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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米国と新自由主義③ 日本は、はめられた

2022-06-06 06:56:51 | 経済・産業・中小企業対策など
米国と新自由主義③ 日本は、はめられた
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さん

―世界で金融自由化が進んだ1990年代以降、金融危機が頻発しています。
クリントン政権期に確立した米国の新自由主義的金融覇権は、2008年になると今度は米国で金融危機を引き起こしました。1930年代大恐慌の再来といわれる世界経済危機となっていきました。これは米国の「新自由主義的景気循環」による危機でした。

米国型の金融
新自由主義的景気循環とは、金融資産の蓄積が基軸になって展開する景気循環のことです。株価が上がれば消費が拡大し、株価が下がれば消費が停滞します。実体経済を軸とした戦後高度成長期の景気循環と異なるメカニズムに着目し、私が命名しました。
持ち株会社を通じた商業銀行と投資銀行の合併は、商業銀行の直接金融への参入を促しました。直接金融は、証券市場で債券や株式などを投資家に直接売って、企業が資金調達する仕組みです。銀行融資は落ち込み、企業の資金調達が基本的に株式市場を通じて行われる直接金融システムが形成されました。この米国型金融システムが新自由主義的景気循環を生み出し、米国民の経済状況を金融資産市場に大きく依存させることになりました。
米国では、クリントン政権期の93年以降に展開した景気循環が典型です。株式市場が急成長し、金融資産が蓄積されて好景気となりましたが、2000年のバブル崩壊で景気が急速に後退しました。さらに01年、ブッシュ政権期に住宅資産市場が急成長し、住宅資産の蓄積を基軸とする景気循環が起こります。この景気循環は08年9月のリーマン・ショックという金融危機に帰結します。
新自由主義的景気循環では、金融機関による大量の信用拡大が金融資産や住宅資産を膨張させ、好景気をもたらします。しかし所得・資産格差の拡大によって社会の消費能力はやがて限界にぶつかります。すると、債務返済能力が低下して信用拡大の循環は破綻し、債務返済不能の連鎖から金融危機が引き起こされるのです。



東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区

総中流の崩壊
―米国の金融覇権は日本経済にどんな変化をもたらしましたか。
米国の金融覇権は日本にも金融自由化要求を突きつけ、実行させてきました。
レーガン政権期の1984年4月に中曽根康弘政権が先物為替取引の実需原則を撤廃し、同年6月に円転換規制を撤廃しました。先物為替の実需原則とは、純粋に投機を目的とする先物為替取引を抑制するために戦後とった措置です。円転換規制は、海外からの投機的資本の国内流通を水際で防ぐ規制でした。投機的取引を妨げるこれらの規制について、世界の投資ファンドが撤廃を要求したのです。
金融自由化の極め付きは、橋本龍太郎政権による98年の金融システム改革です。銀行、証券、信託、保険などあらゆる金融業務を持ち株会社によって統合することを可能にしました。同じ年に「外国為替及び外国貿易法」を改定し、自由な内外取引環境を整備しました。
こうして、外国ファンドの日本金融市場への自由な参入が可能となり、米国の投資ファンドがわが物顔で日本金融市場を席巻する時代が始まりました。金融覇権を狙う米国の戦略に、日本はまんまとはめられたのです。
2001年に始まる小泉純一郎政権の「構造改革」もその延長線上に存在しました。直接金融システムへの転換など、米国が求める新自由主義的経済政策を進めました。郵政民営化の目的も「貯蓄から投資へ」の転換の阻害要因を取り除くことでした。社会保障費を削減し、派遣労働を製造業にも認め、労働条件を大改悪しました。
株式売却益を狙う投資ファンドの要求が優先され、賃金は上がらず、株式市場と大企業の内部留保のみが膨張する格差社会が出現しました。「一億総中流」といわれた1970~80年代の日本経済のあり方は崩壊しました。
岸田文雄政権の「新しい資本主義」は、新自由主義に基づく政策が深刻な事態をもたらしたことを認めるかのような姿勢をとりながら、実はその政策を相も変わらず着々と実行するものです。巧妙なだましの手口です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月2日付掲載


新自由主義的景気循環では、金融機関による大量の信用拡大が金融資産や住宅資産を膨張させ、好景気をもたらします。しかし所得・資産格差の拡大によって社会の消費能力はやがて限界にぶつかります。すると、債務返済能力が低下して信用拡大の循環は破綻し、債務返済不能の連鎖から金融危機が引き起こされる。
金融自由化の極め付きは、橋本龍太郎政権による98年の金融システム改革です。銀行、証券、信託、保険などあらゆる金融業務を持ち株会社によって統合することを可能にしました。同じ年に「外国為替及び外国貿易法」を改定し、自由な内外取引環境を整備。
「一億総中流」といわれた1970~80年代の日本経済のあり方は崩壊。
実体経済より、投機による見せかけの経済成長を優先した弊害です。

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