「長かったね」と言いながら天橋立駅で降りた。ここも木が使われていてなかなかの待合室。
夫の希望だった股のぞきをして、そこら辺少し散歩して3時になったし予約していた旅館に入ろうかと。
道路沿い、2階建て、余計なものは一切ない。旅館です、お泊りください、な感じ。
旅館名からして昭和チック
なにしろ旅の計画を立てるという一連の作業を初めてする夫だから、乗車時刻と乗り換えを考えるだけで精一杯のよう。
どこに泊まるの?と訊くと、えっ?という顔をする。最初にそれを決めなきゃ日にちも確定しないじゃないの、ね。
ホテルを検索したらと促されて、パニクッた夫。慌てて天橋立付近の宿泊施設をスクロールしている。
14日空いている旅館、1泊2食付き、それだけで「ここでいいよな」と。
いいいい、どこでもいい、泊まれりゃあいい、私。一応他も見たら、と言いそうになる口をぐっと押えた。
その旅館が「松月」さん。
フロントからして昭和感満載。
誰もいないので「ごめんください」と奥に声をかけるとご主人が出てきた。
2階に案内されて「浜茄子」の間に。途中見たお部屋は〇号室、と番号札が部屋の上にかかっているだけ。あらま。
部屋は6畳以上8畳以下の広さ。畳は6枚だけれど1枚が広い、な感じなの。床の間なし応接セットなし。シンプル。
一番の懸案事項だったトイレは部屋についているか!の問題。
1枚の引き戸を開けたら、私一人が立つといっぱいの場所、左手にトイレ右手に洗面台がある。ああよかった。
だってね、その後「松月」調べたらトイレなしの部屋あり、部屋は宿が決めるとあるんですもの、心配よ。
でもでも、その狭さや宿泊だけです感が不思議と懐かしく落ち着く。
障子を開けるとすぐにお隣さん、向こうは丹後鉄道の線路。ガタゴト電車の通過する音が聞こえる。
お風呂も家庭風呂の大きさ。シャワーは背中合わせに2か所。木の湯舟は3人はどこを見ていいかわからない広さ。
でも私ひとりで入っていたから、ゆったりのんびりここも落ち着く。なまじ大きな風呂にひとりより旅気分に浸れる。
待望の夕食は魚尽くし。
てんぷらも一人鍋もなし、小さな小さなのどぐろの煮つけもついて。個室で飲んで食べて、いやあおなか一杯よ。
飲んでといえばビールは大瓶しかないって。いくらなんでも飲めない。
2合瓶もう1本追加したら、それはもうないって。あらま。でもでも、ましょうがないなの気分になるおもてなし。
朝食も同じお部屋で、日本の正しい朝食の献立。おいしかったわ。
どこぞの引き戸の開け閉めする音が聞こえようが、階段が急だろうが、備品が歯ブラシとタオルだけだろうが、
カードが使えなかろうが、総じて満足よ。この懐かしさは悪くないわ。
ご主人に聞くと、おじいさんの代大正時代に創業したそうな。昔とあまり変わりないそうよ。