どんなに寒かろうと雨が吹きつけようと、やっぱり外には出るべきね。
雨模様の昨日の朝。
バス停に行ってみると先客の女子中学生、ふるえている。そりゃあそうだわ、この寒空に生足だもの。
「寒いね、春休み?」と声をかけると「おばさんも休みですか?」って、そう毎日が春休みね。
「今日はどこに行くんですか?」と聞かれて、そうだわ2,3日前に同じ時間にバス停で待っていた子だなと気づく。
あまりにふるえているから、
「パンツだけ?」と確かめると「スパッツ穿いてます」って。よかったわ安心した。パンツだけなんて恐ろしい。
今日はお別れ式なんです、って。別れたくない人いるのと聞くと「はい、います!」
女子?男子?「女子です」そうかな、まあいいや。いずれにしても、青春。しばし遠い眼をする(ちょっと嘘っぽいね)
*ハナニラ
上大岡行のバスは途中下車する人がいなく、停留所に止まるたびに大勢の乗客が乗り込んできてぎゅうぎゅう詰め。
後部座席に座っていた私の隣の女性が、まだ乗れるのかしらと気を揉んでいる。
「電車通勤の人は毎日こんなに混んでいるんでしょうね。夫もそうなんです」って。
見ず知らず者同士、お互い前向きのまま顔も見ず話を続ける。
「そろそろ定年なんですよ、今から憂うつで。私の自由になる時間がなくなるでしょ、それを思うと・・・
今だっていろいろ制限してくるんだから。ちょっと買い物に行こうとすると、どこ行くんだって聞くの」
そりゃあそうよあなた、朝昼晩3食毎日毎日つくるんだから。毎日朝から晩まで顔を合わせるんだから大変よ。
私は力を込めて脅かす。そのうち慣れるわ大丈夫よ、なんて慰めない。(世の男性諸氏、すまぬ)
「夫源病ってご存知ですか?」
もちろん、知ってますとも。
居間男(いまお)くんもいるのよ、居間にいてどこに行くんだと聞く夫のことね。と教えてあげる。
「休みの日なんか、今でも1日中朝から晩まで居間にごろっとしていてご飯のときだけ来るんですよ」って。
夜外出してちょっとでも遅くなろうものなら、
「女が夜外に出るなんて俺の姉妹はそんなことなかったって怒るんです」
びっくりしてご主人の年を聞くと63歳だと。今時の63がそんなこと言うのかねえといぶかしく思っていると、
「主人、愛媛なんです」だと。
愛媛だから行くところなかっただけなんでしょ(愛媛の方、ごめんなさい)!とばっさり私。
その方「そうなんですよ」と意を強くした返事。
ともかく今からもうご主人退職後を考えると気が滅入って来るんですって。
「上手にいなすことを覚えてね」
と声かけて下車する停留所に来たからお先に失礼した。
妻子のために一生懸命働いてきた男性氏にはまことに申し訳ないとは思うけれど、妻の嘘偽りない気持ち披露。
二度と会うこともない者同士の10分15分の短い時間、路線バスは時に人生相談の場にもなる。