昨日もサクラガワさん家のガレージには粗大ごみがたくさん置いてあった。
いつもは早々に電気が消えるのに、このところ夜遅くまで電気がついている。
そういえば。
数か月前からサクラガワさんはゴミ出しに精を出していた。
粗大ごみはゆうに及ばず、燃やすごみの日も缶瓶の日もプラスチックごみの日も。
サクラガワさんはカートに大量に括り付けて収集所まで運んでいた。
1日、2,3回運ぶことざらだった。
我が家の前の道路はアスファルトに滑り止めの丸がえぐられているから、カートはガラガラと音を立てる。
ああ、サクラガワさんが運んでいるなとすぐに分かる。
いつぞやはゴミ出しの夫と収集所で会って、夫は、
「サクラガワさん、旅行に行くみたいですな」なんぞと声掛けして、苦笑させたそうな。
夫は夫でバッグが幾つも括りつけられていたことに驚いて「あんなにあるものか」などの感想もらした。
資源ごみの日は、茶色に変色した全集らしきハードカバー本や衣類が入ったビニール袋が玄関前に並ぶ。
サクラガワさんいよいよ断捨離はじめたのね、あれだけ活用していた原チャリ運転70歳になった途端止めて、
私にも「あなた、70になったらやめなさいよ」
と忠告してくれたくらい潔い人だものね、と思っていたら。
先日、それこそゴミ出しの日に家の前でばったり会って。
「私、引っ越すことになったの」とおっしゃる。もうびっくり仰天。
「息子のマンションの前の部屋が空いて、息子が来ないかって言ってくれたのよ。
3LDKでちょっと広いんだけど息子たちの荷物置けばいいしね。
来年80になるのよ、ちょうどいいかなと思って。
本当はここで息子たちに一緒に住んでもらいたかってけれど、その気はないって言うしね。
行くことに決めたわ
って。
もうさびしいです。別に仲良くしていたわけじゃないけれどやっぱりさびしいです。
2階の窓から高枝切り鋏を出して大きな木の剪定を頑張っていた姿が見られなくなります。
ぶぃーんぶぃーんと電動の奴を操って紅カナメモチの剪定をしていた雄姿も見られなくなります。
思えばあの家でご主人を亡くされて10年近くのおひとり住まい。
以前、途中で牛乳なんて捨てたくなるくらい買い物が大変なのよ、とおっしゃっていたから、
ちょうど潮時と思われたのかもしれない。
海に近いマンション生活が楽しいものになるよう願わずにはいられません。
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