SDGsを力に 持続可能な世界へ② 政界の変革めざす取り組み

駒澤大学名誉教授 小栗崇資氏
SDGs(持続可能な開発目標)は、2000年のMDGs(ミレニアム開発目標) を引き継いで15年から始まりました。最近では、マスメディアや自治体、企業によるSDGsのアピールを多く見かけるようになり、学習指導要領の改定により小中高の授業でも取り上げられるようになっています。
SDGsは30年までの実現をめざす取り組みであり、今年はその折り返し地点です。SDGsとは何かを三つの特徴から見ておきましょう。
SDGs17の目標
①貧困をなくそう②飢餓をゼロに③すべての人に健康と福祉を④質の高い教育をみんなに⑤ジェンダー平等を実現しよう⑥安全な水とトイレを世界中に⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに⑧働きがいも経済成長も⑨産業と技術革新の基盤をつくろう⑩人や国の不平等をなくそう⑪住み続けられるまちづくりを⑫つくる責任つかう責任⑬気候変動に臭体的な対策を⑭海の豊かさを守ろう⑮陸の豊かさも守ろう⑯平和と公正をすべての人に⑰パートナーシップで目標を達成しよう
個別から包括へ
SDGsは、一言でいえば、持続可能な開発のための「世界の変革」をめざす取り組みです。17の目標と169のターゲット(具体的な目標)からなるSDGsは国連の「2030アジェンダ」で提起されました。
2030アジェンダの正式タイトルは「我々は世界を変革する―持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。「変革(Transforming)」という言葉が使われているように、現代の世界が抱える自然と社会の諸問題を解決するための対策を提起しています。SDGsは、世界変革宣言である2030アジェンダの中の「世界変革目標」です。17の目標のどれをとっても変革的に取り組まなければならない課題となっています。
国連はこれまで環境、社会、経済の問題に個々に取り組んできましたが、それを解決するには個別ではなく、統合した包括的な取り組みでなければならないことをSDGsは提起しました。
特に国連の歴史上はじめて「環境」と「開発」という二つの大きな取り組みを一つにしたといわれています。
例えば、気候変動は貧困や飢餓を生み、格差を助長することが明らかになっていますが、それに対応するには環境・社会・経済の三つの側面を一体的・統合的に取り組んでいく必要があります。世界の変革が進むには三つの側面の統合的な取り組みが不可欠であり、17の目標を相互に結びつけていくことが重要です。(図参照)

人権尊重の徹底
SDGsは人権尊重の徹底した実現をめざす取り組みでもあります。国連は発展途上国の「開発」を進めてきましたが、グローバルサウス(発展途上国)での多国籍企業等による収奪や人権侵害への批判が強まる中で、国連の課題は「人権・環境」へと変化していきました。00年の「グローバル・コンパクト」では企業に人権と環境の責任を呼びかけ、06年の「国連責任投資原則」では投資家にESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を求めました。11年には企業における人権尊重を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」を提唱しました。SDGsにはこうした人権尊重のさまざまな取り組みが組み込まれています。
そうした特徴をもつSDGsは、世界に向けた「誰1人取り残さない」壮大な取り組みとなっています。このままSDGsの停滞・後退が続けば、世界の変革は挫折しかねません。危機に直面しているからこそ、逆にSDGsの意義を明らかにする必要があります。気候変動を含むSDGsの取り組みは地球と人間社会の未来を左右する人類史的な課題であるといわねばなりません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年10月25日付掲載
特に国連の歴史上はじめて「環境」と「開発」という二つの大きな取り組みを一つにしたと。
例えば、気候変動は貧困や飢餓を生み、格差を助長することが明らかになっていますが、それに対応するには環境・社会・経済の三つの側面を一体的・統合的に取り組んでいく必要。
国連の課題は「人権・環境」へと変化。00年の「グローバル・コンパクト」では企業に人権と環境の責任を呼びかけ、06年の「国連責任投資原則」では投資家にESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を。11年には企業における人権尊重を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」を提唱。

駒澤大学名誉教授 小栗崇資氏
SDGs(持続可能な開発目標)は、2000年のMDGs(ミレニアム開発目標) を引き継いで15年から始まりました。最近では、マスメディアや自治体、企業によるSDGsのアピールを多く見かけるようになり、学習指導要領の改定により小中高の授業でも取り上げられるようになっています。
SDGsは30年までの実現をめざす取り組みであり、今年はその折り返し地点です。SDGsとは何かを三つの特徴から見ておきましょう。
SDGs17の目標
①貧困をなくそう②飢餓をゼロに③すべての人に健康と福祉を④質の高い教育をみんなに⑤ジェンダー平等を実現しよう⑥安全な水とトイレを世界中に⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに⑧働きがいも経済成長も⑨産業と技術革新の基盤をつくろう⑩人や国の不平等をなくそう⑪住み続けられるまちづくりを⑫つくる責任つかう責任⑬気候変動に臭体的な対策を⑭海の豊かさを守ろう⑮陸の豊かさも守ろう⑯平和と公正をすべての人に⑰パートナーシップで目標を達成しよう
個別から包括へ
SDGsは、一言でいえば、持続可能な開発のための「世界の変革」をめざす取り組みです。17の目標と169のターゲット(具体的な目標)からなるSDGsは国連の「2030アジェンダ」で提起されました。
2030アジェンダの正式タイトルは「我々は世界を変革する―持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。「変革(Transforming)」という言葉が使われているように、現代の世界が抱える自然と社会の諸問題を解決するための対策を提起しています。SDGsは、世界変革宣言である2030アジェンダの中の「世界変革目標」です。17の目標のどれをとっても変革的に取り組まなければならない課題となっています。
国連はこれまで環境、社会、経済の問題に個々に取り組んできましたが、それを解決するには個別ではなく、統合した包括的な取り組みでなければならないことをSDGsは提起しました。
特に国連の歴史上はじめて「環境」と「開発」という二つの大きな取り組みを一つにしたといわれています。
例えば、気候変動は貧困や飢餓を生み、格差を助長することが明らかになっていますが、それに対応するには環境・社会・経済の三つの側面を一体的・統合的に取り組んでいく必要があります。世界の変革が進むには三つの側面の統合的な取り組みが不可欠であり、17の目標を相互に結びつけていくことが重要です。(図参照)

人権尊重の徹底
SDGsは人権尊重の徹底した実現をめざす取り組みでもあります。国連は発展途上国の「開発」を進めてきましたが、グローバルサウス(発展途上国)での多国籍企業等による収奪や人権侵害への批判が強まる中で、国連の課題は「人権・環境」へと変化していきました。00年の「グローバル・コンパクト」では企業に人権と環境の責任を呼びかけ、06年の「国連責任投資原則」では投資家にESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を求めました。11年には企業における人権尊重を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」を提唱しました。SDGsにはこうした人権尊重のさまざまな取り組みが組み込まれています。
そうした特徴をもつSDGsは、世界に向けた「誰1人取り残さない」壮大な取り組みとなっています。このままSDGsの停滞・後退が続けば、世界の変革は挫折しかねません。危機に直面しているからこそ、逆にSDGsの意義を明らかにする必要があります。気候変動を含むSDGsの取り組みは地球と人間社会の未来を左右する人類史的な課題であるといわねばなりません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年10月25日付掲載
特に国連の歴史上はじめて「環境」と「開発」という二つの大きな取り組みを一つにしたと。
例えば、気候変動は貧困や飢餓を生み、格差を助長することが明らかになっていますが、それに対応するには環境・社会・経済の三つの側面を一体的・統合的に取り組んでいく必要。
国連の課題は「人権・環境」へと変化。00年の「グローバル・コンパクト」では企業に人権と環境の責任を呼びかけ、06年の「国連責任投資原則」では投資家にESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を。11年には企業における人権尊重を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」を提唱。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます