「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。
金融侵略 苦悩する東芝⑤ 株主支配の「苦痛8年」
「株主総会が公正に運営されたものとはいえない」。東芝を批判する調査報告書が公表されたのは2021年6月10日でした。直後の6月25日の株主総会では、会社側が提案した取締役候補2人の選任が否決されました。「物言う株主」に弱みを握られた東芝はいよいよ迷走を始めます。
会社解体の計画
株主に対して「経営改善」を約束した経営陣は、社外取締役5人で構成する戦略委員会を設置。株主の意見を聞いて「株主価値の最大化」を実現する方策の検討を始めました。
戦略委員会の提案を受けて21年11月12日に東芝が発表したのがグループの3分割計画です。二つの中核事業を新規上場会社として独立させ、3社体制にする内容でした。「それぞれの事業の競争力を高め」ることができ、「株主価値の向上に資する最善の方法」だと強調しました。
22年2月7日には「安定的な財務体質の確保」を理由に、3分割案を2分割案へ変更。子会社の東芝キヤリア(空調装置)、東芝エレベータ(昇降機)、東芝ライテック(照明器具)、東芝テック(電子機器)を「非注力事業」と位置づけ、売却などを進める考えを示しました。これらの計画を実行すれば、株主還元の資金が3千億円ほど生まれると発表しました。
東芝を解体し、事業売却で得た現金を株主に差し出す思惑があらわでした。「物言う株主」に近い社外取締役が主導した計画だといわれています。
「いずれ人員を減らされる」「退職金はどうなるのか」。職場は騒然となりました。
ところが、22年3月24日の臨時株主総会で、東芝2分割案は39・53%の賛成しか得られず、否決されます。一部の「物言う株主」が反対に回り、「仲間割れ」が起きたとも報じられました。
危うく解体を免れたものの、海外の「物言う株主」を抱え続ける限り、東芝が混迷を抜け出せないのは明らかでした。22年3月1日に東芝社長に就任した島田太郎氏ら新経営陣は23年3月23日、株式を非公開化して「物言う株主」と決別する方針を打ち出します。日本産業パートナーズによる東芝株公開買い付けの提案に賛同すると発表したのです。
東芝小向事業所=川崎市
「懸念」も率直に
日本産業パートナーズは、事業の再編・再構築に取り組む日本企業に資本を提供する投資ファンドです。東芝株を非公開化して「安定株主基盤」をつくり、「中長期的な観点から継続的に対象者(東芝)の事業の発展を支援」すると表明しています。一方の東芝は発表文の中で、「日系」の「株主からの統一的な支援」を得れば、「中長期で一貫した事業戦略を実行し成長」できると説明しました。現状への「懸念」も率直に打ち明けました。
「株主との中長期的なアライメント(団結)に懸念がある」
「8年にも及ぶ混乱は、当社の従業員にとって大きな苦痛」
「人材の流出や新規採用難も懸念される状況となっている」
外国人株主の要求に応じて目先の利益を追う経営が、中長期の事業戦略を実行不能にし、成長の芽をつぶし、従業員に苦痛をもたらした、ということです。20年以上続けた株主至上主義の末路にほかなりません。
東芝は歴史的な分岐点に立っています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月11日付掲載
当初、「安定的な財務体質の確保」を理由に、子会社の東芝キヤリア(空調装置)、東芝エレベータ(昇降機)、東芝ライテック(照明器具)、東芝テック(電子機器)を「非注力事業」と位置づけ、売却などを進める考え。
ところが、22年3月24日の臨時株主総会で、東芝2分割案は39・53%の賛成しか得られず、否決。危うく解体を免れたものの、海外の「物言う株主」を抱え続ける限り、東芝が混迷を抜け出せないのは明らか。
東芝は、株式を非公開化して「安定株主基盤」をつくり、「もの言う株主」から決別する方向へ決断。
金融侵略 苦悩する東芝④ 利を得た海外ファンド
東芝が外国人株主に支配されるに至った直接の原因は、原発事業の大失敗でした。
2006年に約5000億円を出資して買収した原子炉メーカー大手の米ウェスチングハウス社が17年に倒産しました。東芝は17年3月期決算で9656億円の赤字となり、債務超過に転落。東証ルールで上場廃止となる2年連続の債務超過を回避するため、17年12月5日に約6000億円の第三者割当増資(特定の第三者に新株を売って資本金を増やすこと)を行います。東芝が発行した新株を引き受けたのが、米投資銀行ゴールドマン・サックスが引き連れてきた海外の投資ファンド60社だったのです。
自社株買い実行
その後、東芝は18年6月に稼ぎ頭の半導体子会社、東芝メモリ(現キオクシア)を約2兆円で売却します。同月13日には、東芝メモリ譲渡益の一部で7000億円程度の自社株買いを行う方針を発表。11月8日の取締役会で自社株買いの実行を決めました。
優良事業の売却と株主還元策の発表をきっかけに、東芝の株価は急上昇しました。
17年12月5日に投資ファンドが引き受けた新株の価格は1株262・8円でした。それ以降18年11月15日までに株価は51%上がりました(10株を1株とする18年10月の株式併合を織り込んで計算)。多くの投資ファンドが短期間で東芝株を売り抜けてもうけました。
東洋経済オンライン(18年12月22日付)によると、同年12月17日までに投資ファンドは引き受けた東芝株の45%を売却しました。60社のうち17社は引き受けた株数の99%以上を売り、269億円の利益を得ました。調査した山田雄大記者は「最大の利を得たのがファンドである」と指摘しています。東芝は安売りした新株を高値で買い戻し、株価をつり上げて海外ファンドに奉仕したのでした。
東芝浜松町本社事務所が入る東芝ビルディング=東京都港区
物言う株主圧力
短期間で売り抜けなかった投資ファンドの一部は「物言う株主」となり、東芝の経営に介入しました。その内情が露見したのが「圧力問題」のときでした。20年7月31日開催の株主総会に向けて東芝側が株主に「不当な圧力」をかけたという事件です。21年3月18日の臨時株主総会で株主の多数が賛成し、「圧力問題」に関する調査を決定。株主が選任した調査者は「(東芝が)株主提案権の行使を妨げようと画策」したと批判する調査報告書を公表しました。
騒動を通じてあらわになったのが「物言う株主」の要求でした。
シンガポールに拠点を置く東芝の筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントは、自社役員の今井陽一郎氏を東芝の取締役とする旨の株主提案を行っていました。目的は「コーポレート・ガバナンス」の「改善」による「企業価値向上」。つまり株価の引き上げです。同社を設立した今井氏らは、インサイダー取引が発覚して解散に追い込まれた村上ファンドの元社員で、欧米の機関投資家から資金を集めたと報じられています。
大株主の米ファラロン・キャピタル・マネジメントは、東芝が営業活動で得た現金の全額を5年間、株主に還元することなどを迫りました。東芝は猛反発しました。もしも実行したら「中長期的な会社の成長の芽を完全に摘むことになる」と。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月10日付掲載
東芝が外国人株主に支配されるに至った直接の原因は、原発事業の大失敗。
その後、東芝は18年6月に稼ぎ頭の半導体子会社、東芝メモリ(現キオクシア)を約2兆円で売却。
優良事業の売却と株主還元策の発表をきっかけに、東芝の株価は急上昇。
それがきっかけに、外国資本が東芝株を購入支配することに。いわゆる「物言う株主」です。
金融侵略 苦悩する東芝③ 7000人減らすリストラ
東芝は2018年11月8日の取締役会で、19年以降5年間の事業計画「東芝Nextプラン」の実行を決議しました。従業員を7千人削減するリストラ計画が中心でした。
当面の具体策として1060人を「早期退職優遇制度」の対象にしました。東芝デジタルソリューションズ(TDSL)の従業員60人も対象とされ、19年3月末までに57人が早期退職しました。安部真生さんが亡くなったのはその8カ月後でした。
「息子が過労に追い込まれた要因に、リストラのしわ寄せがあったのではないか」
父親の晋弘(くにひろ)さんはTDSLの幹部に疑問をぶつけました。返ってきたのは「リストラは関係ない」という、そっけない答えでした。
「そういわれれば、客観的な事実をあげて反証するのは難しい。それ以上は追及しませんでした。けれども現役社員の話を聞くと、プロジェクトの途中で辞める人が何人もいたといいます。高度な知識や技術を持つ人ほど他社に移りやすい。だから優秀な人が出て行ってしまった、と」
東芝の人員削減には20年以上の歴史があります。01年には国内人員の12%にあたる1万7千人の削減計画を進めました。西室泰三会長(当時)によれば、「売り上げ成長率がなくても利益が出せる体質を、何とか作り上げよう」と人員を減らした結果、「相当、もったいない人材を失いました」(『財界』02年4月9日号)。
株価つり上げのプラン
2006年の米原子炉メーカー買収などで一時的に人員は増えます。しかしその後も事業の切り売りや人員削減は繰り返され、19万8千人(1998年度)いた東芝の連結会社の従業員は11万6千人(2021年度)に激減しました。(グラフ)
研究開発に支障
1990年代から東芝で研究開発に携わったTDSL現役社員の中野隆太さん(仮名)は「知識と技術を持つ社員が減り、研究開発に支障が出ている」とみています。
「社内では商品開発の成功事例が公表されます。ところが近年、余計な労力と費用をかけた開発を『成功』と評価する事例が散見されます。専門知識があればはるかに簡単に安く開発できるのに、そのことがわからなくなっているのです」
大規模な人員削減を進める裏側で、東芝は巨額の株主還元策を実施しました。7千人削減計画を決議した18年11月8日の取締役会では同時に、上限7千億円の自社株買いの実行を決議しました。
企業が発行した株式を買い戻す自社株買いは1株当たりの利益を増大させるので、株価急騰の契機となります。配当金と並ぶ株主還元策とされます。
東芝が掲げた「東芝Nextプラン」の目的は、たった一つ。「企業価値の最大化を通じて株主価値向上を実現」することでした。株価を上げて株主に奉仕するためのプランだったのです。人員削減による「固定費」の削減は、「収益体質」を「改善」し、株価をつり上げる手段でした。
変わる株主構成
東芝の株主構成は17年度末に劇的に変わっていました。外国人株主の比率が38・21%(17年3月)から72・32%(18年3月)へ急上昇しました。日本を代表する総合電機メーカーだった東芝は海外の「物言う株主」に支配され、経営に口出しされて、利益と資産を搾り取られる企業に成り下がっていました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月9日付掲載
「息子が過労に追い込まれた要因に、リストラのしわ寄せがあったのではないか」
父親の晋弘(くにひろ)さんはTDSLの幹部に疑問をぶつける。幹部は「リストラは関係ない」と。
「けれども現役社員の話を聞くと、プロジェクトの途中で辞める人が何人もいた。高度な知識や技術を持つ人ほど他社に移りやすい。だから優秀な人が出て行ってしまった、と」
東芝が掲げた「東芝Nextプラン」の目的は、たった一つ。「企業価値の最大化を通じて株主価値向上を実現」すること。
その手段の一つが人件費削減。
金融侵略 苦悩する東芝② 「食事ものど通らない」
安部真生さんは2015年4月に東芝デジタルソリューションズ(TDSL)に入社しました。研修後に担当したのは協会けんぽ(主に中小企業の従業員が加入する医療保険者)のシステムの運用・保守でした。
4年後の19年4月、官公庁向けICT(情報通信技術)サービス部門へ異動します。厚生労働省老健局が発注した「科学的介護」システムの開発業務に6月から従事しました。この業務が、真生さんを追い詰めました。
東芝川崎本社事務所や東芝デジタルソリューションズが入るラゾーナ川崎東芝ビル=川崎市
再三のやり直し
最初に業務を受注したのは他社でした。19年4月から開発に取り組んだ他社はわずか2カ月後に撤退します。6月に受注したTDSLは2カ月の遅れを抱え込んでのスタートとなりました。他社が受注した計画のまま、期限は20年3月末と設定されたからです。
真生さんはセキュリティーシステム分野の責任者を任されました。初めてシステム開発業務に携わった真生さんに、この分野の責任が集中しました。
「科学的介護」システムの構築は、厚労省が進める「データヘルス改革」の一環です。改革の目的は、自治体・保険者・事業者がもつ健康・医療・介護の個人データを収集・連結・蓄積し、「個々人に最適な健康管理」を実現することです。国家を頂点とする監視と干渉のシステムを、医療や介護の現場に持ち込むものです。
TDSL側は厚労省の仕様書に沿ってセキュリティーシステムの開発を進めました。ところが厚労省は、開発途中で「安全性が不十分だ」と横やりを入れ、ソフトの切り替えなどを要求しました。
真生さんは計画の変更と見積もりのやり直しを再三迫られました。10月ごろから業務が滞り、深夜に及ぶ時間外労働と休日出勤に追い込まれました。同居していた弟によると、深夜0時前後に帰宅し、早朝6時ごろに自宅を出る生活に陥りました。交際相手には「仕事が大変でろくに眠れない。食事ものどを通らない」と話しました。
時間外は103時間
11月の初旬には胃腸の不調を訴えて業務を半日抜け、病院で検査を受けました。システム開発が行き詰まっていました。職場のパソコンを使った記録から計算すると、亡くなる直前1カ月間の時間外労働は103時間56分に達しました。
父親の安部晋弘さんと母親の安部宏美さんは、TDSL社員に話を聞き、弁護士の力も借りて労働災害の証拠を集めました。「トラブルが起きたとき、真生一人に負担が集中する状況を放置したTDSL幹部の責任が大きい」と感じました。
20年5月、晋弘さんと宏美さんは川崎南労働基準監督署(川崎市)に労災認定を求める申請書を提出します。川崎南労基署は同年12月17日付で労災と認定しました。晋弘さんは「100時間を超す時間外労働が決め手だった」と考えています。
同月にTDSL役員らが弔問に訪れ、初めて両親に謝罪しました。事件から1年以上が過ぎていました。
厚労省は経過説明の文書を両親に提示しましたが、責任を認めていません。明らかになっていないことは、もう一つあります。東芝の大規模リストラの影響です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月8日付掲載
安部真生さんは、厚生労働省老健局が発注した「科学的介護」システムの開発業務に6月から従事。
初めてシステム開発業務に携わった真生さん。相当のストレスだったでしょう。
職場のパソコンを使った記録から計算すると、亡くなる直前1カ月間の時間外労働は103時間56分に。
20年5月、晋弘さんと宏美さんは川崎南労働基準監督署(川崎市)に労災認定を求める申請書を提出します。川崎南労基署は同年12月17日付で労災と認定。
しかし、亡くなった命は返ってきません。
金融侵略 苦悩する東芝① 若い技術者の自死
日本を代表する総合電機メーカーだった東芝が苦悶しています。経営陣は7月に株式を非公開化することをめざします。外国人株主に支配され、「8年にも及ぶ混乱」(東芝)を経た末の苦渋の選択です。混乱の現場と、その根本原因を探りました。
一人の若い技術者が自ら命を絶ちました。2019年11月16日の午後6時49分。晴れた初冬のたそがれ時でした。
安部真生(しんは)さんは当時30歳でした。東芝グループの中核事業会社の一つ、東芝デジタルソリューションズ(本社・川崎市)で働いていました。
長野県駒ケ根市に住む父親の安部晋弘(くにひろ)さんに神奈川県警から電話がかかってきたのは、同日午後7時半ごろです。
「息子さんが意識不明の状態です、といわれました。自宅のマンションの前で倒れているのをみた通行人が通報してきました、と」
母親の安部宏美さんはとっさに考えました。
「心臓の疾患だろうか。脳だろうか」
安部宏美さん(右)と安倍晋弘さん
仕事に苦しんで
しかし、その後の警察などの調べで、真生さんはマンションの屋上から落下したことがわかります。事件性はなく、死因は「うつ病エピソード」(抑うつ気分、喜びの喪失、自殺念慮などの症状)だったと判定されました。仕事に追い詰められていたのです。
思いもよらない事態でした。宏美さんは悔やみました。
「生きていてほしかった。仕事ばかりが人生じゃない。やめていいんだよ、といいたかった。真生の苦しみを知らなかった」
幼いころから、真生さんはじっくりと考えることが好きな子どもでした。晋弘さんの仕事で海外と国内を転々としても、時間をかけて同級生となじんでいきました。スリランカに1年、バヌアツに3年、ネパールに3年。転居先のインターナショナルスクールに通う間に、努力して英語を習得しました。
「環境」志望動機
東京大学大学院の農学生命科学研究科で雑草を研究しました。土手に生える草を堤防に利用するにはどうしたらよいか。自然と都市をどう融合させて環境を改善するか。大学院で深めた関心と結びつけて、東芝デジタルソリューションズの志望動機を書きました。
「社会を人間や人工物、周辺環境が作用し合う一つのシステムとして捉え、理解し、改善していくような職に就きたい」
株主還元偏重の末に
真生さんの生い立ちを思い起こして、晋弘さんは自分を責めました。
「私たちの育て方が悪かったのかなと考えました。小さなころから海外に連れて行き、人の顔色をうかがって無理をすることを覚えさせたのは私ではないか。親の務めを十分に果たせなかったのではないか。申し訳なかった、という気持ちはいまでもあります」
けれども、自省してばかりではいられませんでした。関係者に話を聞けば聞くほど、労働災害の疑いが濃くなったからです。晋弘さんと宏美さんは2年以上の月日を費やして、真生さんが自死に至った経緯を調べました。
安部真生さん=2018年4月(安部晋弘さん提供)
◇
1990年代後半から東芝は、株主還元を偏重する新自由主義的経営にかじを切り、目先の利益確保を狙った事業の切り売りや人員削減を繰り返してきました。同時に、株主に占める外国人の比重が増していきました。
原発事業の大失敗が災いし、外国人株主の持ち株比率が7割を超えた2018年以降、海外の「物言う株主」の要求に振り回されます。株価上昇に資する経営改革を求め、議案提案権などの権利を行使するのが「物言う株主」です。
この二十数年間で、東芝は急速に衰退しました。売上高は5兆9513億円(2001年3月期)から3兆3369億円(22年3月期)へ、連結会社の従業員数は18万8千人(01年3月)から11万6千人(22年3月)へ激減しました。
一連の経過の根底には、米国主導で進められた金融制度や会社制度の新自由主義的改変がありました。日本のものづくりを衰退に導いた「金融侵略」の構造に迫ります。
(つづく)(9回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月7日付掲載
一人の若い技術者が自ら命を絶ちました。2019年11月16日の午後6時49分。晴れた初冬のたそがれ時。
警察などの調べで、真生さんはマンションの屋上から落下したことがわかります。事件性はなく、死因は「うつ病エピソード」(抑うつ気分、喜びの喪失、自殺念慮などの症状)だったと判定。仕事に追い詰められていた。
関係者に話を聞けば聞くほど、労働災害の疑いが濃くなった。晋弘さんと宏美さんは2年以上の月日を費やして、真生さんが自死に至った経緯を調べる。
原発事業の大失敗が災いし、外国人株主の持ち株比率が7割を超えた2018年以降、海外の「物言う株主」の要求に振り回される。
「ものづくり」より「株価」が優先される。