検証 日米首脳会談⑤ 同盟でなく共同体へ
「ハブ・アンド・スポークから格子状の戦略的同盟への進化」―。今回の日米首脳会談を前に、エマニュエル駐日米大使はこう繰り返してきました。
格子状の同盟方式
「ハブ・アンド・スポーク」とは、自転車の車輪のように、米国が中軸(ハブ)となり、放射線状に同盟関係を結ぶ方式です。日米安保体制をはじめ、米国が構築してきた伝統的な同盟網は、基本的にこうした方式です。
これに対して「格子状」とは、米国の同盟国同士が結びつく、多国間の同盟関係を意味します。その狙いは、インド太平洋地域での中国との覇権争いに勝利するためです。米国はいずれ、軍事・経済両面で中国が上回ると予測。「ハブ」が弱体化し、同盟国を従えなければ勝利できないのが実情です。
バイデン政権は既に、米英豪の軍事的枠組み「AUKUS(オーカス)」や日米豪印の枠組み「QUAD(クアッド)」など、多国間の枠組みを強化。今回の日米首脳共同声明では、①日米豪の「防空」網構築や無人航空機の開発などに関する協力②先端技術面でAUKUSと日本の協刀を検討③日米英の定期共同訓練の開始1などに言及しました。
首脳会談翌日の4月11日には初の日米比首脳会談が開かれ、中国の覇権主義的行動を念頭に「海洋安全保障」強化で一致しました。
初の3カ国首脳会談に臨む(右から)岸田文雄首相、バイデン米大統領、マルコス・フィリピン大統領=4月11日、ワシントン(ロイター)
平和の枠組みこそ
米国が排他的な軍事ブロックを強化すれば、中国も同じ対応に走るのは必然です。
防衛省のシンクタンク・防衛研究所は昨年11月の報告書で、中ロが「事実上の同盟国関係に入ることが予想される」と指摘。実際、日本周辺における中ロの共同訓練が質量ともに強化されています。
覇権主義的な傾向を強める両国の結びつきは世界の平和と安定に対する深刻な懸念です。ロシアのウクライナ侵略をめぐっても、中ロ関係の強化は、「侵略戦争をやめろ」という世界の団結の障害になっています。
こうしたブロック対応の強化は世界の分断を強め、軍事対軍事の悪循環をもたらすものでしかありません。
これと対極にあるのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みです。①武力の威嚇・行使の禁止②紛争の平和的手段による解決―を柱とした東南アジア友好協力条約(TAC)を軸に、重層的な平和の枠組みを構築。その最新の到達が、「開放性」「透明性」「包摂性」を掲げた「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」です。排他的な軍事ブロックの対極にあるものです。
首脳会談直後の4月17日、日本共産党の志位和夫議長は、①ASEANと協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる②北東アジアの諸問題の外交的解決をはかり、東アジア平和共同体をめざす③ガザ危機とウクライナ侵略を、国連憲章・国際法を唯一最大の基準にして解決するーとした東アジアの平和構築への提言を発表しました。
日米共同声明もAOIP支持を表明しています。そうであるなら、憲法9条を持つ日本がとるべき道は明白です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月5日付掲載
「ハブ・アンド・スポーク」とは、自転車の車輪のように、米国が中軸(ハブ)となり、放射線状に同盟関係を結ぶ方式。日米安保体制をはじめ、米国が構築してきた伝統的な同盟網は、基本的にこうした方式。
これに対して「格子状」とは、米国の同盟国同士が結びつく、多国間の同盟関係を意味します。その狙いは、インド太平洋地域での中国との覇権争いに勝利するため。
覇権主義的な傾向を強める中ロの結びつきは世界の平和と安定に対する深刻な懸念。
これと対極にあるのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組み。①武力の威嚇・行使の禁止②紛争の平和的手段による解決―を柱とした東南アジア友好協力条約(TAC)を軸に、重層的な平和の枠組みを構築。その最新の到達が、「開放性」「透明性」「包摂性」を掲げた「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」。排他的な軍事ブロックの対極にあるもの。
「ハブ・アンド・スポークから格子状の戦略的同盟への進化」―。今回の日米首脳会談を前に、エマニュエル駐日米大使はこう繰り返してきました。
格子状の同盟方式
「ハブ・アンド・スポーク」とは、自転車の車輪のように、米国が中軸(ハブ)となり、放射線状に同盟関係を結ぶ方式です。日米安保体制をはじめ、米国が構築してきた伝統的な同盟網は、基本的にこうした方式です。
これに対して「格子状」とは、米国の同盟国同士が結びつく、多国間の同盟関係を意味します。その狙いは、インド太平洋地域での中国との覇権争いに勝利するためです。米国はいずれ、軍事・経済両面で中国が上回ると予測。「ハブ」が弱体化し、同盟国を従えなければ勝利できないのが実情です。
バイデン政権は既に、米英豪の軍事的枠組み「AUKUS(オーカス)」や日米豪印の枠組み「QUAD(クアッド)」など、多国間の枠組みを強化。今回の日米首脳共同声明では、①日米豪の「防空」網構築や無人航空機の開発などに関する協力②先端技術面でAUKUSと日本の協刀を検討③日米英の定期共同訓練の開始1などに言及しました。
首脳会談翌日の4月11日には初の日米比首脳会談が開かれ、中国の覇権主義的行動を念頭に「海洋安全保障」強化で一致しました。
初の3カ国首脳会談に臨む(右から)岸田文雄首相、バイデン米大統領、マルコス・フィリピン大統領=4月11日、ワシントン(ロイター)
平和の枠組みこそ
米国が排他的な軍事ブロックを強化すれば、中国も同じ対応に走るのは必然です。
防衛省のシンクタンク・防衛研究所は昨年11月の報告書で、中ロが「事実上の同盟国関係に入ることが予想される」と指摘。実際、日本周辺における中ロの共同訓練が質量ともに強化されています。
覇権主義的な傾向を強める両国の結びつきは世界の平和と安定に対する深刻な懸念です。ロシアのウクライナ侵略をめぐっても、中ロ関係の強化は、「侵略戦争をやめろ」という世界の団結の障害になっています。
こうしたブロック対応の強化は世界の分断を強め、軍事対軍事の悪循環をもたらすものでしかありません。
これと対極にあるのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みです。①武力の威嚇・行使の禁止②紛争の平和的手段による解決―を柱とした東南アジア友好協力条約(TAC)を軸に、重層的な平和の枠組みを構築。その最新の到達が、「開放性」「透明性」「包摂性」を掲げた「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」です。排他的な軍事ブロックの対極にあるものです。
首脳会談直後の4月17日、日本共産党の志位和夫議長は、①ASEANと協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる②北東アジアの諸問題の外交的解決をはかり、東アジア平和共同体をめざす③ガザ危機とウクライナ侵略を、国連憲章・国際法を唯一最大の基準にして解決するーとした東アジアの平和構築への提言を発表しました。
日米共同声明もAOIP支持を表明しています。そうであるなら、憲法9条を持つ日本がとるべき道は明白です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月5日付掲載
「ハブ・アンド・スポーク」とは、自転車の車輪のように、米国が中軸(ハブ)となり、放射線状に同盟関係を結ぶ方式。日米安保体制をはじめ、米国が構築してきた伝統的な同盟網は、基本的にこうした方式。
これに対して「格子状」とは、米国の同盟国同士が結びつく、多国間の同盟関係を意味します。その狙いは、インド太平洋地域での中国との覇権争いに勝利するため。
覇権主義的な傾向を強める中ロの結びつきは世界の平和と安定に対する深刻な懸念。
これと対極にあるのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組み。①武力の威嚇・行使の禁止②紛争の平和的手段による解決―を柱とした東南アジア友好協力条約(TAC)を軸に、重層的な平和の枠組みを構築。その最新の到達が、「開放性」「透明性」「包摂性」を掲げた「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」。排他的な軍事ブロックの対極にあるもの。
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