ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

カーネギーホールの舞台に立てる幸せ

2010年10月01日 | 音楽とわたし
今日午後、あさこと最後の合わせをした。
軽く、二回通して、あとは細かい所のチェックやだめ押しなどをしながら、やり過ぎないように気をつけながら練習をした。
明日に力を残しておく。これが今回の一番の練習。
わたしはよく、心配が無くなるまでとか、あそこをもうちょっととか思ってしまい、ついつい弾き過ぎる。
気が焦っているから、疲れていてもそれを無視してしまって、結局本番の朝に疲れが残り、「またやってしもた!」と後悔する。
今回は舞台慣れしたプロのあさこがパートナーなので、そういう弾く以外の準備の仕方も習っている。

今日のテーマは、一度鍵盤を押して出た音の響きを、どうやったらふくらますことができるか、ということだった。
ピアノは実際には、鍵盤を押し込んだ瞬間に出る音量が最大で、その後はひたすら減音していく。それもとんでもないスピードで。
それをあさこは、声や弦楽器のように、ずっと同じ音量とエネルギーを保って次に行ってみて、と切望する。
やってみる。だめ。もう一度。だめ。これでどうだ。違う。じゃあこれは?う~ん。延々と試してみたけれど、結局できなかった。
彼女が帰ってからも、また録音したりして、どんなふうに聞こえるのか自分でも聞いてみた。
指使いを変え、一度に弾く6音の和音のうちの、あまり表に出なくても良さそうな音を弱めに弾いてみた。
でもまだ違う。
そこで、メロディより1オクターブ下でメロディと同じ音を弾いている声部を少し大きめに弾いてみた。
一番マシに聞こえる。
今回はここまでにしよう。まだまだ改良できる所はあるだろうし、問題も残っているけれど、潔く、ここはこれで良しとして、明日は堂々と、わたしなりに頑張って作り上げた音楽を聞いて楽しんでもらおう。

「あのね、どこかでもしコケても絶対に反省なんかしちゃだめだよ!そんなのはとっとと置き去りにして、思いっきり無かったことにして、先に進むの、わかった?」

今日の練習中、いくつかのミスがあったけれど、言いつけを守って反省や後悔をせずに無視した。気分が爽快だった。

「いいねいいね~、あ、まうみ、なんかつまんないこと考え出すかな~って思ったけど、しなかったね~!それでいいんだよ~。とにかく、音楽の流れがそこで止まらない方が大事なんだから」

なんという、神経の細やかなパートナーだことよ!ゲラゲラ笑って大雑把なフリしてるけど、そんなほんの一瞬のわたしの心の中を、歌いながら覗けるなんて……そしてわたしがどう思ったかまでさっと察知できるなんて……ありがたいなあ。

「いや~、また一段と歌いやすくなったわ~。良くなったよまうみ。バッチリ

まあ、明日の今日だからね、ちょっと大げさに褒めてくれたのかもしれないけれど、嬉しかったよあさこ!さんきゅ!

さあ、明日はこれまでの成果がきちんと出せるように、下っ腹にドスンと気合いを入れて、ゆっくり腹式呼吸しながら舞台に臨みたいと思う。

今日はずっと降っていた雨が上がり、気温がスルスルと下がった。夜中には9℃になる予報が出ている。
掛け布団を一枚増やして寝ることにしよう。

明日、夢のカーネギーホールに立つ自分を、見てもらうことが叶わなかった日本に住む人達、魂になった父やデイヴやポールにも、あさことわたしの演奏が届くよう、響きよ飛べ!と強く祈りながら弾こうと思う。

いっぱい応援してくれてほんとにありがとう!感謝しています。

そして、なんか付け足しみたいになっちゃったけれど、この一週間、わたしの健康管理を一手に引き受けて、料理を作ったり鍼を打ってくれたビル、ありがとう!
無事に、健康に、この日を迎えられたのは、あなたのおかげでもあるのです。ありがとう!
コメント (6)
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