徹底追及 統一協会 信者2世編Ⅱ③ 文鮮明の死きっかけに帰国 洗脳が解けても苦難
作家 冠木結心(かぶらぎけいこ)さん
統一協会(世界平和統一家庭連合)の開祖、文鮮明は2012年に死去します。それをきっかけに集団結婚で韓国に渡っていた作家の冠木結心さんは、帰国を決断します。
統一協会では、文鮮明をメシア=救世主と信者を洗脳します。文鮮明の死は、冠木さんに「メシアではない」と気づかせ、洗脳を解きました。
社会基盤がない
最初の夫の暴力も、次の夫による借金苦も、洗脳されているときは苦労を神の国をつくるための“試練”ととらえていました。「頭の中がお花畑だったのです」と冠木さん。
しかし、洗脳が解けると、価値観や生き方を一から築きなおす必要がありました。
帰国する際にパスポートを夫に隠されたため、日本領事館から急きょ発行してもらった「帰国のための渡航書」(冠木さん提供)
統一協会では、勉強よりも信仰が優先されます。学歴もなく、韓国に約10年いた冠木さんには、日本に社会基盤はありませんでした。
しかも2人の子どもをかかえた40歳手前のシングルマザーです。毎日のようにハローワークに通いましたが、安定した仕事を得られませんでした。
雇用を破壊してきた日本の経済政策も追い打ちをかけます。
就ける仕事は非正規で低賃金ばかり。いつも違う職場に通い、チラシ折りや梱包(こんぽう)など単純作業を行う日々が続きました。
実の母親は子どもたちに信仰を強いるため、面倒を頼むことはできません。
行政にSOSを出しても、窓口で「信教の自由」「親子の問題」と、門前払いされることがあるといいます。
頼れる人も少なく、経済的にも追い込まれた冠木さんは、「いのちの電話」に電話しました。
自己破産と心理治療を勧められました。母親の干渉から逃れるため、引っ越しを機に、住民票の閲覧に制限をかけました。
自身も加害側に
洗脳が解けた当初、「だまされた」「人生めちゃくちゃにされた」と怒りがわきました。
一方で、心理治療を通し、自身も統一協会にさまざまな人を引き込もうとした加害者であったと気づきました。
自身の行いに報いるため、また同じような経験をする人がいなくなるよう願い、執筆活動に励みます。
「私はたまたま、『人生を台無しにされた怒り』を転換できました。でも一歩でも間違えたら、安倍晋三元首相を撃った山上徹也容疑者のようになっていたのでは―と思うのです」
家庭内でカルト問題を解決することは困難だとし、信仰の名のもとで虐待されている子どもや、苦しむ人たちの救済を求めます。そのためにも、「信仰ではなく虐待」という認識が、自治体や相談窓口で広がることが重要だと指摘します。
冠木さんは訴えます。
「1990年代半ば以降、メディアで統一協会問題が取り上げられることがほとんどなくなりました。『空白の30年』と言われていますが、私たちにとっては『苦しみの30年』でした。党派を超え、この間題に取り組んでほしいです」
(信者2世編Ⅱ おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月21日付掲載
統一協会では、文鮮明をメシア=救世主と信者を洗脳。文鮮明の死は、冠木さんに「メシアではない」と気づかせ、洗脳を解きました。
一方で、心理治療を通し、自身も統一協会にさまざまな人を引き込もうとした加害者であったと気づきました。
自身の行いに報いるため、また同じような経験をする人がいなくなるよう願い、執筆活動に励みます。
「信仰ではなく虐待」という認識が、自治体や相談窓口で広がることが重要。
作家 冠木結心(かぶらぎけいこ)さん
統一協会(世界平和統一家庭連合)の開祖、文鮮明は2012年に死去します。それをきっかけに集団結婚で韓国に渡っていた作家の冠木結心さんは、帰国を決断します。
統一協会では、文鮮明をメシア=救世主と信者を洗脳します。文鮮明の死は、冠木さんに「メシアではない」と気づかせ、洗脳を解きました。
社会基盤がない
最初の夫の暴力も、次の夫による借金苦も、洗脳されているときは苦労を神の国をつくるための“試練”ととらえていました。「頭の中がお花畑だったのです」と冠木さん。
しかし、洗脳が解けると、価値観や生き方を一から築きなおす必要がありました。
帰国する際にパスポートを夫に隠されたため、日本領事館から急きょ発行してもらった「帰国のための渡航書」(冠木さん提供)
統一協会では、勉強よりも信仰が優先されます。学歴もなく、韓国に約10年いた冠木さんには、日本に社会基盤はありませんでした。
しかも2人の子どもをかかえた40歳手前のシングルマザーです。毎日のようにハローワークに通いましたが、安定した仕事を得られませんでした。
雇用を破壊してきた日本の経済政策も追い打ちをかけます。
就ける仕事は非正規で低賃金ばかり。いつも違う職場に通い、チラシ折りや梱包(こんぽう)など単純作業を行う日々が続きました。
実の母親は子どもたちに信仰を強いるため、面倒を頼むことはできません。
行政にSOSを出しても、窓口で「信教の自由」「親子の問題」と、門前払いされることがあるといいます。
頼れる人も少なく、経済的にも追い込まれた冠木さんは、「いのちの電話」に電話しました。
自己破産と心理治療を勧められました。母親の干渉から逃れるため、引っ越しを機に、住民票の閲覧に制限をかけました。
自身も加害側に
洗脳が解けた当初、「だまされた」「人生めちゃくちゃにされた」と怒りがわきました。
一方で、心理治療を通し、自身も統一協会にさまざまな人を引き込もうとした加害者であったと気づきました。
自身の行いに報いるため、また同じような経験をする人がいなくなるよう願い、執筆活動に励みます。
「私はたまたま、『人生を台無しにされた怒り』を転換できました。でも一歩でも間違えたら、安倍晋三元首相を撃った山上徹也容疑者のようになっていたのでは―と思うのです」
家庭内でカルト問題を解決することは困難だとし、信仰の名のもとで虐待されている子どもや、苦しむ人たちの救済を求めます。そのためにも、「信仰ではなく虐待」という認識が、自治体や相談窓口で広がることが重要だと指摘します。
冠木さんは訴えます。
「1990年代半ば以降、メディアで統一協会問題が取り上げられることがほとんどなくなりました。『空白の30年』と言われていますが、私たちにとっては『苦しみの30年』でした。党派を超え、この間題に取り組んでほしいです」
(信者2世編Ⅱ おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月21日付掲載
統一協会では、文鮮明をメシア=救世主と信者を洗脳。文鮮明の死は、冠木さんに「メシアではない」と気づかせ、洗脳を解きました。
一方で、心理治療を通し、自身も統一協会にさまざまな人を引き込もうとした加害者であったと気づきました。
自身の行いに報いるため、また同じような経験をする人がいなくなるよう願い、執筆活動に励みます。
「信仰ではなく虐待」という認識が、自治体や相談窓口で広がることが重要。
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