2022年12月10日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[米国 違法漁業と人権侵害に関わった中国漁業2社と代表者らに制裁措置]
米国バイデン政権は、違法漁業と人権侵害に関わったとして、中国漁業大連海洋漁業まぐろ漁有限公司(Dalian Ocean Fishing:DOF)、“福建省平潭県海洋漁業グループ株式会社”(Pingtan Marine Enterprise:PME)と、その代表者らへの米国内資産凍結などの制裁措置を発表した。
米国財務省外国資産管理室(OFAC)は2022年12月9日(現地時間)、DOF社、PME社、これら企業の8つの系列会社とそれぞれの代表者2人、当該企業に関連した船舶157隻を制裁対象にすることとした。
PME社はナスダック上場企業で、米国が当該上場企業を制裁するのは今回が初めてとなる。
米国財務省は、今回の措置について、IUU漁業、深刻な人権侵害に関与した者に実質的かつ重大な処罰を与えるための米国政府の努力の証だと表明した。
また、世界最大の遠洋漁船団を有する中国漁業界は船員虐待で悪名が高いと言及した。
DOF社所属漁船“Long Xing 629”は、絶滅危機に瀕した種を含めてサメを捕獲し、700キロを超えるヒレ(フカヒレ製品向)を違法採取した疑いがある。
また、この船舶の船員たちが2019年2月から2020年4月までの13ヶ月間、一度も港に停泊せずに1日18時間働き、賞味期限が過ぎた食べ物と塩分を取り除いた茶色の海水で生活していたことが分かった。
この過程で船員5人が死亡し、3人の遺体は本国へ送還されることなく海に捨てられた。
生き残った船員たちは栄養失調となり、約束された給与の一部だけが渡された。
一方でDOF社が中国政府から年間800万ドルもの遠洋漁業補助金を受け取っていたことも分かった。
ケイマン諸島に登録されたPME社の船舶もインドネシア、東ティモール、エクアドルで重大な人権侵害と違法活動に関わっていたとされている。
ある船員が下船すること望む事例があったが、PME社はこれを許さず、3日間食べ物も提供しない等の虐待を報復として行った。
また、重傷を負った船員が2週間治療を受けることができず、命を失った事件もあったとされている。
2020年08月09日 クーリエ・ジャポン https://courrier.jp/news/archives/208253/
[海上で13ヵ月間、搾取され続けたインドネシア人たち]
外国人船員が“奴隷労働”で死亡、遺体は海に沈められ…中国「違法フカヒレ漁船」の闇
インドネシア人の若者24人がタコ漁船と騙されて乗り込んだのは、中国の「違法フカヒレ漁船」だった。1日18時間労働で睡眠も食事もろくに与えられず、次々と病に倒れて死亡した船員の遺体は海中投棄された。中国漁船の上で起きていた労働搾取の深すぎる闇を英紙が報じた。
「動物のように扱われた」と生還者は語る
2019年2月、24歳のセプリとアリは中国のマグロ漁船に乗り込んだ。互いに大の親友と働けること、海の冒険を思って胸が高鳴った。インドネシアの村で無職だった2人は高報酬の約束に心を奪われた。家族には、「大金」を持って帰るから鼻高々になれるよ、と伝えていた。
しかし、2人が家族と再会することはなかった。何週間も言葉にならないほどの苦しみを味わった末に、ともに船上で亡くなったからだ。1日18時間働かされ、飲み水も食べ物もろくに与えられず、暴力にも怯えていたと、生還した元乗組員の1人が無残な2人の死についてガーディアンに語った。
しかも、2人の遺体は海に投げ込まれたという。
24人のインドネシア人船員は、中国の大連海洋漁業の漁船「Long Xing 629」号に乗船し、出航した。同船は違法操業だと報じられており、インドネシア人乗組員で生きて帰ってきたのは20人。その1人によると「動物のように扱われた」と証言し、彼らの弁護団は今回の悲劇を「強制労働と人身取引の典型例」だと表現した。
国際刑事警察機構(インターポール)も長らく、こうした違法・無報告・無規制漁業(IUU)と現代の奴隷制を含む人権侵害との関連に警鐘を鳴らしている。
「Long Xing 629」はマグロ漁の許可を合法的に受けてはいるが、フィニングと呼ばれる違法なフカヒレ漁にも関わっていた。サメは絶滅危惧種だがそのヒレは珍味として珍重され、フィニング漁ではヒレ以外の部分はそのまま海に廃棄される。13ヵ月におよんだ操業で同船が捕ったフカヒレの総量は、800kg近くに達すると言われている。
パスポートを没収され、海水を飲まされた………………….