2022年12月10日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ポスト英国EU離脱 アイルランド漁業 計画どおり1/3減船申請]
英国がEUを離脱し、EUの共通漁業政策において漁獲割当を大幅に失ったアイルランドは、補償金8,000万ユーロ(7,980万ドル)の減船事業を行うこととなり、予定どおり、現有沖合漁船勢力の1/3の自主廃業申請があったことが分かった。
減船計画は、総船舶トン数8,000トン、総出力21,000kwで、トンあたり漁業者に1万2,000ユーロ(1万1,968ドル)、乗組員に各々5万ユーロ(4万9,868ドル)が支払われる。
現有沖合漁船180隻の内、64隻が自主減船を申請したとされている。
アイルランド漁業生産者機構“IFPO”も、減船事業計画発表時点で、約60隻、勢力の1/3が、当該事業により減船になると見積もっていた。
ただし、減船申請した64隻の内、19隻が、アイルランド南西海岸の西コークにあるベアラ半島の南側に位置するキャッスルタウンベレに集中しており、水産業に依存してきた同地域の社会経済への取返しのつかないダメージを与える可能性を危惧する声が地元であがっている。
アイルランド業界は英国がEUを離脱したことにより、共通漁業政策による漁獲割当配分の不均衡が悪化したとして、この是正を求め関係機関へのロビー活動を強化していた。
“IFPO”によると、EUの共通漁業政策により、アイルランド海域でのEU漁業国の年間漁獲量は、約2億5,000万ユーロ相当で、自国アイルランドのほぼ2倍となっている。
“IFPO”は、英国がEUを離脱し、独自の漁獲割当を確保したことで、ロックオール島周辺海域漁場を失い、漁獲割当の不均衡がより悪化したことを指摘していた。
アイルランド漁船への漁獲割当は、自国海域の許容漁獲量のわずか18%である一方、一部のEU加盟国の年間漁獲割当が不明な中、未利用となっている許容漁獲量が存在していると推察されており、これをアイルランド漁船に再配分することを“IFPO”は求めていた。
EU加盟国は、英国のEU離脱により、これまでの英国海域での漁獲量の25%(金額ベース)を譲渡することになった。
これらの英国への漁獲割当の譲渡は、2021年から開始されており、2026年半ばまで実行される。
譲渡は、2021年に60%、2022年に70%、2023年に80%、2024年に92%と段階的で、2025年の終わりにこのプロセスを100%完了することになる。
非TAC魚種については、2012年から2016年の間に記録された平均漁獲量をベースに、2026年半ばまでに制限されることになっている。
分析によると、アイルランドは2026年までに漁獲割当の約15%を失うことになるが、これはフランス漁業が失うと予想されるレベルの約2倍となっている。
このことからアイルランドは英国とEUの貿易協力協定がアイルランド漁業に不当な負担をかけていると抗議を続けていた。