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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

コロナ禍と観光産業② 持続可能な地域循環型へ

2021-10-19 06:59:38 | 新型コロナウイルス
コロナ禍と観光産業② 持続可能な地域循環型へ
京都・まちづくり市民会議共同代表 中林浩さんに聞く

―今後、持続可能な観光産業はどうあるべきでしょうか。
観光というものをどうとらえるかという根本間題ですね。今、資本主義を分析したマルクスの『資本論』が注目を浴びています。有名な第3巻第48章では、「労働日の短縮こそは秩序ある物質代謝の根本条件である」としています。「物質代謝」とは、生命の体内での化学変化を意味する概念ですが、人間が労働によって自然を変化させること全般をも指します。

地域を健全に
京都大学の建築学教室の西山夘三研究室や三村浩史研究室は、労働から解放された時間(レクリエーション)に着目して都市のあり方を研究してきました。レクリエーションの中でも、とりわけ観光が人間を発達させ地域の秩序をもたらすと考えてきました。労働時間の短縮により自由時間を駆使できる人々が地域を健全にすると考えてきたのです。残念ながら現実では、財界・支配層が観光をも食い物にする事例が多いので、これを批判し、景観や文化財の保全の制度を確立することを主張してきました。
けっして労働時間を短くするわけではない「働き方改革」を進めてきた政府が、もうけ本意で観光政策を展開し、自然環境や文化財を損ねていく、つまり物質代謝をかく乱しているのです。
観光が盛んになるのは、人間の生活が発展する上で当然の帰結です。世界の人々が労働から解放された時間を楽しみに使うために、観光が健全に行われるべきだという観点は欠かせません。
今、京都市で目立っているのは、コロナ後を見据えて超富裕層を対象にしたホテル計画です。二条城周辺や祇園、また鴨川西岸から東山が眺められる景勝地を高級ホテルや高級マンションが次々と占めていこうとしているのです。こうした富裕層のための土地利用は地域に密着したさまざまな観光産業を潤すことにつながりません。近隣の食事会や会合に利用できたり、気軽に立ち寄れるようなロビーや喫茶店もなく、地域住民には近寄りがたいホテルです。
しかも、こうした高級ホテルが小学校跡地を利用して建設されています。小学校は、廃校後も、地域の拠点として重要な役割を果たしてきたにもかかわらずです。



仁和寺門前の高級ホテル建設予定地(中林浩氏提供)

中小を支えて
コロナ後を見据えた観光行政は、明らかに地域循環型社会に反したものです。京都の観光スポットの魅力を長きにわたって維持してきた中小の旅館や土産物屋は、コロナ禍のもとで疲弊しています。こうした中小の観光業者を支えることこそ観光産業を持続可能なものにできるのです。超高級ホテルの乱造は、大手企業のもうけにつながっても、地域経済の振興につながらないといえます。
それでも、日本の各地にはよく続けてきたなと思えるような伝統工芸や伝統芸能が残っていて、見に行く価値があります。また地場産業や地産地消の現場を見るツアーが静かなブームとなっています。このあたりに新しい持続可能な観光が発展する手がかりがあるのでしょう。近年、テレビで、名所にこだわらない町歩き型の紀行番組がすいぶん増えているのもその反映です。
あえて最後にいっておきたいのは、日本における今日のインバウンド(訪日外国人観光客)の急増は、観光客の誘致策が成功しているためではないということです。
日本経済が不振である一方、アジア諸国が経済成長し、経済格差が縮まって、来訪しやすくなったからです。現代社会は各国国内で著しい経済格差を生じさせながらも、国単位でみると先進国と中進国の経済格差は縮まっています。日本経済の不振を観光で取りもどそうとして、経済をも衰退させてしまう、こうした悪循環を絶たなければなりません。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月16日付掲載


本来の観光とは、労働時間の短縮(マルクスに言わせれば労働日の短縮)で得られた自由な時間を謳歌して楽しむもの。
一方、もうけ本位で観光を展開すると、自然環境や文化財を損ねていく。
ホテルも、宿泊しない観光客も気軽に立ち寄れるロビーや喫茶店があって欲しい。
京都の観光スポットの魅力を長きにわたって維持してきた中小の旅館や土産物屋は、コロナ禍のもとで疲弊しています。こうした中小の観光業者を支えることこそ観光産業を持続可能なものにできる。


源光庵 悟りの窓と迷いの窓
源光庵 悟りの窓と迷いの窓 posted by (C)きんちゃん
源光庵 悟りの窓と迷いの窓

永観堂 鶴寿台の紅葉3
永観堂 鶴寿台の紅葉3 posted by (C)きんちゃん
永観堂 鶴寿台の紅葉

高山寺 石水院の紅葉_02
高山寺 石水院の紅葉_02 posted by (C)きんちゃん
高山寺 石水院の紅葉

京都には、祇園や嵐山、金閣・銀閣だけでなく、いろんな観光スポットがあります。
その魅力を発信するには、地元力が必要。

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