ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

あなただけで、何もいらない

2010年10月12日 | 世界とわたし
チリの落盤事故で、約70日もの間、地中約620メートルという、極限の環境に閉じ込められた33人の、下は19才から上は63才の男達。
彼らの中の最初のひとりが、たった今救出されました。
息子と思われる男の子が、強張った顔でじっとワイヤーの動きを見つめていて、カプセルが見えた途端にオイオイと泣き出したのを見て、わたしももらい泣きしました。

これから長い時間をかけて、地中に残るすべての作業員達が救出されることを祈りたいと思います。

あの暗い、狭苦しい地中で、二ヶ月と十日、彼らがどんなふうに自分達の心と闘ったのか、想像を絶する毎日だったと思うけれど、もうそれをしっかり映画にするために、撮影のクルーが映像を撮っているそうです。

鉱山で働く作業員の人達は皆、苦しい生活を続けていると聞きました。
今回のこの、異様とも奇跡ともいえる出来事はきっと、この33人のこれまでの人生を、いいようにも悪いようにも大きく変えることでしょう。
映画になってもいい、本になってもいい。でも、彼らに群がる大勢の人々の中には多分、彼らにとって害になる人がいます。
せっかくつなぎ止めたかけがえのない命が生きる場を、そういう人達に汚されないことを祈るばかりです。

今回の救出にあたり、アメリカの穴掘り名人やNASAの技術がとても貢献したそうです。
チリ政府も、不眠不休で救出作業に取り組みました。
当初の予定よりうんと早く(それでも当人達にとっては長過ぎたでしょうけれど)救出にこぎ着けたのは、そういう人々の心と行動が結びついたからでしょう。

タイトルは、一番年上の、33人の精神的支柱となっている63才のマリオさんの奥さんが言った言葉です。
これを新聞で読んだ瞬間、胸がじーんと熱くなりました。
彼らは30年前に籍だけを入れ、その後はずっと苦しい生活を続けていました。彼が地上に戻ってきたらすぐに、町の教会で結婚式を上げるそうです。

そういうこともきっと、カメラや報道陣でごった返す中で行われるのだろうけれど、彼女が言った「あなただけで、何もいらない」という言葉を大切に、これからの人生を幸せに生きていってほしいと思います。

テレビ中継を観ながら書いているので、今、二人目の作業員の方がカプセルに入る時間になってしまいました。
こうやってひとりずつ、きっと無事に、地上に運ばれますように。
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米国いきなり終わってもたがな事情

2010年10月12日 | お家狂想曲
そのおじさんは、先週も来たおじさんでした。
「あのさ、オレっちはさ、ほん近所のトーマスストリートの家のドライブウェイの工事やってんだけどさ、あんたんちもかなりアレみたいだし、オレっちに任せてみない?」

こういう申し出はこのおじさんが初めてではありません。
近所の工事を請け負った会社の責任者さんはみんな、名刺を持ってうちにやってきて、「直した方がええんじゃな~い」と言いたくなるのです。
だって……これだもんなあ……。



もちろん我々も気にはなっていたのです。特に今年1月2月と雪が多くとても冷えたので、石の部分がバラバラに砕けてしまっていたので、どうにかしないと、と思いながらも、20万円ほどもかかると言われて、なかなか決断できずにいたのでした。

今回のおじさんも、今までと同じように断るつもりでいたのだけれど、このおじさんだけが二度、今度は旦那が居る時にまた来たのでした。
旦那は仕事に行く前で、そういう時は特にリズムを乱されたくない彼は、もちろん一言二言で断るつもりで玄関の方に歩いて行きました。
わたしはまあ、別に聞き耳をたてることもなく、パソコンの前で座っていたのですが、すぐに戻ってくるはずの旦那がなかなか戻って来ません。
あれれ?

「やってもらうことにした。しかも今日」
ぬぁ~にぃ~
ちょ、ちょ、ちょっとちょっと、どういうことよっ

ぶったまげながら話を聞いたところ、「砕けた部分をきっちり直したかったらそれだけで$600かかるけど、ここの部分もアスファルトにしちゃっていいのなら、お宅のドライブウェイぜ~んぶ直して$900でやったげるけどどうよ?」と言われたそうな。
$900なんてそんな……半額じゃね~の?
「マジでその料金でやってくれるの?」
「おぉ~よ、男にゃ二言はねえってことよ」
「ほんまのほんまのほんまやね?」
「ほんまのほんまのほんまやで」

ということで、いきなりの展開に。

突然ゴツンゴツンという音が鳴り始め、


どっひぇ~ごついお兄さん達がいっぱい!

あっという間にアスファルトが敷かれ、それに液体をぶっかけながらドスドスと四股を踏むお兄さん。彼が履いている鉄板靴が渋い!



わたしも仕事に行かなければならないので、外に出てカメラを向けると、サッとポーズを取るお兄さん達。



その横で、ひたすら寡黙に圧縮に励む、さっきの四股踏みのお兄さん。まだあの靴履いてるし。



ほんとに、ほんの1時間あまりでこんなにきれいになりました。



ここアメリカでは、工事や修理を頼んだ場合、それにかかる時間はまず、当初の予定の3倍は覚悟すること。
これは、ここに住んでほんの半年ほどで頭に叩き込まれた常識です。
電話やケーブルの取り付けでさえ、予約した日に来てくれるだけでありがたいと思うようになりました。待ち時間は数時間が常識。無事に物事が済むと感動します。

なのに……。

うちのドライブウェイ、あっという間に、しかもそんなつもりがなかったのに、きれいになりました。今年の落ち葉掃きは楽ちんかも!
これで、この通り一番のオンボロウェイというあだ名(勝手に自分達でつけました)が無くなりました。オヨヨ


今日の最後の生徒の家のお向かえさんちの、小学生の坊やが飾ったハロウィーン用のデコレーションです。
この子は、多分前にもクリスマスの電飾を紹介したと思いますが、この通りの名物っ子で、たったひとりで、自分でデザインもして、何日もかかってこの飾り付けをするそうな。すごいなあ。



それにしても、最後の生徒を教え終わると、もうこんな真っ暗になってしまう季節になりました。
これからまた当分、暖かくなるまで、こんなふうに真っ暗な中を帰らにゃあかんなあ~と、ちょっと憂鬱な気分になりました。
でもまあ、出張レッスンは1週間に2日だけになったので、毎日回っていた数年前のことを思うと、うんと楽になりました。
10年のうちに、少しずつ少しずつ、良い感じです。









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