労働講座 きほんのき⑨ 過半数代表者 民主的な選出が課題
企業が労働者に残業をさせるときなど、法律の規制を緩める措置を認める場合に「労使協定」が必要です。そのさいの労働者代表は、企業が勝手に指名することはできません。「労働者の過半数を代表する者」(過半数代表者)を選挙などで正当に選出しなければ協定は無効になります。
労働基準法など労働関係の法律では、残業や休日労働、変形労働時間制、裁量労働制などについて労使協定を結ばなければならないと定めています。これは労働者の意見を反映させる面と、企業が労働基準を下回る措置をとっても免罪されるという両面があります。
過半数代表者は、労働者の過半数で組織されている労働組合がある場合は、その労働組合が自動的になります。そういう組織があるのに、企業が勝手に別の代表を選ぶことは許されません。
過半数で組織されている労働組合がない場合は、企業が責任をもって過半数代表者を選出しなければなりません。
いま労働組合の組織率は17・3%です。労働者1000人以上の規模の大企業は44%ですが、100~999人規模では12・2%、99人以下の規模では0・9%に下がってしまいます。
パートの参加も
労働組合の組織率が低い現状では、多くの企業で独自に労働者代表を選出しなければなりません。その方法が定められています。管理監督者の地位にあるものでないこと、協定を結ぶという選出目的を明らかにして投票、挙手などの民主的な手続きをとって選ぶことです(労働基準法施行規則第6条の2)。
そのさい厚生労働省は、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続きに参加できるようにすることを求めています(厚生労働省「事業主の皆さまへ」)。
選出方法がこれに反している場合は、協定が無効になります。東京都内の企業で、「友の会」という親睦団体の代表を労働者代表にして「三六(さぶろく)協定」を結んでおり、その有効性が裁判で争われた事例があります。判決は、「友の会」は役員を含む全従業員で構成する会員相互の親睦が目的であり、労働組合ではなく、したがって「友の会」代表は労働者の過半数を代表する者とはいえず、「三六協定」は無効だとしています(トーコロ事件、東京高裁1997年11月17日、最高裁第二小法廷2001年6月22日)。
過半数代表者の選出方法(%)
①選挙②信任③全従業員が集まって話し合いにより選出した④職場ごとの代表者など一定の従業員が集まって話し合いにより選出した⑤社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった⑥会社側が指名した⑦その他・無回答
(第134回労働政策審議会労働条件分科会資料)
適正選出指導を
過半数労働組合がない企業は、どういう方法で過半数代表者を選出しているのでしょうか。5月12日の労働政策審議会労働条件分科会に厚生労働省が資料を出しています。
それによると「会社が指名した」というのがトップで28・2%です。
「社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった」というのが11・2%もあります。この2例は明確な違法であり、合わせて39・4%、ほぼ4割です。
このほか「信任」というのが23・5%を占めています。会社を信じて任せるというあいまいな分類で、限りなく違法に近いグレーゾーンです。前2例にこれを加えると6割超になります。
正当な選出と思われるのは、「職場ごとの代表者が集まって話し合いにより選出」9・6%、「全従業員が集まって話し合い選出」8・5%、「選挙」8・3%です。
このように現状は、違法だらけです。労働者の過半数代表者が、規則通りに適切に選出されていないのは大問題です。民主的な手続きで適正に選出されるよう行政機関による厳格な指導が求められています。(随時掲載)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月27日付掲載
企業が労働者に残業させるなどの場合は「労使協定」が必要になる。労働者の代表と協定を結ぶことになりますが、中小企業の場合、実態問題として、なかなか労働者の代表自体が存在しない場合が多い。
企業としては、誠実に対応して労働者の代表を選ぶことが求められる。労働者自身が自覚することと、企業側が労働基準法を誠実に遵守することが求められる。
企業が労働者に残業をさせるときなど、法律の規制を緩める措置を認める場合に「労使協定」が必要です。そのさいの労働者代表は、企業が勝手に指名することはできません。「労働者の過半数を代表する者」(過半数代表者)を選挙などで正当に選出しなければ協定は無効になります。
労働基準法など労働関係の法律では、残業や休日労働、変形労働時間制、裁量労働制などについて労使協定を結ばなければならないと定めています。これは労働者の意見を反映させる面と、企業が労働基準を下回る措置をとっても免罪されるという両面があります。
過半数代表者は、労働者の過半数で組織されている労働組合がある場合は、その労働組合が自動的になります。そういう組織があるのに、企業が勝手に別の代表を選ぶことは許されません。
過半数で組織されている労働組合がない場合は、企業が責任をもって過半数代表者を選出しなければなりません。
いま労働組合の組織率は17・3%です。労働者1000人以上の規模の大企業は44%ですが、100~999人規模では12・2%、99人以下の規模では0・9%に下がってしまいます。
パートの参加も
労働組合の組織率が低い現状では、多くの企業で独自に労働者代表を選出しなければなりません。その方法が定められています。管理監督者の地位にあるものでないこと、協定を結ぶという選出目的を明らかにして投票、挙手などの民主的な手続きをとって選ぶことです(労働基準法施行規則第6条の2)。
そのさい厚生労働省は、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続きに参加できるようにすることを求めています(厚生労働省「事業主の皆さまへ」)。
選出方法がこれに反している場合は、協定が無効になります。東京都内の企業で、「友の会」という親睦団体の代表を労働者代表にして「三六(さぶろく)協定」を結んでおり、その有効性が裁判で争われた事例があります。判決は、「友の会」は役員を含む全従業員で構成する会員相互の親睦が目的であり、労働組合ではなく、したがって「友の会」代表は労働者の過半数を代表する者とはいえず、「三六協定」は無効だとしています(トーコロ事件、東京高裁1997年11月17日、最高裁第二小法廷2001年6月22日)。
過半数代表者の選出方法(%)
①選挙②信任③全従業員が集まって話し合いにより選出した④職場ごとの代表者など一定の従業員が集まって話し合いにより選出した⑤社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった⑥会社側が指名した⑦その他・無回答
(第134回労働政策審議会労働条件分科会資料)
適正選出指導を
過半数労働組合がない企業は、どういう方法で過半数代表者を選出しているのでしょうか。5月12日の労働政策審議会労働条件分科会に厚生労働省が資料を出しています。
それによると「会社が指名した」というのがトップで28・2%です。
「社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった」というのが11・2%もあります。この2例は明確な違法であり、合わせて39・4%、ほぼ4割です。
このほか「信任」というのが23・5%を占めています。会社を信じて任せるというあいまいな分類で、限りなく違法に近いグレーゾーンです。前2例にこれを加えると6割超になります。
正当な選出と思われるのは、「職場ごとの代表者が集まって話し合いにより選出」9・6%、「全従業員が集まって話し合い選出」8・5%、「選挙」8・3%です。
このように現状は、違法だらけです。労働者の過半数代表者が、規則通りに適切に選出されていないのは大問題です。民主的な手続きで適正に選出されるよう行政機関による厳格な指導が求められています。(随時掲載)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月27日付掲載
企業が労働者に残業させるなどの場合は「労使協定」が必要になる。労働者の代表と協定を結ぶことになりますが、中小企業の場合、実態問題として、なかなか労働者の代表自体が存在しない場合が多い。
企業としては、誠実に対応して労働者の代表を選ぶことが求められる。労働者自身が自覚することと、企業側が労働基準法を誠実に遵守することが求められる。
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