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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「特許出願非公開」の問題点② 産業への悪影響を懸念

2023-08-04 07:10:19 | 経済・産業・中小企業対策など
「特許出願非公開」の問題点② 産業への悪影響を懸念
日本科学者会議 野村康秀さんに聞く

―「特許出願非公開」制度とは何ですか?
経済安保の柱

「特許出願非公開」制度は、昨年成立した経済安全保障推進法の四つの柱の一つで、「国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」について、特許出願を非公開にして情報の流出を防ぐというものです。そのような発明が含まれる可能性がある「特定技術分野」を政府が政令で指定します。
しかしこれは、発明の公開によって産業を発達させるという特許制度の目的と矛盾しています。軍需で利益獲得を目指すごく一部の企業を除けば、画期的な技術開発で民間でのビジネス展開を計画している企業にとっては、デメリットでしかありません。国が損失を補償する建前ですが、産業全体に与える悪影響が懸念されます。

―「非公開」制度の内容は?
「非公開」制度は、内閣総理大臣による「保全審査」と「保全指定」で行われます。
出願された発明について、特許庁が「特定技術分野」に該当するかどうかを判断し、該当すれば、内閣総理大臣に出願書類を送付します。保全審査で「情報の保全」が適当と認定されると、保全指定されます。保全指定の期間は1年以内ですが、更新は可能で更新回数に制限はありません。
通常出願から1年6カ月後の「公開公報」による公開が行われず、特許権付与の査定がなされず保留の扱いになります。
保全指定を受けた出願人は、その技術について▽学会、研究会などでの情報開示の禁止▽内閣総理大臣の許可がない実施の禁止▽外国出願の禁止(米国は例外)▽情報の適正管理義務―などの禁止、制限事項が課されます。


非公開にする特許出願が選ばれる主な対象技術分野
航空機のステルス技術
武器に関係する無人航空機・自律制御の技術
使用済み核燃料の分解・再処理技術
核爆発装置に関する技術
誘導ミサイルなどに関する技術
固体燃料ロケットエンジン技術
レーザー兵器や電磁パルス(EMP)弾など新たな攻撃・防御技術
通信妨害に関する技術
宇宙船の熱保護やドッキング技術


―岸田政権は1日、「特定技術分野」に25分野を示した政令を閣議決定しました。
先端技術狙う

25分野を見ると、航空機のステルス技術や核爆発装置やレーザー兵器など、中心は軍事目的の技術です。
同時に、エンジン、宇宙、量子などの「デュアルユース(軍民両用)」になる先端技術も含まれました。これらの技術の情報を秘密にすると産業の発達に及ぼす影響が大きいので、保全審査を行う対象を絞り込むために「付加要件」をつけました。
「付加要件」は、①我が国の防衛又は外国の軍事の用に供するための発明、②国又は国立研究開発法人による特許出願に係る発明、③国の委託等による成果で受託者が出願人になる発明1としています。国立研究開発法人の先端分野の技術開発技術は、自動的に保全審査に回してチェックするとしたのです。
今回25分野に「限定」したのは、今年5月に経済同友会が提言した「軍事・軍需を中心としたスモールスタート」など、財界の懸念や要望に沿ったものでしょう。しかし、「小さく始めて、徐々に広げる」のが政府の狙いです。今後、政令の改正により、先端半導体や人工知能(AI)やバイオ、材料などの先端技術分野にも拡大するでしょう。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月3日付掲載


「特許出願非公開」制度は、昨年成立した経済安全保障推進法の四つの柱の一つで、「国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」について、特許出願を非公開にして情報の流出を防ぐというもの。
指定された25分野をみると、航空機のステルス技術や核爆発装置やレーザー兵器など、中心は軍事目的と合わせて、エンジン、宇宙、量子などの「デュアルユース(軍民両用)」になる先端技術も。
今後、政令の改正により、先端半導体や人工知能(AI)やバイオ、材料などの先端技術分野にも拡大する懸念。

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