2022年12月19日
毎日新聞
[ウクライナ侵攻 影を落とす 漁業分野]
2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、さまざまな対露漁業に暗い影を落とした。北方領土・貝殻島周辺のコンブ漁は例年より3週間遅れ、6月22日に始まった。「今年はもうだめかと諦めていた」。
前浜での操業や拾いコンブも含め、コンブ漁が唯一の収入源だという60代の漁業者がそう振り返った。
出漁できたものの、漁業者を待ち受けていたのはロシア国境警備局による臨検だった。
操業承認書を調べられ、携帯電話の画像をチェックされた漁業者もいた。
臨検を受けた漁船は延べ366隻に及んだ。違反はなかったが、臨検は前年(87隻)の4・2倍という異常な件数だった。
根室市の納沙布岬からわずか3・7キロ先の「日本固有の領土」にもかかわらず、ロシアの顔色をうかがって操業せざるを得ない漁業者の思いは、いつもの年以上に複雑だった。
対露漁業はこのほか三つの枠組みがありどれも大きな影響を受けた。
主権を棚上げする形で1998年に始まった北方領土周辺の安全操業ホッケ漁を巡っては「対サハリン技術・人道支援費」の未払い問題が浮上。
出漁が2週間遅れた。
戦争の長期化は来年の操業にも影を落としている。
例年であればいずれの枠組みも翌年の操業条件を決める交渉が11、12月に行われるが、今年はいまだに始まっていない。
底引き船業界を束ねる道機船漁業協同組合連合会の原口聖二常務は「漁業分野は日露の最後のかすがい。国益を考えて権益を確保すべきだ」と操業継続の重要性を訴える。