傘松公園に小ぶりなマイクロバスが停まっている。これが成相寺まで行登山バスである。成相寺そのものには一度クルマで行ったことがあるのだが(その時は西国三十三所巡りをするということは全く想像していなかった)、急な坂でギアをローにして上ったのを覚えている。「登山」バスというのもあながち大げさな名前ではない。
運賃は成相寺の入山料込みで1100円だが、「天橋立まるごとフリーパス」はこの登山バスも乗り放題。とりあえずフリーパスを見せてバスに乗ればいいのかなと思うと、横の小屋から声がかかる。入山料をここで収受するという。バス運賃は700円で、差し引き400円をここで納める。
登山バスの乗客は私一人。登山バス専用道とも言うべき道を上って行く。マイクロバスでも幅がいっぱいで結構スリルがある。運転手は運転しながらガイドもしてくれて、高度を上げると宮津湾の眺めも見ることができる。山門が出るがここは素通りして、その上の石段の下まで行く。ここがT字路になっており、折り返し点でもある。バスは20分置きに出ているので、帰りの時間を気にする必要はない。折り返しのバスに駆け込む人は何人かいたが、それを抜けると私以外に人の気配がなくなった。
石段を上る。途中で右手に出るのが「撞かずの鐘」。江戸期のはじめ、新しい鐘を造るので寄進を募った時、裕福そうな家の娘が「子どもはたくさんいるが、寺に寄進する金はない」と断った。その鐘の鋳造の時に多くの見物客の中にその娘も子どもを抱えて見物に来ていたが、誤ってるつぼの中に子どもを落としてしまった。鐘が出来上がりこれを撞くと、子どもの泣き声、悲しい声が聞こえ、人々はあまりの哀しさに子どもの成仏を願って鐘を撞くのをやめたという。
さらに上がると一言地蔵が安置されている。一つの願いを一言だけお願いすれば叶えてくれるという地蔵。一言地蔵とか、一言神社とか、「一言」というのは結構あちらこちらにあるが、一言で足りなければそれらをハシゴして・・・ということではなく、要はお願いごとでも長々とあれもこれもと言うのではなく、一つに集中するというか、思いを込めるということなのだろう。よくいますわな、お賽銭は10円玉一つで、家内安全から商売繁昌から受験合格に良縁成就まで全部お願いする人って・・・。
本堂に着く。「西国二十八番」の札が目を引く。西国札所の最北端で、南の青岸渡寺から比べると遠くまで来ているなと感じる。
まず手を清めようと手水鉢に向かうと、ここにもあったのが鉄湯船。成相寺で湯船として、あるは薬湯を沸かすために用いられていたそうだ。
他に参拝客のいない外陣に入り、お勤めを行う。またここは靴を脱いで内陣に上がることができる。左手には地獄絵図がある。「美人観音」として知られる本尊の聖観音像は秘仏のため正面の厨子の中だが、その前には本尊そっくりに造られたお前立ちの観音がいる。その両脇を赤鬼と青鬼が守っているから、小ぶりな内陣の中で地獄と極楽がごった煮になっているようだ。
納経所は堂内にあり、参拝を終えて朱印帳と納経軸に朱印をいただく。釣銭と散華は皿の上に出ており、釣銭は計算して自分で取るようにとの貼り紙がある。
納経所と反対側のスペースで納経軸を乾かし、巻き戻してリュックにしまっていると、本堂の階段を上がる足音がする。入ってきたのは袈裟姿の二人の僧侶。「ろうそくと線香で50円やな」などと言いながら火をつけ、鐘をつく。そして開経偈、般若心経の読経を始める。もちろん私が経典を読む(というより文字をたどる)のと比べれば声の張りも節回し(といっていいのか)が全然違う。こうしたところでプロの読経を聴けるとは思わなかった。思わず私も後ろで手を合わせる。こちらは業務の関係で来たようで、読経を終えると住職らしいのと何やら話をしていた。
参拝を済ませ、「傘松公園以上の展望」が望める弁天山展望台に上る。この成相寺からさらにクルマで上ると「日本一成相山パノラマ展望所」というのがあり、前回クルマで来た時はそこまで上がったのだが、成相寺の境内にもこうしたスポットがあるのだ。砂利道を3分ほど上ると鉄製の展望台がある。二層になっていて、男性が下の層で佇んでいる。
ここからは先ほど傘松公園から眺めた天橋立のほかに、外海の宮津湾、栗田半島の向こうの舞鶴湾も見える。西国巡礼の次の札所、松尾寺がある青葉山も霞んでいるがうっすらと見える。もう少し空気が澄んだ季節なら遠方を見ることができるのだろうが、この日は30度を超える真夏日。ペットボトルの水が次々に空いて行く。
さて、これで成相寺を済ませたわけだが、元々のグループ分けならば次に行くべきは松尾寺である。ただ、続けてまた舞鶴までやって来るのもどうかなという気がしてきた。自分でルールを覆すようだけど、松尾寺は切り離すこととして、純粋に次の行き先をくじ引きとサイコロで決めることにする。ということで選択肢で出てきたのが・・・
1.舞鶴(松尾寺)
2.飛鳥(岡寺)
3.箕面宝塚(勝尾寺、中山寺)
4.宇治(三室戸寺)
5.近江(長命寺、観音正寺)
6.東山(今熊野観音寺、清水寺、六波羅蜜寺)
ここで「1」が出れば、やっぱり続けての北近畿訪問ということになる。それはそれで観音さんのおぼし召しというものだろう。
天橋立を眺めながらのサイコロは・・・・「3」。大阪近郊ということになった。松尾寺はまたいずれ、ということだ。
展望台を下り、先ほど登山バスで通り過ぎた平成の五重塔、そして山門まで下りて再びバス停に戻る。戻りのバスも私一人だが、運転手が同じようにガイドしてくれる。宮津湾を望むところではバスを停め、写真を撮るよう促してくれる。
傘松公園に戻る。成相寺では人の気配がほとんどなかったが、さすがに日本三景の展望スポットである。年間数百万人が天橋立を訪れる中、そのほとんどは傘松公園で引き返す。天橋立の砂州はこちらからのほうがくっきりと見える。ただ、先ほどの弁天山展望台のようなもっと高いところから半島全体を見るのも悪くない。古刹に触れるということも含めて、もう一足伸ばしてみるのもオススメである。
行きはケーブルで来た分、帰りは随時動いているリフトに乗る。さてここからどうするか・・・・。
運賃は成相寺の入山料込みで1100円だが、「天橋立まるごとフリーパス」はこの登山バスも乗り放題。とりあえずフリーパスを見せてバスに乗ればいいのかなと思うと、横の小屋から声がかかる。入山料をここで収受するという。バス運賃は700円で、差し引き400円をここで納める。
登山バスの乗客は私一人。登山バス専用道とも言うべき道を上って行く。マイクロバスでも幅がいっぱいで結構スリルがある。運転手は運転しながらガイドもしてくれて、高度を上げると宮津湾の眺めも見ることができる。山門が出るがここは素通りして、その上の石段の下まで行く。ここがT字路になっており、折り返し点でもある。バスは20分置きに出ているので、帰りの時間を気にする必要はない。折り返しのバスに駆け込む人は何人かいたが、それを抜けると私以外に人の気配がなくなった。
石段を上る。途中で右手に出るのが「撞かずの鐘」。江戸期のはじめ、新しい鐘を造るので寄進を募った時、裕福そうな家の娘が「子どもはたくさんいるが、寺に寄進する金はない」と断った。その鐘の鋳造の時に多くの見物客の中にその娘も子どもを抱えて見物に来ていたが、誤ってるつぼの中に子どもを落としてしまった。鐘が出来上がりこれを撞くと、子どもの泣き声、悲しい声が聞こえ、人々はあまりの哀しさに子どもの成仏を願って鐘を撞くのをやめたという。
さらに上がると一言地蔵が安置されている。一つの願いを一言だけお願いすれば叶えてくれるという地蔵。一言地蔵とか、一言神社とか、「一言」というのは結構あちらこちらにあるが、一言で足りなければそれらをハシゴして・・・ということではなく、要はお願いごとでも長々とあれもこれもと言うのではなく、一つに集中するというか、思いを込めるということなのだろう。よくいますわな、お賽銭は10円玉一つで、家内安全から商売繁昌から受験合格に良縁成就まで全部お願いする人って・・・。
本堂に着く。「西国二十八番」の札が目を引く。西国札所の最北端で、南の青岸渡寺から比べると遠くまで来ているなと感じる。
まず手を清めようと手水鉢に向かうと、ここにもあったのが鉄湯船。成相寺で湯船として、あるは薬湯を沸かすために用いられていたそうだ。
他に参拝客のいない外陣に入り、お勤めを行う。またここは靴を脱いで内陣に上がることができる。左手には地獄絵図がある。「美人観音」として知られる本尊の聖観音像は秘仏のため正面の厨子の中だが、その前には本尊そっくりに造られたお前立ちの観音がいる。その両脇を赤鬼と青鬼が守っているから、小ぶりな内陣の中で地獄と極楽がごった煮になっているようだ。
納経所は堂内にあり、参拝を終えて朱印帳と納経軸に朱印をいただく。釣銭と散華は皿の上に出ており、釣銭は計算して自分で取るようにとの貼り紙がある。
納経所と反対側のスペースで納経軸を乾かし、巻き戻してリュックにしまっていると、本堂の階段を上がる足音がする。入ってきたのは袈裟姿の二人の僧侶。「ろうそくと線香で50円やな」などと言いながら火をつけ、鐘をつく。そして開経偈、般若心経の読経を始める。もちろん私が経典を読む(というより文字をたどる)のと比べれば声の張りも節回し(といっていいのか)が全然違う。こうしたところでプロの読経を聴けるとは思わなかった。思わず私も後ろで手を合わせる。こちらは業務の関係で来たようで、読経を終えると住職らしいのと何やら話をしていた。
参拝を済ませ、「傘松公園以上の展望」が望める弁天山展望台に上る。この成相寺からさらにクルマで上ると「日本一成相山パノラマ展望所」というのがあり、前回クルマで来た時はそこまで上がったのだが、成相寺の境内にもこうしたスポットがあるのだ。砂利道を3分ほど上ると鉄製の展望台がある。二層になっていて、男性が下の層で佇んでいる。
ここからは先ほど傘松公園から眺めた天橋立のほかに、外海の宮津湾、栗田半島の向こうの舞鶴湾も見える。西国巡礼の次の札所、松尾寺がある青葉山も霞んでいるがうっすらと見える。もう少し空気が澄んだ季節なら遠方を見ることができるのだろうが、この日は30度を超える真夏日。ペットボトルの水が次々に空いて行く。
さて、これで成相寺を済ませたわけだが、元々のグループ分けならば次に行くべきは松尾寺である。ただ、続けてまた舞鶴までやって来るのもどうかなという気がしてきた。自分でルールを覆すようだけど、松尾寺は切り離すこととして、純粋に次の行き先をくじ引きとサイコロで決めることにする。ということで選択肢で出てきたのが・・・
1.舞鶴(松尾寺)
2.飛鳥(岡寺)
3.箕面宝塚(勝尾寺、中山寺)
4.宇治(三室戸寺)
5.近江(長命寺、観音正寺)
6.東山(今熊野観音寺、清水寺、六波羅蜜寺)
ここで「1」が出れば、やっぱり続けての北近畿訪問ということになる。それはそれで観音さんのおぼし召しというものだろう。
天橋立を眺めながらのサイコロは・・・・「3」。大阪近郊ということになった。松尾寺はまたいずれ、ということだ。
展望台を下り、先ほど登山バスで通り過ぎた平成の五重塔、そして山門まで下りて再びバス停に戻る。戻りのバスも私一人だが、運転手が同じようにガイドしてくれる。宮津湾を望むところではバスを停め、写真を撮るよう促してくれる。
傘松公園に戻る。成相寺では人の気配がほとんどなかったが、さすがに日本三景の展望スポットである。年間数百万人が天橋立を訪れる中、そのほとんどは傘松公園で引き返す。天橋立の砂州はこちらからのほうがくっきりと見える。ただ、先ほどの弁天山展望台のようなもっと高いところから半島全体を見るのも悪くない。古刹に触れるということも含めて、もう一足伸ばしてみるのもオススメである。
行きはケーブルで来た分、帰りは随時動いているリフトに乗る。さてここからどうするか・・・・。