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居酒屋さすらい 1004 - 異次元の場末感 - 「立ち呑み いしだ」(大阪市生野区新今里)

2016-04-29 21:46:03 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋

取材先の現場に早く着きすぎて、しばらく近所を散歩していると、まず銭湯を見つけた。時刻は昼を回ったばかり。当然銭湯は開いていない。

次に角打ちを発見した。

藤田酒店という店らしい。

中を覗くと、店はがらんとしている。ついつい、ボクは店に入ってしまった。

仕事前なので、酒は飲めないが、雰囲気だけでも見ておきたかった。家と酒屋がくっついており。店の人は家の奥に引っ込んでいるらしい。ボクが店に入っても、奥からは誰も出てこなかった。

随分、年季の入ったテーブルが店の中央に据えられていた。人が触り、酒が滴り、肴の脂分がたくさん染みついたのだろう。年季の入ったテーブルは、そのまま店の歴史にもなっている。

「この店で飲みたい!」

ボクは直ちにそう思った。

 

取材が終わり、ボクはその店に行ってみようと思った。

だが、ここで思いがけぬアクシデントに見舞われる。

同行した業界団体の専務理事が「一緒に帰ろう」と言った。

まさか、この専務理事を連れて、角打ちに行くわけにもいくまい。

幸いだったのは、店の前を通ると、やはりまだ開店していないようだった。

 

専務理事と近鉄今里駅まで歩いていると、駅の手前に、「立呑み」と書かれた大きな暖簾を見た。

さすが大阪。至る所に立ち飲みがある。

藤田酒店は涙を飲んだが、1日に2つの店を逃す訳にはいかない。今後、この今里にいつ来れるか分からない。次に来るときに、この店が開いているという保証などどこにもないのだ。

すかさず、ボクは専務理事に「ビールでも飲みませんか」と尋ねた。

すると、専務は二つ返事でOKと言った。

「しめしめ」。

「お、こんなところに立ち飲みが」

ボクはわざとらしく言った。時刻は15時過ぎ。開いている酒場はそんなに多くはないだろう。

「入ってみましょうか」というボクの提案に、専務は嫌な顔ひとつせずに同意した。

 

汚い店だった。

オヤジが一人で切り盛りしていて、ボクらはカウンターに陣取り、生ビールをそれぞれ注文した。

ビール300円。さすが、大阪。

ちなみのビールを飲み干した後に頼んだ「チューハイ」は250円である。

 

あての数はそれほど多くはなかった。

「冷奴」や「ポテトサラダ」といった簡単なものが数種類。

専務理事がいたから、ボクは店のメニューに集中できず、残念ながら備忘録をとることができなかったが、かろうじて、その2種類の酒肴は注文した。

「冷奴」も「ポテサラ」も東京と同じものであった。

店の雰囲気は飾り気のない立ち飲み。壁も三和土も統一された鼠色である。

ボクはこういう光景を見慣れていたが、専務理事はそうではなかった。

いや、当たり前である。

専務理事はビールをおかわりしたが、食べ物には一切口をつけなかった。

 

当然、お勘定はボクが支払った。

それから数か月後、某記者を介してこんな話を聞いた。

「『熊猫さんに場末の店に連れて行かれちゃって』って聞いたけれど、どんな店に行ったんだい?」

専務理事にとっては、異次元の店だったらしい。

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