きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

数値が示す日本経済⑥ 農業・農村(下) TPPが危機に追い打ち

2016-08-21 12:15:20 | 経済・産業・中小企業対策など
数値が示す日本経済⑥ 農業・農村(下) TPPが危機に追い打ち

農業・農村の危機的状況に追い打ちをかけるのが、安倍晋三政権が署名した環太平洋連携協定(TPP)です。TPPによって、農林水産物のうち82%の品目の関税が撤廃され、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要5項目でも29%の品目の関税が撤廃されます。関税削減、特別輸入枠も含めて、「無傷」の農産物はありません。農産物輸入がさらに増え、農業の生産基盤がいっそう弱体化する恐れがあります。

 総数関税撤廃関税撤廃率(%)
全品目9,3218,86295.1
 うち農林水産物2,5942,13582.3
  うち関税撤廃したことがないもの90144649.5
   うち重要5項目59417028.6
   うち重要5項目以外30727689.9
  うち関税撤廃したことがあるもの1,6931,68999.8
(農林水産省資料から作成。関税撤廃率は小数第2位を四捨五入)



世界一の輸入国
安倍政権は、TPPの影響を軽微に描いた試算を公表する一方、農林水産物輸出額1兆円の目標を掲げて、輸出が農業を再生させる“切り札”であるかのような幻想を振りまいています。しかし、そのうち、加工食品が5000億円を占め、農産物は1400億円にすぎません。
現実には、日本は世界一の農産物純輸入国であり、農産物輸入額は、12年の5兆4419億円から15年の6兆5629億円へ、第2次安倍政権発足後の3年間で1兆1210億円も増えました。
米農務省が14年10月にまとめた報告書によると、TPPで参加12力国の農産物貿易が計85億ドル分増えます。しかし、輸出増加額の70%に当たる58億ドル分を日本が一手に輸入することになると予測しています。
すでに世界一の農産物純輸入国であるうえに、TPPによって農産物輸入が増大するなら、安倍政権が掲げる農林水産物輸出額1兆円など“気休め”にもなりません。
安倍政権は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げ、農林漁業や農山漁村を切り捨てる姿勢をあらわにしています。このような農政を続けていては、農業・農村の崩壊が一気に進み、日本は食料自給の基盤を失った国になりかねません。







「くらしをこわすTPP反対」と集まった人たち=5月11日、国会前

主権守るルール
世界はもはや、金さえ出せばいつでも必要なだけの食料が入手できる時代ではありません。広範な国民の共同の力で、TPPの国会承認を阻止するとともに、各国の経済主権と食料主権を尊重した平等・互恵の投資と貿易の国際的ルールを確立する必要があります。
米国・財界いいなりの農政を終わらせ、農業を国の基幹産業として再生させることが重要です。それには、価格保障と所得補償を組み合わせて、安心して再生産できる農業をつくり、さしあたり食料自給率を50%へ引き上げることが急務です。
(この項おわり)(北川俊文が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年8月19日付掲載


安倍首相は、「輸出で競争力をつける」などと言いますが、金額はごくわずか。TPPは、農業生産に打撃を与える方がはるかに大きい。

数値が示す日本経済⑤ 農業・農村(上) 自民農政で崩壊の危機

2016-08-20 06:44:47 | 経済・産業・中小企業対策など
数値が示す日本経済⑤ 農業・農村(上) 自民農政で崩壊の危機

国民の命を支える食料を供給する農業・農村に崩壊の危機が広がっています。大企業製品の輸出を最優先し、食料は輸入すればいいとする、歴代の自民党政権による米国・財界いいなりの農政に根本的な原因があります。


棚田の稲刈り=和歌山県有田川町「あらぎ島」

農業人口が半減
農林水産省の「農業構造動態調査」によると、2016年2月1日現在の農業就業人口が192万2200人となり、歴史上初めて200万人を割り込みました。2000年の389万1200人から16年間で半減したことになります。
同時に、農業者の高齢化が急速に進んでおり、普段に農業にたずさわる基幹的農業従事者の平均年齢が67歳に達しており、70代以上の人が47%以上を占めています。
農水省の「耕地および作付面積統計」にょると、農地(耕作)面積は、田畑の合計で最大値だった1961年の608万6000ヘクタールから2015年の449万6000ヘクタール、159万ヘクタールも減少しました。岩手県1県に相当する面積です。他方、かつては耕作されていたものの、1年以上作付けされず、今後も作付けの予定のない耕作放棄地が、15年には42万3000ヘクタールにのぼりました。1975年の13万1000ヘクタールの3倍以上になります。








自給率最低水準
度重なる米国の圧力に屈して拡大を続けてきた農産物輸入の「自由化」で、農産物輸入は増加の一途です。輸入と輸出を差し引きして、日本は世界一の農産物純輸入国となっています。そのため、国内の農業総産出額も生産農業所得も減少し続け、供給熱量ベースの食料自給率は先進諸国で最低水準の39%に低迷しています。特に飼料自給率は、27%という恐るべき低さで、食料自給率を押し下げる深刻な一因になっています。
米の需給を安定させる国の責任を放棄し、米価を市場任せにし、再生産も保障できないほどの米価暴落を放置する安倍晋三政権のもとで、農家は「米作って、飯食えない」と悲鳴を上げています。
米価下落傾向が続いている中で、安倍政権が強行している米への助成の廃止によって、米生産への依存が大きい生産者ほど大きな打撃を受けます。特に、政府が育成するとしている大規模経営が最も大きな打撃を受けることになるのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年8月18日付掲載


世界的な食糧危機が危惧される中、食糧の国際生産を上げるのは国家的プロジェクトだ。
コメ食べる人も、パン食べる人も。魚食べる人も、肉食べる人も。心ひとつに取り組むべき課題。

数値が示す日本経済④ 中小企業 休廃業・解散が高水準

2016-08-19 09:55:48 | 経済・産業・中小企業対策など
数値が示す日本経済④ 中小企業 休廃業・解散が高水準

日本の中小企業数(約381万)は全企業数の99・7%を占め、働く人のうちの3分の2が働いています。中小企業は日本経済の根幹であり、「社会の主役として地域社会と住民生活に貢献」(中小企業憲章)しています。中小企業の85%は小規模事業者(製造業は従業員20人以下、卸売業・小売業・サービス業は5人以下)です。


font color="black">金属加工の中小業者=東京都墨田区

小業者は3割減
中小企業数は減少し続けています。1986年の約533万から2014年は約381万と28・5%減少しました。同期間に小規模事業者数は約477万から約325万と31・9%減少しています。要因は、廃業数が開業数を上回っていることです。
背景には、内需の長期にわたる低迷に加え、大企業の国際競争力の強化と利益確保を優先し、中小企業はそれを補完するものと位置づけた国の経済・産業政策があります。国や自治体の予算、振興策でも中小企業は軽視されました。さらに、大型店の身勝手な出店・撤退、「単価たたき」などの不公正取引や銀行の貸し渋り、貸しはがしが野放しにされ、中小企業は大企業の過酷な搾りあげの対象となりました。
大企業は1980年代後半から次々と海外進出を進め、中小企業を中心とした地域経済は空洞化し衰退していきました。2000年以降は、「構造改革」の名の下に、市場競争力のある強い企業を育てる風潮が強められました。多くの中小企業が国の支援の外に置かれ、整理・淘汰(とうた)の対象とされました。
休廃業・解散件数はリーマン・ショック後の09年には2万5397件と2万5000件を突破。第2次安倍晋三政権誕生後の13年には2万9351件と3万件に迫りました。それ以降も、高水準で推移しています。消費税率8%増税と国民の消費の落ち込み、円安による原材料費や諸経費の高騰などが経営を悪化させたのです。






事業主が高齢化
個人事業主の高齢化も小規模事業者減少の原因になっています。個人事業主数は、1982年には30歳代、40歳代が最も多く、50歳以降は年齢が上がるにつれて人数が少なくなる傾向を示していました。しかし、年を経るにつれて、高齢化が進み、2014年には70歳以上の人数が80万人と最多になりました。
小規模事業者の個人事業主が仕事をやめた理由は、「病気・高齢のため」が最も多く40・4%。次いで「事業不振や先行き不安のため」「会社倒産・事業所閉鎖のため」「収入が少なかったため」「介護・看護のため」などです。
信用保証制度で、国の保証率を段階的に引き下げる改悪が進められようとしています。また、安倍首相は、生産性の低い中小企業を廃業に追いやることで日本企業の新陳代謝を進めるというアベノミクス(安倍政権の経済政策)の成長戦略を「より強く前進させる」と述べています。アベノミクスが中小企業の廃業をさらに増やすのは明らかです。
(この項おわり)(川田博子)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年8月13日付掲載


中小企業の廃業・倒産などを「甲斐性がないから」「経営能力がないから」などと言われることがありますが、決してそうではないと思います。
「下町ロケット」などの様に高い技術力、日本経済を底辺で支える底力。それこそ「甲斐性」を持っている中小企業。
欧米にはない、大企業の中小企業へ「単価たたき」などの差別的取引が横行していることが原因の一つ。


数値が示す日本経済③ 金融(下) 取引の7割が海外筋

2016-08-18 14:59:01 | 経済・産業・中小企業対策など
数値が示す日本経済③ 金融(下) 取引の7割が海外筋

東京証券取引所の統計によると、日本の証券市場で海外投資家の取引が占める比率は安倍政権発足時の57・7%(2013年1月)から70・7%(6月)に高まりました。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)による株価つり上げ政策で海外投機筋の資金が日本市場に流入したからです。


東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区

首相が呼び込み
アベノミクスの「第1の矢」が「異次元の金融緩和」です。大規模な緩和策で円安が加速しました。円安になればドル換算した日本株の価格が下がり、海外投資家にとって“お買い得”となります。13年9月には安倍首相自身が訪米時にニューヨーク証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス」(アベノミクスは買いだ)と海外投資家を日本市場に呼び込みました。
その後も14年10月の追加緩和と公的年金資金の株運用拡大、16年1月のマイナス金利政策決定(2月実施)を機に海外投資家の売買比率は高まりました。その多くが目先の利益しか考えない投機筋とみられます。
異次元緩和で日銀が株価指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れを進めていることも、日銀を使った株価つり上げ政策です。
ETFは株価に連動して価格が変動する金融商品です。7月の追加緩和では購入ペースを年間3・3兆円(保有残高)増から6兆円増へ2倍に引き上げました。ETFは株価に連動して価格が変動するリスク性の金融商品です。中央銀行である日銀が買い入れを増やせば、市場での値上がりは確実です。






市場ゆがむだけ
株価は本来、企業業績や景気に応じて変動します。証券市場に公的資金を投入して株価をつり上げるなど、政府がなすべきことではありません。証券市場がゆがむだけです。
公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は14年10月、国内株、海外株による運用比率をそれぞれ2倍の25%ずつに引き上げました。135兆円の公的年金資金の50%を株式で運用します。30兆円を超える資金が新たに株式市場へ投じられ、株価をつり上げることになります。しかし、15年度決算では円高・株安で5兆円を超える損失を出しました。政府の株価つり上げ政策が年金資金という国民の重要な財産に損失をもたらしています。
(この項おわり)(山田俊英が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年8月12日付掲載


株式の運用は本来なら企業の業績や将来性に応じてされるものだが…。アベノミクスにより意図的に海外の投機筋を呼び込み、公的年金の資金をつぎ込む。
見せかけの「好景気」は長続きしない。

数値が示す日本経済② 金融(上) 日銀が国債の3割保有

2016-08-17 12:50:39 | 経済・産業・中小企業対策など
数値が示す日本経済② 金融(上) 日銀が国債の3割保有

国債は政府の借金証書です。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「第1の矢」、量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)によって、日銀が抱える長期国債はいまや全体の3割を超えています。中央銀行が政府の借金を大量に抱え込む異常さです。
異次元緩和は、金融機関に供給するお金の量を毎年80兆円増やす政策です。そのために日銀が保有する長期国債の残高が年間80兆円増えるよう民間銀行などから国債を購入します。
市場に大量のお金を流せば、経済活動が活発になるということでした。日銀に圧力をかけて異次元緩和に踏み切らせたのが安倍晋三首相自身です。2012年末、政権に就く前には「輪転機をぐるぐる回して日銀に無制限にお札を刷ってもらう」とまで発言していました。
しかし、実体経済に効果がなく、国内総生産(GDP)の成長は低調。個人消費は戦後初めて2年連続で減りました。その一方、日銀が保有する国債が膨らんでいます。



日銀本店=東京都中央区



3年で2・5倍にも
日銀が保有する国債は3月末時点で317兆円。発行残高全体の33・2%です。異次元緩和開始前の13年3月末には128兆円、13・2%でした。3年間で残高、比率とも2・5倍に増え、銀行、生損保を抜いて日銀はいまや最大の国債保有者です。
日銀が国債を直接引き受けることは財政法で禁じられています。政府の借金を日銀が穴埋めすれば、歯止めのないインフレが起き、政府も国民の家計も破綻しかねないからです。
しかし、異次元緩和はそれに近いことを行っています。直接引き受けと違うのは、既発の国債を日銀が民間銀行から買うという点ですが、新しく発行する国債をいったん銀行が落札した後、ほとんどを日銀が買い取っています。今のペースで買い進めれば、18年には日銀が保有する国債の額がGDPを超えてしまいます。




中枢からも異論
6月に行われた日銀金融政策決定会合では9人の政策委員の1人から「量的・質的金融緩和の効果は限界的に逓減し、既に副作用が効果を上回っている」として、国債購入の段階的減額など政策の見直しを要求しました。
また、別の委員は「国債買い入れの遂行にあたって、大きな問題が生じる前に、より持続的なものに転換していくべきだ」と主張しました。異次元緩和を進めてきた日銀中枢から異論が出るほど事態は深刻化しています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年8月11日付掲載


日銀保有の3割の国債は、政府から直接購入したものではなく、生保・損保や金融機関から購入したもの。とは言え、中央銀行が政府の借金の肩代わりをすることは財政のモラルに反することですね。