米の「ベネフィット・コーポレーション」に言及しました。
ベネフィット・コーポレーションは社会と株主の利益を同時に追求する法人とされ、株主訴訟に対して一定の法的保護を受けますが、あくまでも営利法人の一種です。
日本の公的医療・教育や特別養護老人ホームでは、営利法人の参入が原則禁止されています。営利法人の参入を認めれば、利益追求と私的分配(株式配当)によって質の低下や費用の高騰を招く恐れがあるためです。「新たな法人形態」は、こうした規制の突破口とされる危険があります。
岸田政権の「新しい資本主義の中核」にある「官民連携」は、世界各地で失敗している新自由主義の古臭い民営化政策なのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月8日付掲載
岸田文雄政権が「骨太の方針」で「新しい資本主義の中核」と位置付けたのは「新たな官民連携」。なかでも「PFI」(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ=民間資金の活用)を「抜本的に強化する」と強調。
日本でも1999年にPFI法が制定され、道路・空港・上下水道・医療施設(医療行為を除く)などでPFI事業が実施。
「民間に任せられるものは民間に」の小泉・竹中路線の焼き直し。しかし、市民・住民サービスなどは自治体が直接責任を負わないといけません。
民間委託して逆に経費が増えたって話しもあるそうで。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます