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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

サッカーW杯 光と影① 出稼ぎ労働者6500人死亡

2022-11-18 07:09:17 | スポーツ・運動について
サッカーW杯 光と影① 出稼ぎ労働者6500人死亡
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会が20日、開幕します。中東で迎える初の大会は、さまざまな課題を抱えています。大会の光と影を追いました。
(和泉民郎、ベルリン=桑野白馬)

「お願いだ。いまはフットボールに集中しよう」。国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長が、32の出場国にこんな書簡を送ったことが今月初めにわかりました。移民労働者や性的少数者(LGBTQ)に対するカタールへの抗議が高まりをみせているからです。
同国には外国人労働者の人権侵害が根強く存在しています。
英メディアや国際人権団体によると、2010年にW杯開催が決まって以降、インドやバングラデシュなどの出稼ぎ労働者のうち、実に約6500人が亡くなっているといわれます。劣悪な労働環境によって、事故が相次いだためです。
外国人労働者が全体の9割を占めているといわれる同国では「カファラ(保証人)」と呼ばれるあしき労働制度がありました。



ワールドカップ会場の芝を張る外国人労働者=2021年11月、カタール・ルサイル(ロイター)

雇用主が身元保証人となり海外からの労働者を受け入れるもので、採用に高額の手数料を取ったり、休日も与えず長時間労働を強制したり、何カ月にもわたる賃金を支払わないことも横行しています。さらにパスポートを取り上げ、離職、転職、出国には雇用主らの許可が必要とされています。現代の奴隷労働ともいわれる実態がここにあります。
この制度は国際的な批判を浴び17年、政府は制度の廃止と労働条件の改善を約束しました。しかし、W杯のための七つの新設スタジァムや空港、地下鉄建設を含む30兆円ともいわれる巨大インフラ整備の多くが実施された後でした。
ヒューマン・ライツ・ウオッチなど国際人権団体は「進歩がみられる一方で、人権侵害は根強く残っている」と批判し、カタール政府、FIFAに対し、基金を作り被害を受けた労働者の補償を強く求めています。


スポーツと人権不可分
サッカー界からも人権侵害への批判の声が上がります。
ワールドカップ(W杯)予選では、ノルウェーやドイツの選手たちが「HUMAN RIGHTS」と書かれたシャツを着て抗議しました。
ドイツ代表のヨシュア・キミッヒ選手は「状況を変えるには相当の圧力をかけることが重要だ」と訴えています。今秋、ベルギー、フランス、米国ら七つのサッカー協会が救済基金設立を求めており、“身内”からもその声は高まっています。
カタールでは同性愛が違法です。今月には大会アンバサダーの元カタール代表が、同性愛は「精神の傷」と発言し批判を浴びました。



FIFAに抗議する国際人権団体のポスター=11月7日、オーストリア南部グラーツ(桑野白馬撮影)

オーストラリア代表は10月、「性的少数者の権利を擁護する。カタールでは自らが選んだ人を愛することはできない」とするメッセージ動画で抗議の声を上げました。
ドイツ同性愛者協会は国際サッカー連盟(FIFA)にたいし、「汚職と人権侵害、LGBTQ(性的少数者)と女性の弾圧の上に成り立つ大会」「W杯の勝者はいない。人権はすでに負けた」と表明しています。
欧州内の主要都市では人権問題にたいする抗議から、試合のパブリックビューイング中止が相次ぎ、フランスでは10都市が取りやめを決めています。
FIFAは人権間題に、どう向き合ってきたのでしょうか。
カタールの開催地決定によって世界から批判を浴びたため12年、今後の開催地選定基準に人権を加えました。その後、国連の人権基準に基づきFIFAの組織改革を開始し、カタールにも人権上の改善を促してきたことは事実です。しかし、補償問題を含め、その多くが不十分とのそしりは免れません。
「スポーツと人権は深く絡み合っています。健全な形で国際的大会を開催するならカタール政府もFIFAも人権と向き合い、改善のために具体的な対策を取ることが必要です」。国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウオッチの笠井哲平アジア局プログラムオフィサーは指摘します。
五輪も含め、スポーツにとって人権が不可欠で、その軽視がいかに重大な結果を招くのか。カタール大会は鋭く突き付けています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月17日付掲載


カタールの外国人労働者。「カファラ(保証人)」と呼ばれるあしき労働制度。雇用主が身元保証人となり海外からの労働者を受け入れるもので、採用に高額の手数料を取ったり、休日も与えず長時間労働を強制したり、何カ月にもわたる賃金を支払わないことも横行。
カタールでは同性愛が違法。今月には大会アンバサダーの元カタール代表が、同性愛は「精神の傷」と発言し批判を。スポーツと人権は深く絡み合っています。健全な形で国際的大会を開催するならカタール政府もFIFAも人権と向き合い、改善のために具体的な対策を取ることが必要。

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