暴走と破滅の敵基地攻撃④ 先制攻撃につながる恐れ
「『敵基地攻撃』は先制攻撃と何が違うのか」。6月25日の日本外国特派員協会の会見で河野太郎防衛相(当時)が敵基地攻撃は先制攻撃とは違うと発言したのに対し、「敵基地攻撃」の定義を問う質問が外国人記者から相次ぎました。
違い説明できず
記者からは「ミサイルの燃料噴射開始時に敵の基地を攻撃する能力というのは、『先制攻撃』と定義するのがごく普通ではないか。日本国憲法の枠内だと考えるのか」との疑問も。河野防衛相は「議論の前に言葉の定義を明確にしなければならない」と述べるものの、「敵基地攻撃」と「先制攻撃」の違いを明確に説明できませんでした。
国連憲章では自衛権の発動以外の武力行使は禁じられており、先制攻撃は認められていません。一方、石破茂防衛庁長官(当時)は2003年、攻撃を受けていなくても相手国が武力行使に「着手」していれば、相手の基地を攻撃することは自衛権の範囲で可能だとの認識を示しました。
しかし、この前提には「着手の時点」を客観的に判断する基準がないという重大な欠陥があります。河野防衛相(当時)は着手について「その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、対応などによるものであり、個別具体的な状況に即して判断する」(7月9日、参院外交防衛委員会)と答弁。「個別具体的な状況に即して」と述べるのみで客観的な判断基準は示せませんでした。
松井芳郎名古屋大学名誉教授(国際法)は、大量破壊兵器の存在を口実とした2003年3月のイラク戦争など武力攻撃を正当化する事実が誤りだった事例が多数あり、「近年の経験に照らしても武力攻撃の着手に関する判断基準が主観的であるのは危険だ」と指摘。さらに「武力攻撃の着手を誤認し、攻撃すれば国際法違反の先制攻撃、侵略行為になる。国としての損害賠償責任や指導者の刑事責任が問われる可能性もある」と警鐘を鳴らします。日本が国際法違反の先制攻撃をした結果、報復攻撃を受けて国民に甚大な被害が出る事態も想定されます。
北朝鮮の移動式ミサイル発射機から発射される短距離弾道ミサイル(防衛白書から)
文民への被害も
敵基地攻撃の危険性はこれにとどまりません。戦時における文民の保護を定めた国際人道法に違反する恐れがあります。
河野防衛相(当時)は敵基地攻撃の対象として、防空用レーダーや対空ミサイル、移動式ミサイル発射機、地下施設となっているミサイル基地などを挙げています。攻撃目標が広範囲に及ぶ上、基地外を自在に移動できる移動式ミサイル発射機も攻撃目標に含まれます。
松井氏は、「攻撃は厳格に軍事目標のみに向けなければならない」というのが国際人道法の基本原則であり、巻き添えによる文民の死傷や民用物の損傷を防止する措置をとることが義務付けられていると指摘。「長距離巡航ミサイルなどで相手の脅威圏外から対処する敵基地攻撃は、軍事目標を十分に識別することは困難であり、文民に被害が出る可能性は否定できない」と強調します。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月22日付掲載
自衛のために敵基地を攻撃するといっても、移動式ミサイル発射装置もある。また、軍事目的だけに絞って攻撃することは困難。文民に被害が出る可能性は排除でいない。
また、相手を完全につぶさないと反撃され、国民に甚大な被害がでることも想定される。
「『敵基地攻撃』は先制攻撃と何が違うのか」。6月25日の日本外国特派員協会の会見で河野太郎防衛相(当時)が敵基地攻撃は先制攻撃とは違うと発言したのに対し、「敵基地攻撃」の定義を問う質問が外国人記者から相次ぎました。
違い説明できず
記者からは「ミサイルの燃料噴射開始時に敵の基地を攻撃する能力というのは、『先制攻撃』と定義するのがごく普通ではないか。日本国憲法の枠内だと考えるのか」との疑問も。河野防衛相は「議論の前に言葉の定義を明確にしなければならない」と述べるものの、「敵基地攻撃」と「先制攻撃」の違いを明確に説明できませんでした。
国連憲章では自衛権の発動以外の武力行使は禁じられており、先制攻撃は認められていません。一方、石破茂防衛庁長官(当時)は2003年、攻撃を受けていなくても相手国が武力行使に「着手」していれば、相手の基地を攻撃することは自衛権の範囲で可能だとの認識を示しました。
しかし、この前提には「着手の時点」を客観的に判断する基準がないという重大な欠陥があります。河野防衛相(当時)は着手について「その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、対応などによるものであり、個別具体的な状況に即して判断する」(7月9日、参院外交防衛委員会)と答弁。「個別具体的な状況に即して」と述べるのみで客観的な判断基準は示せませんでした。
松井芳郎名古屋大学名誉教授(国際法)は、大量破壊兵器の存在を口実とした2003年3月のイラク戦争など武力攻撃を正当化する事実が誤りだった事例が多数あり、「近年の経験に照らしても武力攻撃の着手に関する判断基準が主観的であるのは危険だ」と指摘。さらに「武力攻撃の着手を誤認し、攻撃すれば国際法違反の先制攻撃、侵略行為になる。国としての損害賠償責任や指導者の刑事責任が問われる可能性もある」と警鐘を鳴らします。日本が国際法違反の先制攻撃をした結果、報復攻撃を受けて国民に甚大な被害が出る事態も想定されます。
北朝鮮の移動式ミサイル発射機から発射される短距離弾道ミサイル(防衛白書から)
文民への被害も
敵基地攻撃の危険性はこれにとどまりません。戦時における文民の保護を定めた国際人道法に違反する恐れがあります。
河野防衛相(当時)は敵基地攻撃の対象として、防空用レーダーや対空ミサイル、移動式ミサイル発射機、地下施設となっているミサイル基地などを挙げています。攻撃目標が広範囲に及ぶ上、基地外を自在に移動できる移動式ミサイル発射機も攻撃目標に含まれます。
松井氏は、「攻撃は厳格に軍事目標のみに向けなければならない」というのが国際人道法の基本原則であり、巻き添えによる文民の死傷や民用物の損傷を防止する措置をとることが義務付けられていると指摘。「長距離巡航ミサイルなどで相手の脅威圏外から対処する敵基地攻撃は、軍事目標を十分に識別することは困難であり、文民に被害が出る可能性は否定できない」と強調します。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月22日付掲載
自衛のために敵基地を攻撃するといっても、移動式ミサイル発射装置もある。また、軍事目的だけに絞って攻撃することは困難。文民に被害が出る可能性は排除でいない。
また、相手を完全につぶさないと反撃され、国民に甚大な被害がでることも想定される。
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