今朝は上空を黒い雲が流れ、田畑は霜に覆われていた。
天気が崩れることは無かったが、久しぶりに氷も張って寒い朝となった。
先日、大豆の収穫をしていた老夫婦が、「とうみ」を使って豆とゴミや葉屑などの選別をしていた。
大豆や飛騨特産の「あぶら荏」の収穫時に、たまに見かけることもあるが、今はほとんど使われることは無い。
粟や稗、そばが盛んに作られていた頃は、無くてはならない農具であったが、米中心になってからは機械化が進み、「とうみ」は幻の道具となってしまった。
とうみの上部にある漏斗に穀物を入れ、右手で取っ手を回して風車で風を送り、左手で落下量を調節しながらゴミを吹き飛ばしていく。
口を絞り過ぎると詰まるし、開き過ぎると落下量が多くなってゴミが上手く飛ばせない。
微妙に調整しながら操作するのは、経験が必要なようだ。
数回同じ作業を繰り返して、ようやく10キロほどの大豆が収穫された。
後は、とうみを丁寧に掃除をして作業が終わった。
買った時の日付だろうか、とうみの胴に大正8年9月と記されていた。
大八賀村岩井区は、私の住む高山市岩井町である。
昔は農閑期に鍛冶屋や道具屋が回ってきて、修理をしてくれたが、今は職人が居なくなって自分で直しながら使っているとのことだった。
博物館や民族資料館などでしか目にすること出来ない道具が、現役で使われていることにびっくりするが、使い捨ての時代に100年近くも使い続けることに感動する。
二人の仕事を見ていると、いつも「おしん」の時代にタイムスリップしたかと錯覚してしまう。