熊野灘を眺めた後は国道42号線を北上する。紀勢線の線路はこの後いくつものトンネルを抜け、新鹿の海岸などを通るのだが国道はぐんぐんと高度を上げていく。坂のきついところで往年の旅の苦労がしのばれる。
尾鷲に到着。三重県南部の中心の町である。ここも地方都市のパターンで国道沿いには大型店も見られる。その一角にあるお魚センター「おとと」で海産物の土産物を買い求めた後、一度尾鷲駅に立ち寄る。まあ、別に立ち寄ったところで何をするというわけではないが・・・・。ちょうど列車のない時間帯で、駅前も駅の中もガランとした感じだった。
ここから線路に沿って走る。と、紀伊長島を前にした古里海岸というところに立ち寄る。ちょうど入り江になっており、夏場の海水浴に適したところである。ただ、この冬の時期は人の姿も見えず、夏場は海の家にでもなるような建物の寂れ具合が、余計に海の寒々しさを物語っているようだ。
紀伊長島の駅前を過ぎるとここで高度を上げ、紀伊と伊勢の国境にあたる荷阪峠に挑む。紀勢線でも最後に開通した区間で、私が乗車した時も気動車がエンジン音をうならせながら登って行った。それをクルマで走るのは初めて。
山の向こうには先ほどまで眺めてきた熊野灘が見える。半島の大きさを感じるところ。
うーん、よく鉄道旅行の文章でも見るのだが、この峠は紀伊長島側から登るのではなく、松阪方面から山の中を抜けてきて、すると遠方に熊野灘が開けるというほうがより印象に残るだろう。
ちょうど太陽が山の陰に隠れる頃。山中の日暮れは早い。もう後は帰り道である。荷阪峠を越えて梅ヶ谷、大内山という力士のような地名を過ぎると紀勢道の高速道路の入口がある。どうせETC割引が適用されるのだし、少しでも早く帰るようにしようということでここから乗車。鉄道や国道があえぎながら走るところを一気に抜けるのは高速道路の技で、これも紀伊長島方面に向けて延伸工事中だが、先ほどの荷阪峠からのような眺めは期待できないかな。
伊勢自動車道に入ると交通量が増えてきた。亀山から四日市にかけて25kmの渋滞という表示も見える。
夕食をということで安濃SAに入る。ここで食べたのは「松阪肉定食」。あくまで「松阪牛」ではなく「松阪肉」である。全国のブランド牛肉に関する表示基準が強化されており、「松阪牛」というのはごくごく限られた条件になるとか。そりゃそうだろうな、松阪牛がサービスエリアの定食で出るわけがない。それでもまあ、普通の焼肉弁当ということで見ればなかなかだった。
この後は新名神~京滋バイパス~名神で帰宅。往路は熊野の山越えで半島の大きさを感じたものだったが、一方で高速道路であっけなく通ってしまう感じもあった。結局一日の走行距離は自宅~自宅で550km。久しく出動のキューブ、お疲れさん。