きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

台湾 米中のはざまで① 圧力感じながらの日常

2023-05-20 07:46:36 | 国際政治
台湾 米中のはざまで① 圧力感じながらの日常

米国と中国が対立するなか、台湾の人々は事態をどう受けとめ、将来をどう見すえているのか。現地からリボートします。
(台北=小林拓也 写真も)




台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統が4月に米ロサンゼルスで米下院議長と会談した直後、中国軍が台湾を包囲する形で大規模な演習(同8~10日)を実施しました。それから1週間たった台北の町は、市民が普段通りに生活し、街角の公園では子どもたちが走り回り、高齢者がおしゃべりに興じていました。当時、南部の都市・台南に出張していた台北在住の30代の男性は、軍用機の爆音がひっきりなしに続いたことに驚いたと話します。

演習繰り返す
演習期間中、130機以上の中国軍機が台湾海峡の中間線を越え台湾周辺に接近。そのたびに、台南にある台湾空軍基地からけん制のために軍用機が発進したからです。
昨年8月にはペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問し、蔡総統と会談しました。中国軍はペロシ氏の帰国を待って台湾周辺で大規模な演習を実施。複数の弾道ミサイルが台湾近海に撃ち込まれるなど、緊張が高まりました。
今年4月の中国軍の演習は、「『台湾独立』分裂勢力と外部勢力の結託・挑発に対する厳しい警告」(同軍声明)だと位置づけられています。空母「山東」は参加したものの、期間は短く、弾道ミサイルの発射もありませんでした。
中国軍の大規模演習のなかで、台北の大学院生の女性は「またか」と普段通りの生活を送りました。慣れた気分と同時に「台湾としては、どうすることもできない」という無力感に包まれたといいますく
別の大学院生の女性は「2回の軍事演習、日常的な中国軍の威嚇など中国からの軍事的圧力を感じている」と話し、「いつか戦争になるのでは」と不安を口にしました。



台北市内の公園で休む市民

関係強化追求
与党・民進党に近い立場だという大学教授(国際関係が専門)は民進党政権内では「台湾を守るために米国との関係を強める必要がある」との立場で一致していると解説しました。
昨年末、蔡政権は18歳以上の男性に義務付けている4カ月間の兵役期間を1年間へ延長することを決定しました。
最大野党・国民党の国際事務部の黄介正主任も「中国の軍事的圧力が強まっている」と述べ、国民党も防衛力の強化は必要だという立場だと述べました。
民進党系シンクタンクの研究員は「台湾の市民は防衛力強化に積極的ではないが、反対もしていない」と説明しました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月17日付掲載


中国軍の大規模演習のなかで、台北の大学院生の女性は「またか」と普段通りの生活を。慣れた気分と同時に「台湾としては、どうすることもできない」という無力感に。
民進党系シンクタンクの研究員は「台湾の市民は防衛力強化に積極的ではないが、反対もしていない」と。
中国の軍事力強化で、複雑な思い。

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金融侵略 苦悩する東芝⑨ 米国、会社制度にも介入

2023-05-19 07:11:32 | 経済・産業・中小企業対策など
金融侵略 苦悩する東芝⑨ 米国、会社制度にも介入
日本の「金融自由化」は米国政府の監督下で実施されました。日本政府への「規制改革要望書」(1997年)で米国が述べています。
「(米国は金融サービスに関する日本の)合意の実施を監視している」が、「その結果はきわめて満足すべきものである」。さらなる規制緩和によって「外国企業にとって日本市場での機会が拡大することを期待している」。

株主の権力強化
米国が求めたのは金融市場開放だけではありません。外国人株主の権力を強めるために会社・会計制度の改変も迫りました。日本政府は以下のように制度を次々に変えました。
▽株主視点での企業評価に役立つ時価主義など国際会計基準の導入(90年代以降)▽経営者に自社株を与えて株主と利害を一体化させるストック・オプションの解禁(97年)▽株価急騰につながる自社株買いの解禁(2001年)▽現金を準備しなくても株式交換で他社を合併できる方式(三角合併)の外資への解禁(07年)―。
米国に追随して株主の権力をさらに増大させるために会社法を改定(14年と19年)したのが安倍晋三政権でした。この中で上場企業に対して設置が義務付けられた社外取締役は、株主の要求を経営に反映させるてことして活用されています。
「こうして外国人株主の支配が強まり、日本経団連は株主還元偏重の新自由主義路線をひた走るようになった」と佐々木憲昭元衆院議員は指摘します。「労働者保護法制や社会保障制度を壊す政治の根っこにも、国内産業を軽視する経営の根っこにも、株主至上主義があります」
株主優先の新自由主義は、金融・会社・会計制度の中に埋め込まれたのです。国民生活と国内産業を再興するためには、これらの制度の改革が必要です。



東芝小向事業所=川崎市

従業員を大切に
「東芝の職場を明るくする会」副代表の羽田和人さんは「東芝にはまだ技術力が残っている」と力を込めます。
「東芝の発展を支えた技術力は、従業員が同僚や先輩と学び合い、創造力を発揮して築いたものです。短期的利益を追う株主至上主義を克服し、人を大切にする経営を確立して、国民全体の要請に応える社会的企業として再生を図るべきです」
過労で命を失った安部真生さんの父親の晋弘さんと母親の宏美さんは、22年5月に東芝デジタルソリューションズ(TDSL)と和解合意書を交わしました。晋弘さんは「2年間かけて経過を調べ、会社の責任を明らかにした」と話します。
「真生が亡くなる前年に同様の事故があったことも突き止めました。生半可な職場環境の改善では納得できない。相当な覚悟をもって取り組み、しっかり休みを確保して従業員一人一人の異変に対処してもらいたい、と強く求めました。東芝側は責任を認め、職場改善の進み具合を3年間にわたって報告すると約束しました。それで和解に応じたのです」
23年2月にTDSLは過重労働防止の研修会を実施し、晋弘さんと宏美さんを講師に呼びました。宏美さんは「会社を変えてほしい」と願います。「従業員を大切にする企業になってほしい。社会全体にも同じことをいいたいです」
(おわり)(杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月17日付掲載


労働者保護法制や社会保障制度を壊す政治の根っこにも、国内産業を軽視する経営の根っこにも、株主至上主義が。
「東芝の職場を明るくする会」副代表の羽田和人さんは「東芝にはまだ技術力が残っている」と。
「東芝の発展を支えた技術力は、従業員が同僚や先輩と学び合い、創造力を発揮して築いたもの。短期的利益を追う株主至上主義を克服し、人を大切にする経営を確立して、国民全体の要請に応える社会的企業として再生を図るべき」
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金融侵略 苦悩する東芝⑧ 危機の時期に外資襲来

2023-05-18 07:11:13 | 経済・産業・中小企業対策など
金融侵略 苦悩する東芝⑧ 危機の時期に外資襲来
日本企業の株式に占める外国人投資家の保有割合は1990年代半ば以降に急上昇しました(グラフ)。「二つの大きな契機があった」と佐々木憲昭元衆院議員は話します。
「一つは『金融自由化』です。米国の要求を日本政府が全面的に受け入れたのです」




米政権への約束
83年、米レーガン政権の圧力で「日米円ドル委員会」がつくられました。米国の財務省と日本の大蔵省(当時)が金融問題を集中的に協議する場でした。日本政府は金融市場の自由化や外国金融機関の市場参入促進などを約束させられました。
さらに95年、日本政府は米クリントン政権との協議で「金融サービスに関する措置」の実施を約束します。外国金融機関の「市場アクセスを相当程度改善する」措置が事細かに列挙されました。
これらの約束に基づいて96年以降に橋本龍太郎政権が進めた「金融ビッグバン」で「金融自由化」が完成しました。その内容は主に①証券取引手数料の自由化②銀行・証券・保険の相互参入の自由化③金融商品の自由化④資本の国際移動の自由化―でした。
①では、投資家の取引コストを軽減して日本の金融市場に外資を呼び込むことを狙いました。株式などに課す有価証券取引税も99年に廃止しました。
④では、国境を越えた資本取引に関する事前の許可・届出制を98年に廃止し、日本の金融市場で外資が瞬時に売買できるようにしました。米国の投資家が日本の金融市場で投機を含む取引を自由に展開するための制度が整えられました。

会計制度も改変
外資の支配を強めたもう一つの契機は「金融危機」です。
日本の大企業と大銀行は互いに株式を持ち合い、企業グループを形成していました。外資による買収を防ぎ、経営を安定させる目的で始まった慣行です。
ところが、アジア通貨危機(97年)後の急速な景気悪化で手元資金が枯渇した企業や、不良債権を抱えた銀行が持ち合い株式を売却し始めます。拍車をかけたのが会計制度の改変でした。
日本の会計原則は従来、現在の時価ではなく過去の取得価格で資産額を評価する「取得原価主義」に立っていました。保有株式の価格変動は企業の業績に影響を与えませんでした。そこへ米国流の「時価主義」が持ち込まれました。売買目的の株式は2000年から、持ち合い株式は01年から時価評価になりました。金融危機後の株価低迷期でした。佐々木さんはいいます。
「含み損を抱えた企業や銀行は保有株式の売却に追い込まれました。それを外資が買い占めたのです。各社の有価証券報告書を調べたところ、15年時点で経団連役員企業33社の発行済み株式の34・48%を外資が保有していました。カストディアンも圧倒的な保有率を確保し、経団連役員企業の大株主の1~2位をほぼ独占するようになりました」
カストディアンの背後にいる真の株主は主に外資です。米国政府の力を利用し、日本の危機につけこんで襲来した外国人株主は、日本企業に大きな影響力を及ぼす地位を得たのでした。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月16日付掲載


「金融自由化」で、①証券取引手数料の自由化②銀行・証券・保険の相互参入の自由化③金融商品の自由化など。
「金融危機」で、不良債権を抱えた銀行が持ち合い株式を売却。会計制度の改変で米国流の「時価主義」へ。
暴落した株を外資が買いあさり、企業を牛耳ることに。
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金融侵略 苦悩する東芝⑦ 外国人株主が7割超す

2023-05-17 07:13:34 | 経済・産業・中小企業対策など
金融侵略 苦悩する東芝⑦ 外国人株主が7割超す
東芝の株主構成は1990年代後半に大きく変わり始めました。
外国人の持ち株比率は、98年3月時点で10・81%にすぎませんでした。ところが、99年には14・81%に、2000年には26・59%に急上昇します。
01年には「カストディアン」の日本トラスティ・サービス信託銀行が持ち株比率4位(2・73%)の大株主に浮上しました。以降、東芝の株主に占めるカストディアンの割合も増していきます。



東芝研究開発センター=川崎市

真の株式保有者
カストディアンとは、投資家に代わって有価証券(株式や債券)の保管・管理を行う金融機関です。通常、外国の有価証券を購入する投資家がカストディアンと委託契約を結ぶといわれます。表向き株式名義人(会社の株式名簿に記載される株主)となるカストディアンは、株主構成の中で「金融機関」に分類されますが、その背後にいる真の株式所有者は主に外国人投資家だということです。
実際、東芝の有価証券報告書にはカストディアンについてこう書かれています。「主として海外の機関投資家の保有株式の保管業務を行うとともに当該機関投資家の株式名義人となっています」
17年の債務超過と新株発行を契機に東芝の株主に占める外国人の割合は7割を超えました。22年3月時点では52・85%となっていますが、実態はこれより高いとみられます。カストディアンが15・09%の株式の名義人となっているからです。
この二十数年間で東芝は株主還元を著しく強めました。株主への配当金の支払いは、94億円(1999年度)から1094億円(2021年度)へ、11・6倍に増えました。
こうして東芝は、外国人株主に支配され、搾り取られる会社へと変貌したのでした。
全国4証券取引所に上場する日本企業全体の株主構成をみても、外国人の割合は4・7%(1990年度)から30・4%(2021年度)へ上昇しています。この間に配当金の支払いは4兆2千億円から29兆8千億円へ7倍に増えました。他方で従業員給与と設備投資は低迷しています。
(グラフ)




「株主至上主義」
株主還元を偏重する新自由主義的な企業経営が広がったのは「米国の金融資本が日本企業への支配力を強めた結果」だと、日本共産党の佐々木憲昭元衆院議員は指摘します。
「外国人株主の支配力が増すにつれて『株主が企業の主人公だから短期的利益を追求して配当金を増やすべきだ』という株主至上主義が強まりました。配当金の出どころは、労働者が生み出す剰余価値です。産業資本が搾取した剰余価値の一部が利子として銀行に、配当として株主に入ります。こうした資本主義の枠組みの中で、株主という特定の階層を優遇するのが株主至上主義です。それを推進するために米国は、日本に新自由主義的改革を要求して無数の仕掛けをつくらせました」
賃金と設備投資が伸びずに日本経済が長期低迷するのは、外国人株主による支配と搾取の仕掛けがあるためなのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月13日付掲載


表向き株式名義人(会社の株式名簿に記載される株主)となるカストディアンは、株主構成の中で「金融機関」に分類されますが、その背後にいる真の株式所有者は主に外国人投資家だということ。
配当金の出どころは、労働者が生み出す剰余価値。産業資本が搾取した剰余価値の一部が利子として銀行に、配当として株主に。
産業資本の資産形成や労働者には還元されない。
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金融侵略 苦悩する東芝⑥ 短期利益追求で衰退

2023-05-16 07:05:20 | 経済・産業・中小企業対策など
金融侵略 苦悩する東芝⑥ 短期利益追求で衰退
東芝衰退の始まりは新自由主義的経営にかじを切った1998年にさかのぼります。
「米国、韓国、台湾、中国など世界の電機メーカーとの競争が激化し、利益がじり貧状態に陥った時期でした。東芝の経営者は新自由主義的な経営改革で国際競争力を強化しようと考えたのです」

改革の「裏の顔」
「東芝の職場を明るくする会」副代表で元東芝社員の羽田和人さんは、改革には二つの柱と一つの「裏の顔」があったと語ります。
一つ目の柱は「集中と選択」です。人員と資金を集中させる事業を選択し、利益の薄い事業を切り捨てました。社内に残す8事業部門に「社内カンパニー制」を導入し、独立企業に見立てて独立採算で利益をあげるよう迫りました。事業部門ごとの業績と報酬を連動させ、短期利益追求へ駆り立てました。特に注力したのが、半導体を主力製品とする電子デバイス事業と、原発を主力製品とする社会インフラ事業でした。
二つ目は「軽量化」です。2001年のIT(情報技術)バブル崩壊後の世界的不況を受けて大規模リストラ「01アクションプラン」を発動。生産の海外移転と外部委託を拡大し、国内工場を統廃合しました。東芝グループの国内従業員14万4千人を1万7千人削減しました。
こうした改革の「裏の顔」が株主至上主義でした。「株主に利益を還元する企業」という方針を掲げ、社内報で周知しました。経営幹部を対象に東芝株式取得制度を導入し、毎年最低100万円の株式購入を義務付けました。幹部が株価下落の損失を被るようにし、「株主を意識した経営」を徹底する目的でした。役員報酬と株主配当を増やす一方、「成果主義」の名目で賃金を抑えました。
短期的には利益が増え、東芝は「成功例」ともてはやされました。しかし中長期の視野でみると「事業環境の変化に弱く、技術革新を起こせない会社に変質してしまった」と羽田さんは嘆きます。
08年に世界金融危機が起き、主力の半導体事業が大打撃を受けました。11年の東日本大震災では、もう一つの注力事業だった原発輸出が暗礁に乗り上げました。急激な経営悪化は、粉飾決算(15年)、債務超過(17年)という歴史的事件に発展して世間を驚かせました。東芝グループの研究開発費は十数年間で6割以上も減りました。(グラフ)




後は野となれ…
「経営者は3カ月に1度の四半期決算で利益を出し、株価を上げることに熱中しました。研究開発費や技術習得費を削減し、優良事業も切り売りし、利益が出たら株主に還元しました。技術革新を生む土壌は狭まり、設計部門は『人員も予算も足りない』と悲嘆にくれました。人件費の安い外国企業へ安易に生産を委託した結果、過去に開発した技術まで流出して失われました。資産と利益を株主に差し出し、東芝には何も残らない。後は野となれ山となれ、という経営です。競争力が強まるはずもありません」
東芝の変質は、米国の要求に追随して自公政権が進めた金融制度や会社制度の新自由主義的改変と軌を一にしていました。経済社会の全分野に株主至上主義を浸透させることをめざす新自由主義は、単なる思想ではなく、制度として日本社会に埋め込まれました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月12日付掲載


一つ目の柱は「集中と選択」。利益の薄い事業を切り捨て。二つ目は「軽量化」。生産の海外移転と外部委託を拡大し、国内工場を統廃合。
こうした改革の「裏の顔」が株主至上主義。
研究開発費は削り、設計部門は人が足りない。技術は海外に流出。
株主のための短期の利益を追求した結果。東芝にはなにも残らなかたった。
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