シリーズ 原発の深層 第一部・原発マネー⑧&⑨ 3法で交付金漬けに&田中邸に消えた5億
3法で交付金漬けに
政府と財界・産業界は、“札束”で自治体を原子力発電所の推進に組み込む仕組みをつくり出しました。電源3法(電源開発促進税法、特別会計に関する法律、発電用施設周辺地域整備法)に基づく交付金です。
東京都港区にある、高さ115メートルの高層ビル9階に原子力産業協会(原産協会)があります。1956年に発足した原産協会は、財界代表が参加し、原発推進を図ってきました。
原産協会の活動実績について、担当者は淡々と語りました。「(提言して実現されたものは)昔でいえば、電源3法がそうでした」
福井は3245億円
74年につくられた電源3法の交付金は、原発や関連施設が立地している地域に交付されます。東日本大震災で深刻な事故を起こした福島原発(原子炉10基)を抱える福島県では、2009年度までの累積額が2717億円に及びます。原発が集中し、15基の原子炉を有する福井県は、09年度までに総額3245億円が交付されました。原発と使用済み核燃料の再処理工場がある青森県は、10年度までの交付額が累積で2143億円に達しています。
なぜ、電源3法が制定されたのでしょうか。
「原子力発電の安全性に対する不安や不信が存在した」「先鋭化・組織化された反対運動が展開されるようになった」。東京電力の社史『関東の電気事業と東京電力電気事業の創始から東京電力50年への軌跡』は、当時、住民の間に原発への不安が広がっていた事情を指摘しています。この不安を抑えるため、電力会社や産業界は、自治体を交付金漬けにする手法を編み出したのです。
電源3法成立の前年の73年、日本原子力産業会議(現・原産協会)が「『原子力開発地域整備促進法』(仮称)制定についての要望」を発表しました。「原子力開発に関与する地方自治体財政を恒久的に安定せしめるよう、合理的な税制措置を早急に確立し実施されたい」と政府に求めたのです。
立地にハズミ
電力会社で構成される電気事業連合会(電事連)は74年1月、当時の通商産業大臣の中曽根康弘氏に、立地促進の要望書を提出し、原発立地促進の法的整備を要請しました。そして、同年6月に電源3法が成立、電事連が編さんした『電気事業連合会35年のあゆみ』は、こう絶賛します。「『受け入れやすい措置』が講じられたことで、立地にハズミがつく」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月9日付掲載
田中邸に消えた5億円
新潟県の佐渡島を望む日本海沿いの砂丘地が、世界最大の東京電力柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発(出力821万キロワット)へと変貌した背景について、地元では自民党政治家の“黒いうわさ”が語り継がれてきました。
元県議の証言
柏崎市(旧西山町)出身の田中角栄元首相の土地転がし疑惑です。本紙2001年1月15日付は、田中氏の後援会「越山会」幹部だった木村博保氏(元自民党県議)の証言で裏付けました。原発用地の売却資金5億円が、東京・目白の田中邸に運ばれ、1972年7月の自民党総裁選に投入された事実を明らかにしました。
柏崎に原発誘致を働きかけた人物として、田中氏が「深い交際」(『私の履歴書』66年)をした東電顧問の松根宗一氏がいます。地元紙は、松根氏が63年当時の柏崎市長・小林治助氏に誘致を勧めたと報じています。
田中氏は、後に原発用地となる砂丘地約52万平方メートルを66年9月、「室町産業」名義で購入。同年10月、日本共産党が国会で、信濃川河川敷買い占めを追及、「室町産業」を幽霊企業だと暴露すると、田中氏は翌67年1月、登記「錯誤」として「室町産業」の名前を抹消し、木村氏名義に。71年10月、東電に用地を売却した際、土地の値段を決めたのも田中氏自身だったと木村氏は証言します。
ハコモノ次々
田中氏は地元の講演で「(柏崎刈羽と巻の)二つの原発ができると新潟県は一大電力供給地となり、税収は豊かになるッ」と叫びました。人口9万人の柏崎市に電源3法交付金だけでも32年間で1133億円も注ぎこまれ、図書館、博物館、体育館やスポーツ施設が次々と造られました。
日本共産党の持田繁義市議は「電源3法交付金で、ゴミ捨て場だった池をわざわざ野球場にしたため、照明施設も作れず、外野が沈み、当初は毎年500万、800万円レベルで地盤沈下対策に追われました。(07年の)中越沖地震による大規模改修費用もかさんでいます」と指摘します。
現在、原子炉7基中2基が稼働する柏崎刈羽原発の構内は、福島第1原発事故後の対応として、「練馬」「八王子」ナンバーなど、東京都内の東電営業所からかき集めた電源車12台が待機。東電は、次の地震に戦々恐々としています。
持田市議は言います。「原発を誘致した結果、ハコモノをつくれば仕事をしていると錯覚する人たちをつくりだしました。原発は、住民の団結、自治をお金で阻害している」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月11日付掲載
金権疑獄で有名な田中角栄ですが、信濃川河川敷の土地ころがしだけでなく、原発誘致にも関わっていたんですね。
「一大電力供給地になると税収が増える・・・」って、なんでもお金で釣るなんで田中角栄らしいですね。
でも、「お金よりも命の方が大事」というのが福島原発事故をうけての率直なところではないでしょうか。
3法で交付金漬けに
政府と財界・産業界は、“札束”で自治体を原子力発電所の推進に組み込む仕組みをつくり出しました。電源3法(電源開発促進税法、特別会計に関する法律、発電用施設周辺地域整備法)に基づく交付金です。
東京都港区にある、高さ115メートルの高層ビル9階に原子力産業協会(原産協会)があります。1956年に発足した原産協会は、財界代表が参加し、原発推進を図ってきました。
原産協会の活動実績について、担当者は淡々と語りました。「(提言して実現されたものは)昔でいえば、電源3法がそうでした」
福井は3245億円
74年につくられた電源3法の交付金は、原発や関連施設が立地している地域に交付されます。東日本大震災で深刻な事故を起こした福島原発(原子炉10基)を抱える福島県では、2009年度までの累積額が2717億円に及びます。原発が集中し、15基の原子炉を有する福井県は、09年度までに総額3245億円が交付されました。原発と使用済み核燃料の再処理工場がある青森県は、10年度までの交付額が累積で2143億円に達しています。
なぜ、電源3法が制定されたのでしょうか。
「原子力発電の安全性に対する不安や不信が存在した」「先鋭化・組織化された反対運動が展開されるようになった」。東京電力の社史『関東の電気事業と東京電力電気事業の創始から東京電力50年への軌跡』は、当時、住民の間に原発への不安が広がっていた事情を指摘しています。この不安を抑えるため、電力会社や産業界は、自治体を交付金漬けにする手法を編み出したのです。
電源3法成立の前年の73年、日本原子力産業会議(現・原産協会)が「『原子力開発地域整備促進法』(仮称)制定についての要望」を発表しました。「原子力開発に関与する地方自治体財政を恒久的に安定せしめるよう、合理的な税制措置を早急に確立し実施されたい」と政府に求めたのです。
立地にハズミ
電力会社で構成される電気事業連合会(電事連)は74年1月、当時の通商産業大臣の中曽根康弘氏に、立地促進の要望書を提出し、原発立地促進の法的整備を要請しました。そして、同年6月に電源3法が成立、電事連が編さんした『電気事業連合会35年のあゆみ』は、こう絶賛します。「『受け入れやすい措置』が講じられたことで、立地にハズミがつく」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月9日付掲載
田中邸に消えた5億円
新潟県の佐渡島を望む日本海沿いの砂丘地が、世界最大の東京電力柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発(出力821万キロワット)へと変貌した背景について、地元では自民党政治家の“黒いうわさ”が語り継がれてきました。
元県議の証言
柏崎市(旧西山町)出身の田中角栄元首相の土地転がし疑惑です。本紙2001年1月15日付は、田中氏の後援会「越山会」幹部だった木村博保氏(元自民党県議)の証言で裏付けました。原発用地の売却資金5億円が、東京・目白の田中邸に運ばれ、1972年7月の自民党総裁選に投入された事実を明らかにしました。
柏崎に原発誘致を働きかけた人物として、田中氏が「深い交際」(『私の履歴書』66年)をした東電顧問の松根宗一氏がいます。地元紙は、松根氏が63年当時の柏崎市長・小林治助氏に誘致を勧めたと報じています。
田中氏は、後に原発用地となる砂丘地約52万平方メートルを66年9月、「室町産業」名義で購入。同年10月、日本共産党が国会で、信濃川河川敷買い占めを追及、「室町産業」を幽霊企業だと暴露すると、田中氏は翌67年1月、登記「錯誤」として「室町産業」の名前を抹消し、木村氏名義に。71年10月、東電に用地を売却した際、土地の値段を決めたのも田中氏自身だったと木村氏は証言します。
ハコモノ次々
田中氏は地元の講演で「(柏崎刈羽と巻の)二つの原発ができると新潟県は一大電力供給地となり、税収は豊かになるッ」と叫びました。人口9万人の柏崎市に電源3法交付金だけでも32年間で1133億円も注ぎこまれ、図書館、博物館、体育館やスポーツ施設が次々と造られました。
日本共産党の持田繁義市議は「電源3法交付金で、ゴミ捨て場だった池をわざわざ野球場にしたため、照明施設も作れず、外野が沈み、当初は毎年500万、800万円レベルで地盤沈下対策に追われました。(07年の)中越沖地震による大規模改修費用もかさんでいます」と指摘します。
現在、原子炉7基中2基が稼働する柏崎刈羽原発の構内は、福島第1原発事故後の対応として、「練馬」「八王子」ナンバーなど、東京都内の東電営業所からかき集めた電源車12台が待機。東電は、次の地震に戦々恐々としています。
持田市議は言います。「原発を誘致した結果、ハコモノをつくれば仕事をしていると錯覚する人たちをつくりだしました。原発は、住民の団結、自治をお金で阻害している」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月11日付掲載
金権疑獄で有名な田中角栄ですが、信濃川河川敷の土地ころがしだけでなく、原発誘致にも関わっていたんですね。
「一大電力供給地になると税収が増える・・・」って、なんでもお金で釣るなんで田中角栄らしいですね。
でも、「お金よりも命の方が大事」というのが福島原発事故をうけての率直なところではないでしょうか。
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