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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「特許出願非公開」の問題点③ 平和的産業発展に逆行

2023-08-06 07:30:36 | 経済・産業・中小企業対策など
「特許出願非公開」の問題点③ 平和的産業発展に逆行
日本科学者会議 野村康秀さんに聞く

―政府の狙いはどこにありますか?
米軍の下請け

民生技術の研究、開発の「デュアルユース(軍民両用)化」です。
デュアルユース技術向けに設定した「付加要件」から、二つの重大性が見て取れます。
一つは、「わが国の防衛」として、政府が軍事目的の秘密研究・開発のための出願を想定していることです。
すでに、政府は経済安全保障推進法に基づいて官民「伴走」の「特定重要技術の開発支援」を強めています。防衛省も参加可能な官民の「協議会」を設置し、政府の意向を直接反映させる仕組みをつくりました。
「特許出願非公開」制度をこうした「特定重要技術の開発支援」の“受け皿”として機能させ、軍事目的の研究・開発を広げる狙いが見て取れます。
研究者の自由な発想を許さず、軍事利用優先の研究管理が強まることになり、研究の発展を阻害するものです。
もう一つは、「外国の軍事の用に供する」ことです。米国の軍事戦略や技術戦略に沿った研究開発や米軍の最新兵器の研究、開発のために日本企業の技術の提供を想定しているのです。論理上は「わが国の防衛」と関係なくてもよく、日本企業が“米軍の下請け”になってしまいます。
日本は米国との間で、日米防衛特許協定(1956年)を結んでいます。同協定は、防衛目的で相手国政府に提供された技術に関する特許出願が、一方で秘密指定されていれば、他方でも秘密に扱うというものです。同協定の下で20年も秘密指定された米国特許出願の技術があります。
今後、「非公開」制度が同協定を補完することになれば、米国基準で保全指定の対象を広げる危険があります。



セキュリティークリアランス(適性資格)に関する政府会合で発言する岸田文雄首相(前列左から2人目)=2月14日、首相官邸(首相官邸ホームページから)

―特許庁審査官への影響はありますか?
人権侵害懸念

現在でも、特許庁職員には特許法で秘密保持義務が課されています。政府は経済安全保障を機に「セキュリティークリアランス(SC、適性資格)」の法制化を狙っています。SCは、借金や親交などに関するプライバシーの侵害や労働者の選別の恐れが指摘されています。審査官や事務官、関連の民間委託職員、さらには企業の研究開発現場での人権侵害の恐れがあります。実は、5月の経済同友会の提言でも、「恣意(しい)的に適用されない」ことを求めています。
「非公開」制度では、保全審査で「専門的知識」を持つ関係行政機関に意見を聞けるとしており、防衛省は当然想定されています。
特許庁の段階でも、防衛省に意見を聞くかもしれません。
秘密特許制度は、戦前の日本にありました。しかし、戦後、日本国憲法の戦争放棄の規定に抵触するとして廃止されました。「特許出願非公開」制度は、憲法の精神に基づいた平和的な産業発展に逆行するものです。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月4日付掲載


デュアルユース技術向けに設定した「付加要件」から、二つの重大性。
一つは、「わが国の防衛」として、政府が軍事目的の秘密研究・開発のための出願を想定。もう一つは、「外国の軍事の用に供する」こと。
政府は経済安全保障を機に「セキュリティークリアランス(SC、適性資格)」の法制化を。SCは、借金や親交などに関するプライバシーの侵害や労働者の選別の恐れが指摘。

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