昨夜降った雨も明け方には止んで、薄日が射していた。
ここ数日は霜も氷も無い穏やかな日が続いている。
友人が新そばを送ってくれたので、早速お昼に湯がいて食べた。
お釜の湯が沸騰したところへ、一人分のそばをぱらぱらとほぐしながら入れると、ほんのりとそばの香りが漂い、お腹がグ~ッと鳴った。
そばが熱湯の中で数回転したところで上げ、冷水に晒してから朴の葉に盛った。
細切りの麺はきれいに揃っていて、ほんのり緑がかったそばは食欲をそそる。
手打ちは平たいのや、やや太くて不揃いが味わいがあっていいと言うそば通もいるが、仕事は丁寧なほうが好きだ。
打ち手はいかつい人だが、そばは繊細で見た目も美しく、歯ごたえもあって喉越しの感触も格別だった。
薬味は近所で頂いた飛騨ネギを、細かく切ってほぐして入れたが、ピリッとした辛味がそばとよく合った。
ざる一枚では物足りなくって、汁そばをもう一杯作った。
汁は、これも頂き物の手造りだし入りしょうゆ「備中むらさき」に味醂を加えて甘口に仕上げた。
手元にあったなめことそばの相性もよく、一品物の材料で作った「なめこそば」もおいしかった。
そばが好きで、折りあるごとに食べているが、都会のレストラン街の名店で食べるそばよりは、今日の方が旨かった。
趣味でそばを打つ人たちは、材料や道具にこだわり、各地のそば店を食べ歩き、研究熱心で舌も肥えているので、プロもうかうかしておれない。
そばを送ってくれた友人も、ボランティアで各地の施設を訪問してそばを打ち、お年寄りから喜ばれている。
何事も経験を積ん分だけ、味わいが深くなるようだ。