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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

貿易と新自由主義④ 企業に国際的規制を

2022-03-04 07:10:26 | 経済・産業・中小企業対策など
貿易と新自由主義④ 企業に国際的規制を
アジア太平洋資料センター共同代表 内田聖子さん

―欧米では「自由貿易」が国民の支持を失っていますね。
米国は「自由貿易」や経済のグローバル化を世界で強力に推し進めてきた張本人ですが、その弊害が国内で噴き出しています。大企業の海外移転で国内産業が衰退し、中間層が没落し、貧困と格差が拡大しています。

市民の猛反発
米国民は過去の「自由貿易・投資」協定で雇用が失われたという負の経験を持ち、「自由貿易」は経済成長や雇用増加に結びつかないという認識を共有しています。その下で環太平洋連携協定(TPP)への反対運動が起こり、2016年に頂点に達しました。米国最大労組の一つであるアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL・C10)は、労働者の権利を切り下げるTPPに反対だと明言して運動していました。08年の金融危機後、金融業界は救済される一方、打撃を受けたのは貧困層でした。こうしたことからも大企業優位のグローバル化への批判は高まりました。
大統領選では結果的にトランプが勝ち、米国はTPPから離脱しました。労働者、貧困層、中間層、失業者、若者たちの多くが「自由貿易」にノーを突きつけた結果だといえます。
欧州では環大西洋貿易・投資パートナーシップ協定(TTIP)に反対する運動が起こりました。TTIPは欧州と米国が結ぼうとした協定で、中身はほぼTPPと同じでした。一番の争点は農産物でした。欧州の人々は、緩い安全基準しか満たさない米国の食料が入ってきて、食の安全が脅かされると運動していました。
「投資家対国家の紛争解決(ISDS)制度」が非民主的だという非難は欧米で共通していました。環境や公共の利益よりも企業や投資家の利益が優先される点に、市民社会は猛反発しました。最終的にはトランプ大統領の登場ですべてが消えたという経過です。



実った水田

人権守るため
―「自由貿易」に代わる国際経済秩序をどうつくっていけばよいでしょうか。
大企業と投資家の自由な活動を確保するために「自由貿易・投資」協定は膨大なものになってきました。交渉分野はモノからサービスへ広がり、最重要分野は投資、金融、知的財産、電子商取引(デジタル貿易)へ移っています。現在の貿易交渉の最大の目標は金融や投資の自由化であり、大企業の国際的なサプライチェーン(供給網)の構築です。
このようになんでもかんでも「貿易の問題だ」といって盛り込むのはもうやめるべきです。カバーする分野が増えれば協定のポリュームが大きくなり、国民から見えにくくなります。
グローバル経済に接合したい途上国に対して先進国が膨大な協定のパッケージを突きつけるのは暴力的なやり方です。特にISDSや知的財産権の強化のような有害なルールを決めるべきではありません。先進国の都合で関税を撤廃しろと迫っても、そんなことをしたら自国の農業が全滅してしまうという国がたくさんあります。無理に先進国都合のルールを決めようとした結果、交渉が進まず、世界貿易機関(WTO)は機能不全に陥りました。
関税や規制は主権国家が自由に決めればよいのです。貿易協定がカバーする範囲を減らし、国家主権と国民主権を回復すべきです。
逆に、環境や人権や労働条件などを守るためには、貿易協定の外側で強力な国際的ルールをつくるべきです。貿易協定は貿易を促進する目的でつくられています。その中に環境や人権の条項を入れても、入れないよりはましですが、実効性に限界があります。全く別の方向から強大な力をぶつける必要があります。参考になるのは、昨年国際的に合意された最低法人税率と多国籍企業の税逃れ対策、いわゆるデジタル課税です。
企業活動がグローバル化しているのに、課税や規制は一国単位でしかかけられないという点に根本的な問題があります。ですから世界全体で多国籍企業に課税の網をかぶせる合意ができたことは大きな一歩です。環境や人権の分野でも具体的な代替案を議論していかなければなりません。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年2月26日付掲載


大企業と投資家の自由な活動を確保するために「自由貿易・投資」協定は膨大なものに。交渉分野はモノからサービスへ広がり、最重要分野は投資、金融、知的財産、電子商取引(デジタル貿易)へ移っていく。
環境や人権や労働条件などを守るためには、貿易協定の外側で強力な国際的ルールをつくるべき。
参考になるのは、昨年国際的に合意された最低法人税率と多国籍企業の税逃れ対策、いわゆるデジタル課税。一歩ずつ前進して行っています。

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