「特許出願非公開」の問題点① 発明公開は産業発展の芽
日本科学者会議 野村康秀さんに聞く
岸田文雄政権は軍事転用が可能な先端情報の流出を防ぐとして、特許の出願を非公開にする制度づくりを進めています。6月には詳細な政令案を示してパブリックコメントを募りました。政府の狙いを日本科学者会議科学・技術政策委員会の野村康秀さんに聞きました。(日隈広志)
新技術の普及
―そもそも特許とはどのような制度ですか?
特許制度の目的は、個人や企業の発明を保護するとともに、発明を公開して新しい技術を人類共通の財産とすることです。
競争が基本の市場経済では、新しい技術を社会に普及するためには、他者に使わせなくすること(排他的独占)で利益につなげる仕組みも有効です。発明に特許権を付与することで、特許権者が一定期間、発明した技術を市場で独占し、経済的利益を得られるようにするのが特許制度です。
排他的独占権を他者に知らせるには公開が不可欠です。一方、発明を公開することで他者の改良発明が進み、社会の技術開発や技術研究が進展します。発明を公開することで新たな技術へ産業の発展の芽を生んできました。
近代特許制度は、15世紀のベニス共和国(現イタリア)に始まると言われ、英国で発展しました。産業の発展に合わせて特許制度も変化、発展しました。日本では開国で欧米の特許制度が紹介され、1885年の「専売特許条例」から制度の運用が始まりました。
特許の手続は
―特許を得るにはどのような手続きが必要ですか?特許になじみのない方もいると思いますので、少し説明します。
手続きは、出願料と発明を記載した書類を特許庁に提出する特許出願で始まります。
特許権を受けるためには、出願人は、出願日から3年以内にざっと10万円以上の手数料を納付して、出願審査請求を行うことが必要です。期間内に審査請求しないと出願取り下げとみなされます。
出願審査では特許庁審査官が新規性・進歩性等について審査を行い、最終的に特許権の付与(特許査定)か、不付与(拒絶査定)の判断を行います。
特許出願から原則1年6カ月後には技術内容を公開します(「公開公報」)。また、特許付与後にも公表します(「特許公報」)。公報には、世界共通の特許分類が付されています。
特許権の存続期間は出願から20年です。その間に、特許権者は、自ら発明を実施するほか、ライセンス契約を結んで実施料を受け取ることもできます。
また、第三者が勝手に使用した場合は、裁判によって、実施の差し止めをしたり、損害を賠償させたりすることができます。
特許庁では年間約20万件を超える出願を審査しています。審査のための文献調査や特許分類付与業務の多くは、民間団体に委託して行われています。(つづく)(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月2日付掲載
排他的独占権を他者に知らせるには公開が不可欠。一方、発明を公開することで他者の改良発明が進み、社会の技術開発や技術研究が進展します。発明を公開することで新たな技術へ産業の発展の芽を生んできました。
特許権の存続期間は出願から20年です。その間に、特許権者は、自ら発明を実施するほか、ライセンス契約を結んで実施料を受け取ることもできます。
特許庁では年間約20万件を超える出願を審査。ものずごい量ですね。
日本科学者会議 野村康秀さんに聞く
岸田文雄政権は軍事転用が可能な先端情報の流出を防ぐとして、特許の出願を非公開にする制度づくりを進めています。6月には詳細な政令案を示してパブリックコメントを募りました。政府の狙いを日本科学者会議科学・技術政策委員会の野村康秀さんに聞きました。(日隈広志)
新技術の普及
―そもそも特許とはどのような制度ですか?
特許制度の目的は、個人や企業の発明を保護するとともに、発明を公開して新しい技術を人類共通の財産とすることです。
競争が基本の市場経済では、新しい技術を社会に普及するためには、他者に使わせなくすること(排他的独占)で利益につなげる仕組みも有効です。発明に特許権を付与することで、特許権者が一定期間、発明した技術を市場で独占し、経済的利益を得られるようにするのが特許制度です。
排他的独占権を他者に知らせるには公開が不可欠です。一方、発明を公開することで他者の改良発明が進み、社会の技術開発や技術研究が進展します。発明を公開することで新たな技術へ産業の発展の芽を生んできました。
近代特許制度は、15世紀のベニス共和国(現イタリア)に始まると言われ、英国で発展しました。産業の発展に合わせて特許制度も変化、発展しました。日本では開国で欧米の特許制度が紹介され、1885年の「専売特許条例」から制度の運用が始まりました。
特許の手続は
―特許を得るにはどのような手続きが必要ですか?特許になじみのない方もいると思いますので、少し説明します。
手続きは、出願料と発明を記載した書類を特許庁に提出する特許出願で始まります。
特許権を受けるためには、出願人は、出願日から3年以内にざっと10万円以上の手数料を納付して、出願審査請求を行うことが必要です。期間内に審査請求しないと出願取り下げとみなされます。
出願審査では特許庁審査官が新規性・進歩性等について審査を行い、最終的に特許権の付与(特許査定)か、不付与(拒絶査定)の判断を行います。
特許出願から原則1年6カ月後には技術内容を公開します(「公開公報」)。また、特許付与後にも公表します(「特許公報」)。公報には、世界共通の特許分類が付されています。
特許権の存続期間は出願から20年です。その間に、特許権者は、自ら発明を実施するほか、ライセンス契約を結んで実施料を受け取ることもできます。
また、第三者が勝手に使用した場合は、裁判によって、実施の差し止めをしたり、損害を賠償させたりすることができます。
特許庁では年間約20万件を超える出願を審査しています。審査のための文献調査や特許分類付与業務の多くは、民間団体に委託して行われています。(つづく)(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月2日付掲載
排他的独占権を他者に知らせるには公開が不可欠。一方、発明を公開することで他者の改良発明が進み、社会の技術開発や技術研究が進展します。発明を公開することで新たな技術へ産業の発展の芽を生んできました。
特許権の存続期間は出願から20年です。その間に、特許権者は、自ら発明を実施するほか、ライセンス契約を結んで実施料を受け取ることもできます。
特許庁では年間約20万件を超える出願を審査。ものずごい量ですね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます