2024年09月22日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#96 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 ME 洋上風力発電は漁業分野を無視している]
“米国メイン州漁業者は誰が洋上風力に漁場から追い出す権利を与えたのかと憤る”
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
2024年7月13日、ニューハンプシャー州を挟んでメイン州と隣接するマサチューセッツ州沖の“ヴィンヤード・ウインド”(Vineyard Wind)社による洋上風力発電開発プロジェクトのタービンが破壊、その後、ブレードの残骸がナンタケット島に打ち寄せられ、危険でありビーチが閉鎖される等の事態が発生、米国安全環境執行局(BSEE)は、風力発電所の建設と操業を一時停止する命令を発出する事件が起きた。
このプロジェクトのブレードはグラスファイバー製で残骸とともにガラス繊維が漂着、住民説明会において人体への被害、周辺海域の海洋汚染、魚の食物連鎖を危惧する指摘、意見等が噴出した。
メイン州の沖合漁場は、何世代にもわたってこの州の住民に恩恵をもたらしてきた。
2021年、メイン州の商業漁業の生産価値は8億9,000万ドルだった。
今日、洋上風力発電所は伝統的な漁場から漁業者を追い出している。
しかし、マサチューセッツ沿岸沖合でのタービンの残骸は、洋上風力発電が沿岸地域の環境、気象、文化、資源、社会的価値に及ぼす重大かつ有害な影響に関して、国家の環境政策法が厳密かつ総合的に分析されていないことを指し示している。
一方、メイン州知事ジャネット・ミルズ(民主党)は、自身の政権の優先事項が再生可能エネルギーの発電を増やすことだと述べている。
ジャネット・ミルズは、浮体式洋上風力発電所を建設することでこれを実現することを提案している。
この取り組みの正当性には、化石燃料への依存を減らし、クリーン・エネルギーに移行、CO2排出量を削減することが含まれているが、メイン州のCO2排出量は50州中46位で、国内で最も低い州の1つとなっている。
海洋生態系が複雑である中、洋上風力発電による環境への影響を否定する研究論文は数少ない。
これは環境問題なのか?政府の資金を偽装して民間の手に移転しているだけなのではないのか。
知事と外部の利害関係者に、漁業者の生計の立て方と伝統を変え、メイン州に影響を与える権利を誰が与えたのか追及する必要がある。