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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

国際課税の動向② 真の解決法 合算課税

2020-10-31 07:13:35 | 国際政治
国際課税の動向② 真の解決法 合算課税
政治経済研究所理事 合田寛さん

「デジタル課税」をめぐる国際的な取り組みは7年前に始まり、今年の年末には最終決着に至る予定でした。ところが米国などの反発で、決着を来年半ばに先送りすることが決定されました。その背景に何があったのでしょうか。

いっせい反撃が
GAFA(ガーファー=グーグル+アップル+フェイスブック+アマゾン)などデジタル企業がこれまで課税されなかった理由として、第一に「恒久的施設(PE)なければ課税なし」というルール、第二に利益を自由に移転できる「移転価格」ルールの二つの国際ルールがあります。したがってデジタル企業に対して本格的に課税するためには、これらの国際ルールを根本的に改めることが不可欠です。
しかしこの二つの国際ルールはデジタル企業に限らず、一般に多国籍企業が利益をタックスヘイブン(租税回避地)に移転して税を逃れるためにも利用されるルールです。そのために、経済協力開発機構(OECD)のもとで137力国が参加する「包摂的枠組み」会合による改革が、現行ルールを踏み越える動きを見せ始めると、国際ビジネス界はいっせいに反撃を開始しました。
反対したのはビジネス界だけではありません。GAFAなど巨大企業の多くは米国に本拠を置いています。米財務省のムニューシン長官は昨年12月、OECD事務局長に対し、改定される二つの国際ルールは「セーフ・ハーバー制」(採用するかどうかを企業の選択に任せる方式)とする
ことを求める書簡を送りました。
「セーフ・ハーバー制」にすればほとんどの米国企業が新ルールに従わないことは目に見えています。米国の態度にしびれを切らした英国、フランス、イタリアなど多くの国は、計画していた独自の「デジタル・サービス税(DST)」の実施に向けて動き始めました。


■デジタル・サービス税の事例
対象サービス税率適用期間
イギリスソーシャルメディア
ネット検索
オンライン市場
2%2020年4月1日
フランスソーシャルメディア
デジタル広告
3%2019年1月1日
(20年末まで延期)
イタリアデジタル広告
オンライン市場
ユーザー情報の取引
3%2020年1月1日
オーストリアデジタル広告5%2020年1月1日
KPMG「デジタル経済への課税」などから作成



アマゾンの物流センター=埼玉県川越市

米側からの脅迫
これに対し米財務長官は今年6月、英国、フランス、スペイン、イタリアの財務相あてに書簡を送り、「いま世界は100年来の深刻な公衆衛生危機に直面している。世界の政府は新型コロナウイルスによってもたらされている経済の課題に注意を集中すべきだ。デジタル課税の困難な話し合いを続けることは、はるかに重要な問題から目をそらす」と、国際合意に向けた議論の中止を求めました。
さらに書簡は「もし他国がDSTを導入すれば、米国はそれに相当する手段で対抗するであろう」と脅迫しています。「それに相当する手段」として取られたのが米国の通商代表部(USTR)による包括通商法301条を適用した貿易制裁です。昨年12月にはDSTを導入したフランスに対して、100%の報復関税(24億ドル、約2500億円)を賦課する決定を発表しました。今年7月には、DSTを実施/準備している英国、イタリア、スペインなど9カ国および欧州連合(EU) に対し、包括通商法301条に基づく調査を告知しています。
もし年内に最終決着できず、議論が中断したまま年末を迎えると、各国はDSTの実施に踏み切る一方、米国は貿易制裁を発動することによって、世界経済は大混乱に陥るところでした。
議論がもつれた理由として、OECD「包摂的枠組み」会合の提案が、古いルールに新しいルールを継ぎ足す部分的変更にとどまったために、制度の枠組みが不必要に複雑になったことがあります。真の解決の方法は、古いルールを全面的に廃棄し、多国籍企業の世界収益を売り上げ、雇用、資産などに応じて各国に配分する「ユニタリー(合算)課税」を導入すること以外にありません。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月29日付掲載


第一に「恒久的施設(PE)なければ課税なし」というルール、第二に利益を自由に移転できる「移転価格」ルールの二つの国際ルールを根本的に改める必要がある。
根本的には、多国籍企業の世界収益を売り上げ、雇用、資産などに応じて各国に配分する「ユニタリー(合算)課税」を導入です。


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