尾道の夜は更けて、しかし、埠頭には次男、痩せた若いお兄さん、年かさの中肉のお兄さん。
釣り仙人らしきおっちゃん。
なぜか、釣りを見に来た年配の女性。
それから、親バカの私。
6人で世間話をしながら、というか年かさのお兄さんが、何も知らない私に釣りのコツを教えてくれたり、女性が話して、他の人は、うなづくだけ。1時間ほど。
夜中11時50分頃。
何も釣れず、満潮。
来た時、波立っていた海が、少し前からどんどんおさまり、ほとんど凪いでいます。
すると、若い痩せ型のお兄さんの1人が、かっこいいマウンテンバイクを埠頭に押してきました。
今日は、もう諦めるのか?と思ったら、もう1人の年かさのお兄さんが、「もっとこっちが、ええで」と示したのは、埠頭の先ギリギリ。
それから、親指大のピンクのウニョウニョと動いている生物を取り出し、針先にグイッとつけました。
さすがに気持ち悪い。
「うわぁ!それなんですか?」と聞くと「コウジ。これで、今日は、赤いやつを釣る。ようつれよるんや。」
釣れても触りたく無い。
それのついた竿を海にぐっと大きくふり入れたと思うと、バイクに立て掛けて、タバコをくわえながら、竿先を見つめます。
次男は、相変わらずエビの模擬餌を虚しく海につけ続けていると。
「来た、来た!」とお兄さん。
あげてみると
「きゃー!私長いのは、苦手。」と年配の女性は、30メートルほと、逃げていきながら、こちらをみています。
「わしゃあ、今日はこれや無いなあ。いらんからおっちゃんあげるわ。」と、イカ一筋のもう1人のおっちゃんに。
おっちゃんは、嬉しそうにペンチで鱧の頭をキュッとして、しめました。
間も無く、「来たきた、30センチ!赤いやつや!」
瀬戸内の鯛!
それから
チヌ!
他にもアナゴを釣って、おじさんに。
途中で、女性が、「その餌、使わせてもらったら」と、言ってくれましたが、次男は、「今日は、エビ狙いですから。」
満潮を数十分過ぎ、「帰ろ。」
ようやく次男も竿をしまいました。
「さよなら」「また、おいで」と挨拶して
帰りの車で「あの餌すごいなぁ!」というと、「あれ、すごい高い。」なるほど、おいそれともらえないわけだ。
釣りって釣らなくても、釣れなくてもおもしろいものなんだと、初めて認識した夜でした。