長浜駅近くの黒壁スクエアやアーケード街は長浜の観光地として賑わうところだが、この度訪ねた10月6日はひときわ賑やかな様子だった。
たまたま訪ねて出会ったのが、「アート・イン・ナガハマ2019」である。「芸術版楽市楽座」というのがテーマで、毎年10月の第1土曜日・日曜日に開かれる、もう30年以上続くイベントである。通りの真ん中や広場に出展者のテントが並び、作品の展示販売が行われている。種類もさまざまで、ざっと身歩いただけでも焼き物、木工細工、似顔絵、アクセサリー、ファッション、革製品、布製品とありとあらゆるものが並ぶ。中には模型のミニジオラマもあり、思わず見入ってしまう。ローカル駅と気動車とか、道路のワンカットとローカルバスとか。気動車やバスの実物に近い汚しようも見事である。ひとつ買って帰ろうかと一瞬手が出そうになる。
他にも店舗内での展示や、通りの真ん中に落書きOKの自動車があったり。雑然とした感じだが、街の人たちと気軽に交流することで一緒に楽しむ、また芸術家を育てるというのが主旨のようだ。芸術祭といえば、最近話題になっているのが表現の不自由展だったか、表現の自由とヘイトスピーチ、補助金交付の是非でもめているものがあるが、さまざまな記事を見る限りでは、私はあまり開催に賛同できるものではないなと思う。ある思想や政治理念の宣伝ではないかと観賞する人が感じた時点で、もうアートや芸術から離れてしまっているのではないかと思う。
長浜御坊大通寺に向かう。アートの展示は門前市さながらで、寺の大門ともよく調和している。伏見桃山城の遺構とも伝えられる堂々とした本堂がある。寺の格としては先ほどの総持寺よりも立派に見える。
昼食である。長浜といえば近江牛とか鯖そうめんなどの名物があるが、値段はそれなりにするし、名店は長い列ができている。そこで入ったのが、アーケードの中にある「長浜ラーメン」。前から存在は知っていたが入るのは初めてである。
長浜ラーメンといえば、博多のとんこつラーメンのジャンルの一つとして知られている。それを、長浜の町中にあるラーメン店だから「長浜ラーメン」として、しかも売るのは長浜風のとんこつラーメン。「長浜で長浜ラーメンを食す」形だが・・・。
ラーメンとチャーハンのセットを注文する。やって来たラーメンは、とんこつラーメンの原形をそのまま出したというもの(トッピングを増やしたメニューはある)。替え玉はないが大盛りを採用するシステム。シンプルなとんこつラーメンとしては美味かった。ちなみにお土産ラーメンもあり、さりげなく「博多」の文字も入っている。ひょっとしたらこの店の食材は博多から仕入れていて、それを調理しているのかもしれない。「滋賀県長浜の長浜風ラーメン」は、洒落の効いた長浜土産物かもしれない。
その「長浜ラーメン」の向かいが、以前は海洋堂のフィギュアの展示館だった。それが今はガチャガチャの店とミュージアムの店が別々に移っている。
その移転したミュージアムを訪ねる。長浜駅から見れば北国街道の入口にあり、斜向かいが鯖そうめんの「翼果楼」。
展示室はシンプルかつ大人しくなったのかなと思う。それでも展示品はリアリティがあるし、職人の技法はすばらしい。先ほどの「アート・イン・ナガハマ」が定着する町だけに、こうしたフィギュアが常にあるというのもうなづける。
歴代のさまざまなシリーズの中で、今回目に留まってうなったのが、かつてサッポロビール、ヱビスビールの缶の上におまけでついていた日本各地の名物のフィギュア。北海道、東北、中国、四国、九州とあり、以前はいくつか持っていたのだが転居時に処分してしまったものだ。今こうして眺めると惜しいなという気持ちもあるが、集めたら集めたで結構金のかかる趣味になるなとも思う。
他にもキャラクターものや動物ものなど、小さいながらも精巧にできているフィギュアのあれこれを見て、しばしスモールワールドに浸る。阿修羅像や四天王像といった仏像もある。
一通りぶらついたところで駅に戻り、そのまま新快速に乗車する。遠くに琵琶湖に立つ白波を見る・・・。