コロナ禍 中小企業のゆくえ② 下から上へ好循環を
東京商工リサーチ常務取締役・情報本部長 友田信男さん
日本経済には、およそ10年おきに「100年に1度」といわれる不況が起きています。
1990年頃にバブル崩壊、2000年頃に金融危機、10年頃にリーマン・ショック、そして20年にコロナ禍に見舞われました。
後継者難と債務
中小企業は、これらの経済変動に常に巻き込まれながらも何とか生き延びてきました。
だけど、その間、政府も中小企業も一生懸命頑張りすぎた。危機対応に追われて、事業承継が遅れてしまいました。企業はいま経営者の高齢化に直面しています。
経営者に対し、政府はもう一世代早く事業承継支援や代表者の交代を援助したり、教育・指導者育成をやるべきでした。ふと気づいたら、後継者がおらず、休廃業や倒産に追い込まれているという中小企業が多いんです。
コロナ禍で中小企業が抱える過剰債務の問題は深刻です。ですが、対応策はあります。
当初、過剰債務の多くを借入金が占めていました。しかし、これからは税金の支払いが「債務」として入ってくることになります。
政府は税金に関し、これまで1年間支払いを猶予してきました。でも、その猶予期間もすでに終了しています。今年は2年分払わなければなりません。
そこで、納付の猶予あるいは分割も認めてはどうかと思います。弾力的な納税対応を行い、中小企業の資金繰りを支援すべきです。
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巣鴨地蔵通り商店街で買い物をする人たち=9月29日、東京都豊島区
「生命維持」こそ
一方、保証協会や金融機関はコロナ禍のど真ん中にもかかわらず平時の審査体制に戻っています。昨年は、融資を認めていたのに、今は事業計画書を提出させて返済能力を判断しています。その結果、保証承諾を拒絶したり、「返済する能力がないですよね」と貸し出さない、あるいは融資を認めても減額するということが起きています。
コロナ禍の真っ最中に平時の審査をされても困ります。
コロナ禍で先が見えない企業には、政府が責任を持って支援をすることが必要です。今なによりも中小企業の「生命維持」が大事だと思います。
その点で消費税の減税は効果的です。消費税を減税して消費を喚起すれば、小売店だけでなく、メーカーそして素材、例えば農林水産業までさかのぼって効果が波及していきます。需要の拡大が目先の商品の売り上げ拡大にとどまらず、それを作っているメーカーさん、その素材を作っている漁民や農民の方、いろんなところに波及していきます。いわゆる「川下産業」から「川上産業」へ波及していくのです。
景気が拡大することによって企業業績も回復します。業績がよくなると賃金が上がる、賃金が上がると消費がまた増えます。安倍政権が始めた経済政策「アベノミクス」は、大企業や富裕層が豊かになればいずれ成長の果実が一般国民にもしたたり落ちるという「トリクルダウン理論」を主張しました。しかし、実際にトリクルダウンは起きませんでした。
消費税減税は、ある意味で「逆のトリクルダウン」になります。
一般国民の消費がどんどん拡大してメーカーまで広がっていき、それがまた下りてきて消費が拡大するという、そういう経済の好循環をつくるべきですし、つくることができると思います。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月6日付掲載
経営難だけでなく、後継者難に苦しむ中小企業。
そのなかで、税金の納付の猶予あるいは分割も認めてはどうかと思います。弾力的な納税対応を行い、中小企業の資金繰りを支援すべき。
保証協会や金融機関はコロナ禍のど真ん中にもかかわらず平時の審査体制に。政府が責任を持って支援をすることが必要。
とりわけ、消費税の減税は効果的です。消費税を減税して消費を喚起すれば、小売店だけでなく、メーカーそして素材、例えば農林水産業までさかのぼって効果が波及。
東京商工リサーチ常務取締役・情報本部長 友田信男さん
日本経済には、およそ10年おきに「100年に1度」といわれる不況が起きています。
1990年頃にバブル崩壊、2000年頃に金融危機、10年頃にリーマン・ショック、そして20年にコロナ禍に見舞われました。
後継者難と債務
中小企業は、これらの経済変動に常に巻き込まれながらも何とか生き延びてきました。
だけど、その間、政府も中小企業も一生懸命頑張りすぎた。危機対応に追われて、事業承継が遅れてしまいました。企業はいま経営者の高齢化に直面しています。
経営者に対し、政府はもう一世代早く事業承継支援や代表者の交代を援助したり、教育・指導者育成をやるべきでした。ふと気づいたら、後継者がおらず、休廃業や倒産に追い込まれているという中小企業が多いんです。
コロナ禍で中小企業が抱える過剰債務の問題は深刻です。ですが、対応策はあります。
当初、過剰債務の多くを借入金が占めていました。しかし、これからは税金の支払いが「債務」として入ってくることになります。
政府は税金に関し、これまで1年間支払いを猶予してきました。でも、その猶予期間もすでに終了しています。今年は2年分払わなければなりません。
そこで、納付の猶予あるいは分割も認めてはどうかと思います。弾力的な納税対応を行い、中小企業の資金繰りを支援すべきです。
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巣鴨地蔵通り商店街で買い物をする人たち=9月29日、東京都豊島区
「生命維持」こそ
一方、保証協会や金融機関はコロナ禍のど真ん中にもかかわらず平時の審査体制に戻っています。昨年は、融資を認めていたのに、今は事業計画書を提出させて返済能力を判断しています。その結果、保証承諾を拒絶したり、「返済する能力がないですよね」と貸し出さない、あるいは融資を認めても減額するということが起きています。
コロナ禍の真っ最中に平時の審査をされても困ります。
コロナ禍で先が見えない企業には、政府が責任を持って支援をすることが必要です。今なによりも中小企業の「生命維持」が大事だと思います。
その点で消費税の減税は効果的です。消費税を減税して消費を喚起すれば、小売店だけでなく、メーカーそして素材、例えば農林水産業までさかのぼって効果が波及していきます。需要の拡大が目先の商品の売り上げ拡大にとどまらず、それを作っているメーカーさん、その素材を作っている漁民や農民の方、いろんなところに波及していきます。いわゆる「川下産業」から「川上産業」へ波及していくのです。
景気が拡大することによって企業業績も回復します。業績がよくなると賃金が上がる、賃金が上がると消費がまた増えます。安倍政権が始めた経済政策「アベノミクス」は、大企業や富裕層が豊かになればいずれ成長の果実が一般国民にもしたたり落ちるという「トリクルダウン理論」を主張しました。しかし、実際にトリクルダウンは起きませんでした。
消費税減税は、ある意味で「逆のトリクルダウン」になります。
一般国民の消費がどんどん拡大してメーカーまで広がっていき、それがまた下りてきて消費が拡大するという、そういう経済の好循環をつくるべきですし、つくることができると思います。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月6日付掲載
経営難だけでなく、後継者難に苦しむ中小企業。
そのなかで、税金の納付の猶予あるいは分割も認めてはどうかと思います。弾力的な納税対応を行い、中小企業の資金繰りを支援すべき。
保証協会や金融機関はコロナ禍のど真ん中にもかかわらず平時の審査体制に。政府が責任を持って支援をすることが必要。
とりわけ、消費税の減税は効果的です。消費税を減税して消費を喚起すれば、小売店だけでなく、メーカーそして素材、例えば農林水産業までさかのぼって効果が波及。
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