おすすめ度 ☆☆☆★
2022年・第75回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
パク・チャヌク監督が、殺人事件を追う刑事とその容疑者である被害者の妻が対峙しながらもひかれあう姿を描いたサスペンスドラマ。
男性が山頂から転落死する事件が発生。事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュンは、被害者の妻であるミステリアスな女性ソレを疑うが、彼女にはアリバイがあった。
取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレもまたヘジュンに特別な感情を抱くように。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが……。
本作で描かれるのは、刑事と容疑者が惹かれ合うさま。何よりも犯罪者を捕まえることに心血を注いでいる有能な刑事チャン・ヘジュン、夫殺害の容疑をかけられた中国人の妻ソン・ソレ。この2人が出会ったことで許されざる愛が芽生え、やがて崩壊への道筋を辿っていく。概要だけを抜き取れば、古典的なファム・ファタールものに感じるだろう。しかし、その先入観はストーリーが進むにつれ、根底から覆されていく。
何しろ、容疑者が中国人(タン・ウェイ)。言葉のギャップが、この映画のもう一つのテーマ。
映像がともかく良い。刑事の監視シーン、あの細い塔の様な岩山の登頂シーン、死体の目にたかる蠅(死体の視線からもみていた)、警察での取り調べ、二人でいる室内(刑事の出張先での部屋、犯罪写真)。