ドイツにみる米軍基地と自治体① 騒音調べ民間空港並みに
日本では、在日米軍に国内法が適用されず、基地への立ち入り権もありません。事故がおきても捜査権を行使することもできません。これに対してドイツの米軍基地では、騒音規制、地元自治体の立ち入り、事故対応などで日本とは大きな違いがあります。ドイツ南西部にある米空軍基地の地元自治体で、その実態を聞きました。
(ラムシュタイン・ミーゼンバッハ=伊藤寿庸 写真も)
ラムシュタイン基地近くの丘の上に立つと、3000メートル級滑走路を2本見ることができます。ときおり胴体の太い軍用輸送機がゆっくりと離着陸していきます。
同基地には、欧州アフリカ全域をカバーする在欧米空軍・アフリカ米空軍の司令部や、北大西洋条約機構(NATO)の連合空軍司令部が置かれています。近隣の陸軍病院などの軍施設と合わせた巨大な「米軍コミュニティー」は、米国外で最大。5万人の米兵、軍属、家族が居住しています。
地元自治体のラムシュタイン・ミーゼンバッハ市のマーカス・クライン副市長に話を聞きました。
「ラムシュタイン基地は第2次大戦後にドイツを占領したフランス軍が1950年代に建設した後、米軍に引き継がれた。当時は占領下だったので、空港をつくる許認可も、騒音規制も何もなかった」と振り返ります。
基地近くの丘の上から見た在独ラムシュタイン米空軍基地
住宅地を避けて
2000年代にフランクフルト空港にあった米軍基地が閉鎖され、部隊の一部がラムシュタインに移駐することが決まりました。新たな滑走路を増設することになり、「その時初めて、基地の新設と同様の許認可手続きを始めた」と言います。
ドイツ側が民間空港と同じ騒音の影響調査を実施し、飛行ルートが住宅地の上をできるだけ避けられるように滑走路の位置を決めました。建設後も午後10時から翌朝6時までは例外を除き飛行禁止となりました。
当時、民間会社に委託して作成した騒音予測図などが壁に張られた市議会議場で、市の取り組みについて、熱く語ってくれました。
また周辺自治体の代表や希望する市民団体が出席、米軍側も参加する「騒音防止委員会」も置かれています。クライン氏は「定期的に情報交換できる大切な機関」だといいます。マスコミは入れませんが、「議事録が毎回作成され、公開はされないが、市議会などには重要な情報が提供される」。
今後、米軍の「欧州インフラ強化」計画の一環で、英国のミルデンホール米軍基地が閉鎖され、KC135空中給油機15機と700人の部隊が移駐してくる予定です。これについても騒音の調査を行うことになります。
住民利益を意識
ドイツ与党のキリスト教民主同盟(CDU)に所属するクライン氏は、「700人の移駐による経済効果とのバランスを考える」との立場です。
5万人の米軍関係者が地元に落とす金額は、2014年で年間210億ユーロ(1ユーロは現在、約121円)と巨額で、経済的な依存度が高いことも背景にあります。
1988年、ラムシュタイン基地で行われた航空ショーでイタリアの曲技飛行チームの航空機が墜落炎上し、70人の死者と300人以上のけが人がでた大事故がありました。かつては基地に駐留する戦闘機による低空飛行訓練も行われており、市民の反対運動が強まった歴史もあります。
それだけに市が米軍と折衝する場合に、常に住民の利益を意識して当たっていることが感じられました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年7月25日付掲載
ドイツの場合でも基地の新設はあるのだが、騒音の調査や飛行制限も厳密に行われている。基地の経済効果はあるが、住民利益を犠牲にはできないという。
日本では、在日米軍に国内法が適用されず、基地への立ち入り権もありません。事故がおきても捜査権を行使することもできません。これに対してドイツの米軍基地では、騒音規制、地元自治体の立ち入り、事故対応などで日本とは大きな違いがあります。ドイツ南西部にある米空軍基地の地元自治体で、その実態を聞きました。
(ラムシュタイン・ミーゼンバッハ=伊藤寿庸 写真も)
ラムシュタイン基地近くの丘の上に立つと、3000メートル級滑走路を2本見ることができます。ときおり胴体の太い軍用輸送機がゆっくりと離着陸していきます。
同基地には、欧州アフリカ全域をカバーする在欧米空軍・アフリカ米空軍の司令部や、北大西洋条約機構(NATO)の連合空軍司令部が置かれています。近隣の陸軍病院などの軍施設と合わせた巨大な「米軍コミュニティー」は、米国外で最大。5万人の米兵、軍属、家族が居住しています。
地元自治体のラムシュタイン・ミーゼンバッハ市のマーカス・クライン副市長に話を聞きました。
「ラムシュタイン基地は第2次大戦後にドイツを占領したフランス軍が1950年代に建設した後、米軍に引き継がれた。当時は占領下だったので、空港をつくる許認可も、騒音規制も何もなかった」と振り返ります。
基地近くの丘の上から見た在独ラムシュタイン米空軍基地
住宅地を避けて
2000年代にフランクフルト空港にあった米軍基地が閉鎖され、部隊の一部がラムシュタインに移駐することが決まりました。新たな滑走路を増設することになり、「その時初めて、基地の新設と同様の許認可手続きを始めた」と言います。
ドイツ側が民間空港と同じ騒音の影響調査を実施し、飛行ルートが住宅地の上をできるだけ避けられるように滑走路の位置を決めました。建設後も午後10時から翌朝6時までは例外を除き飛行禁止となりました。
当時、民間会社に委託して作成した騒音予測図などが壁に張られた市議会議場で、市の取り組みについて、熱く語ってくれました。
また周辺自治体の代表や希望する市民団体が出席、米軍側も参加する「騒音防止委員会」も置かれています。クライン氏は「定期的に情報交換できる大切な機関」だといいます。マスコミは入れませんが、「議事録が毎回作成され、公開はされないが、市議会などには重要な情報が提供される」。
今後、米軍の「欧州インフラ強化」計画の一環で、英国のミルデンホール米軍基地が閉鎖され、KC135空中給油機15機と700人の部隊が移駐してくる予定です。これについても騒音の調査を行うことになります。
住民利益を意識
ドイツ与党のキリスト教民主同盟(CDU)に所属するクライン氏は、「700人の移駐による経済効果とのバランスを考える」との立場です。
5万人の米軍関係者が地元に落とす金額は、2014年で年間210億ユーロ(1ユーロは現在、約121円)と巨額で、経済的な依存度が高いことも背景にあります。
1988年、ラムシュタイン基地で行われた航空ショーでイタリアの曲技飛行チームの航空機が墜落炎上し、70人の死者と300人以上のけが人がでた大事故がありました。かつては基地に駐留する戦闘機による低空飛行訓練も行われており、市民の反対運動が強まった歴史もあります。
それだけに市が米軍と折衝する場合に、常に住民の利益を意識して当たっていることが感じられました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年7月25日付掲載
ドイツの場合でも基地の新設はあるのだが、騒音の調査や飛行制限も厳密に行われている。基地の経済効果はあるが、住民利益を犠牲にはできないという。
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