2022年12月31日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[2023年 ロシア漁業はどう変わるか 操業日誌・操業許可証等の電子媒体化 投資目的漁獲割当第2弾]
年明け2023年、ロシア漁業はどう変わるか。
操業日誌・操業許可証等の電子媒体化、投資目的漁獲割当第2弾の実施など、多くの革新的変更が行われることになる。
①操業日誌・操業許可証等の電子媒体化
2022年6月28日付ロシア連邦法No.229で、操業日誌と操業許可証を電子媒体へ移行するための関連漁業法が改正され、2023年3月1日発効する。
電子操業日誌は既に使用されているが、発効運用は2023年3月1日で、法的根拠をもつことになる。
加えて2023年12月1日まで移行猶予期間が設定される。
②投資目的漁獲割当に手続き実施
ロシア漁業庁長官シェスタコフは2022年末の記者会見で、投資目的漁獲割当第2弾の規則を整備等行って、2023年夏には“投資クオータ”とカニ漁獲割当オークションの手続きを完了したいと語った。
ロシア上院は、投資目的漁獲割当第2弾設定のための法案を2022年12月23日採択した。
当該法案は、2022年12月20日、下院第2読会、第3読会を一気に通過していた。
法案の発効を2026年に延期する業界の要望に基づく修正案も認められず、農業省が強硬に主張したとおり、2023年となった。
極東海域“投資クオータ”のスケトウダラとニシンについては、更に20%、第1弾の調整向けに4%、第1弾と合わせるとTACの計44%以内まで配分される。
漁船建造等、投資義務が伴うカニの漁獲割当オークション第2弾として、主要対象資源のTACの更に約半分が対象となり、第1弾を合わせると、当該資源のTACのほぼ全量がオークションで配分される。
さらに、カニ漁獲割当について中小企業保護の観点から、これにカテゴライズされる企業の過去の漁獲実績に基づく“歴史的原則”による漁獲割当を、係数1.2をもって調整することが提案されている。
③引き上げ資源利用税の適用
ロシアは、2022年11月21日付連邦法No.444により、水棲生物資源利用税の改正を行い、同年12月21日に施行された。
ロシア農業省は、これに対応した控除の要件、算定係数等の準備を行っている。
資源利用税の改正には、自国造船所により漁船更新をした者(投資目的漁獲割当利用者を除く)、自国陸上加工場へ原料供給をする沿岸漁業着業者、高次加工製品の生産者等を対象に一部控除設定がされているほか、一定期間、小規模自治体や集落形成を担う企業への税率据え置き等の条件が盛り込まれている。
④輸出規制対象企業検査
2023年3月1日から2021年に採択された動植物衛生管理法の改正が施行される。
輸出製品の商品を保管および生産するための施設の検査に関する手続きが規定され、動植物衛生管理局がこれらを監督することになる。
⑤養殖漁業への政府支援
養殖漁業発展には飼料生産能力の強化が必要であり、この支援目的で、2022年1月1日から工場建設と近代化のため最大20%の政府補助金が用意される。
ロシア農業大臣パトルシェフは、2027年までに9施設の工場建設が予定されていると語り、生産能力を22万トン増加させ、水産飼料の輸入代替への貢献度を大幅に向上させることが期待されると加えている。