近づくG20サミット 断層① 協調路線打ち出せるか
20力国・地域首脳会議(G20サミット)が7~8日にドイツのハンブルクで開催されます。リーマン・ショックを受けて開かれるようになったG20サミットも12回目を迎えます。経済危機の発生源となった米国でトランプ大統領が登場。日米欧に新興国を加えた国際的枠組みも曲がり角に差し掛かっています。
協同行動での危険回避自賛
最初のG20サミットは2008年11月に開かれ、開催地はワシントンでした。
「世界の金融システムに必要な改革を達成するために、協働することを決意した」と宣言しました。金融システムの欠陥に目を向け、金融規制の強化を公約しました。2回目は09年4月にロンドンで開催されました。経済回復のための世界的計画は、「先進国だけでなく世界の新興市場国や最貧国の勤勉な家族のニーズと雇用をその中心に」置くことを確認。「銀行機密の時代は終わった」ともうたいました。G20サミットを「国際経済協力に関する第一のフォーラム」として位置付けたのが3回目の米ピッツバーグでのサミットでした。経済危機にたいして「これまでで最大かつ最も調整された形で」財政、金融刺激策を各国が採用し「共同して行動」したことで「世界的活動の危険で急激な縮小を食い止めた」と自賛しました。
ピッツバーグ・サミットの意義について、米国経済白書2010年版は、「国際協調と国家的措置」こそが「危機を抑え、世界の国々を回復経路に戻すのに不可欠」だったと指摘。G20会合は、「インドや中国などの枢要な新興経済国の重要性が増していることを反映している」とも述べました。主要国のみが集まった旧来の会合では、世界的な金融・経済危機には対応できないこと、新興国も参加した会合でこそ、可能になるとの認識を示したのです。

イタリアで開催されたG7で話をするトランプ米大統領(右端)とメルケル独首相(左端)=5月27日、タオルミナ(ロイター)
国際政治での利己主義拡大
1980年代以降、多国籍企業が主導したグローバル経済が急速に進みました。富の一極集中が進み、国民には貧困をもたらし、社会が許容できないほどの極端な格差をもたらしました。しかも、金融・経済危機後にも格差は広がりました。そのことを背景に「米国第一」を掲げるトランプ大統領が誕生しました。
今、国際社会は、広がる格差と貧困、移民・難民問題、多国籍企業の税逃れ、さらには気候変動問題に直面しています。トランプ大統領が、これらの課題に国際舞台でどのように対応するのか、注目が高まっています。
最初の多国間会議の舞台となったのが5月26、27日にイタリア・タオルミナで開催された主要7力国(G7)首脳会議でした。
国際協力団体のオックスファムは、「トランプ大統領は、世界の最も貧しい何百万人もの人びとに影響を与える多くの重要課題についての合意を他の誰よりも妨害した張本人である」と厳しく批判しました。
地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱など、国際協調を壊してはばからないトランプ大統領。その存在は、国際政治での利己主義の広がりを示しています。
ドイツで開かれるG20サミットは、その断層を修復し、協調路線を打ち出せるのでしょうか。
メルケル独首相はG20サミットを前に連邦議会で演説。「世界の問題を孤立主義と保護主義を通じて解決できると考える者は大きな間違いを犯している」「サミットでは、G20の首脳が世界に対する非常に大きな責任を自覚し、それを果たしていく決意を示すことを目標にする」と述べました。
世界が直面している課題の解決は待ったなしです。G20サミットがトランプ大統領との決裂を防ぎ、「決意を示す」だけでは十分ではありません。求められているのは、グローバル経済の危機の真の原因を正面に見据えて、それに対処するための具体的対策と実行です。そのための共同行動を打ち出すことこそ、G20サミットの歴史的役割です。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月4日付掲載
アメリカのトランプ大統領。G20の国際舞台で、「米国第一」をいつまでも言い続けるわけにはいかないでしょう。
20力国・地域首脳会議(G20サミット)が7~8日にドイツのハンブルクで開催されます。リーマン・ショックを受けて開かれるようになったG20サミットも12回目を迎えます。経済危機の発生源となった米国でトランプ大統領が登場。日米欧に新興国を加えた国際的枠組みも曲がり角に差し掛かっています。
協同行動での危険回避自賛
最初のG20サミットは2008年11月に開かれ、開催地はワシントンでした。
「世界の金融システムに必要な改革を達成するために、協働することを決意した」と宣言しました。金融システムの欠陥に目を向け、金融規制の強化を公約しました。2回目は09年4月にロンドンで開催されました。経済回復のための世界的計画は、「先進国だけでなく世界の新興市場国や最貧国の勤勉な家族のニーズと雇用をその中心に」置くことを確認。「銀行機密の時代は終わった」ともうたいました。G20サミットを「国際経済協力に関する第一のフォーラム」として位置付けたのが3回目の米ピッツバーグでのサミットでした。経済危機にたいして「これまでで最大かつ最も調整された形で」財政、金融刺激策を各国が採用し「共同して行動」したことで「世界的活動の危険で急激な縮小を食い止めた」と自賛しました。
ピッツバーグ・サミットの意義について、米国経済白書2010年版は、「国際協調と国家的措置」こそが「危機を抑え、世界の国々を回復経路に戻すのに不可欠」だったと指摘。G20会合は、「インドや中国などの枢要な新興経済国の重要性が増していることを反映している」とも述べました。主要国のみが集まった旧来の会合では、世界的な金融・経済危機には対応できないこと、新興国も参加した会合でこそ、可能になるとの認識を示したのです。

イタリアで開催されたG7で話をするトランプ米大統領(右端)とメルケル独首相(左端)=5月27日、タオルミナ(ロイター)
国際政治での利己主義拡大
1980年代以降、多国籍企業が主導したグローバル経済が急速に進みました。富の一極集中が進み、国民には貧困をもたらし、社会が許容できないほどの極端な格差をもたらしました。しかも、金融・経済危機後にも格差は広がりました。そのことを背景に「米国第一」を掲げるトランプ大統領が誕生しました。
今、国際社会は、広がる格差と貧困、移民・難民問題、多国籍企業の税逃れ、さらには気候変動問題に直面しています。トランプ大統領が、これらの課題に国際舞台でどのように対応するのか、注目が高まっています。
最初の多国間会議の舞台となったのが5月26、27日にイタリア・タオルミナで開催された主要7力国(G7)首脳会議でした。
国際協力団体のオックスファムは、「トランプ大統領は、世界の最も貧しい何百万人もの人びとに影響を与える多くの重要課題についての合意を他の誰よりも妨害した張本人である」と厳しく批判しました。
地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱など、国際協調を壊してはばからないトランプ大統領。その存在は、国際政治での利己主義の広がりを示しています。
ドイツで開かれるG20サミットは、その断層を修復し、協調路線を打ち出せるのでしょうか。
メルケル独首相はG20サミットを前に連邦議会で演説。「世界の問題を孤立主義と保護主義を通じて解決できると考える者は大きな間違いを犯している」「サミットでは、G20の首脳が世界に対する非常に大きな責任を自覚し、それを果たしていく決意を示すことを目標にする」と述べました。
世界が直面している課題の解決は待ったなしです。G20サミットがトランプ大統領との決裂を防ぎ、「決意を示す」だけでは十分ではありません。求められているのは、グローバル経済の危機の真の原因を正面に見据えて、それに対処するための具体的対策と実行です。そのための共同行動を打ち出すことこそ、G20サミットの歴史的役割です。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月4日付掲載
アメリカのトランプ大統領。G20の国際舞台で、「米国第一」をいつまでも言い続けるわけにはいかないでしょう。
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