毎日新聞に掲載されていた古い記事です。
古いといっても、3.11以降のものですから、ほんの数ヶ月前のものです。
あの日から後、日本国内では、原発に関する議論が熱心に行われるようになりました。
なにひとつまともに関わることも、考えることもしてこなかったわたしには、
まるでよくできた大長編のドキュメント映画を、目を凝らして見続けているような毎日になりました。
日本の原発のことを調べているうちに、自分の暮らすこの原発大国、そして日本に原発というものをもたらした張本人、いや、張本国アメリカの、原発状況はどうなのか、という疑問がわき始めました。
日本政府の対応を、酷い、あんまりだ、阿呆だと非難しているけれど、じゃあ、もし同じ規模の原発事故がアメリカで起こったら、米国政府はどんな対応に出るだろうか、というようなことも考え始めました。
うちからほんの数十マイルの所にある、インディアン・ポイントという原発は、今年、操業35年を迎えました。
周辺の地域では、操業元年より、電力会社GEとの闘いが続いているのだそうです。
情報の隠匿、放射能漏れ、周辺地域の子供達の白血病、倦怠感、知能低下などの発症確率が、平均のそれよりも多いという事実。
どんなことを訴えても、毎週、毎月のようにデモを行っても、まるでなにも聞こえない、見えないかのように無視が続き、
さらに、あと20年の操業延長の要請が、議会で通りそうなので、それだけはなんとしても阻止したい、と運動家達は言っていました。
作らせてしまったらもうおしまい。
そこには良心がつけ入ることができない、とてつもなく頑丈で頑固な要塞が出来上がってしまうから。
それでも闘わずにはいられない。人間として、子供や、子供達に受け継がせる世界を、このままにしておくわけにはいかない。
今、日本の良心が、再び力を蓄え始めた。
アメリカが犯した罪を背負った日本が、アメリカの良心が勝てないままでいる闘いに挑もうとしている。
今までの良心は、ほんの一部の研究者や特別な立場や現場に居た者、あるいは、自分の人生を破壊される危機に直面した者のものだったが、
今の日本には、そういう者以外の、今まで全く関わったことも、そういう物事が存在していることすら知らなかった者の良心が目覚め始めている。
その力の大きさと強さが、どれほどのものなのか、世界が息をひそめて見守っている。
アメリカ人の運動家と、ずぶ濡れになりながらマンハッタンの街中を歩き、GE本社の正面玄関に大きな折り鶴を置いた時、
これはもう、アメリカだ、日本だと言っている問題ではない。
原発という化け物を許した、すべての国と地域の問題なのだ。
途方もないエネルギーと気持ちの持続を求められる闘いなのだ。
そんな思いをひしひしと感じたのでした。
福島第1原発:設計に弱さ GE元技術者が指摘
【ロサンゼルス吉富裕倫】東京電力福島第1原発と同型の、原子炉を設計した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の元技術者、デール・ブライデンバーさん(79)が、毎日新聞の取材に応じ(この際彼は、同月18日に本人が撮影した顔写真を提供している)、
原子炉格納容器について「設計に特有の脆弱(ぜいじゃく)さがあった」と指摘し、
開発後に社内で強度を巡る議論があったことを明らかにした。
東電によると、福島第1原発はGEが60年代に開発した「マーク1」と呼ばれる沸騰水型軽水炉を6基中5基使っている。
◇議論封印「売れなくなる」
GEでマーク1の安全性を再評価する責任者だったブライデンバーさんは75年ごろ、
炉内から冷却水が失われると圧力に耐えられる設計ではないことを知り、
操業中の同型炉を停止させる是非の議論を始めた。
当時、マーク1は米国で16基、福島第1原発を含め約10基が米国外で稼働中。
上司は「(電力会社に)操業を続けさせなければGEの原子炉は売れなくなる」と議論を封印。
ブライデンバーさんは76年、約24年間勤めたGEを退職した。
ブライデンバーさんは退職直後、原子炉格納容器の上部が小さく、
下部と結合する構造が脆弱で万一の事故の際には危険であることを米議会で証言。
マーク1の設計上の問題は、米原子力規制委員会の専門家も指摘し、GEは弁を取り付けて原子炉内の減圧を可能にし、格納容器を下から支える構造物の強度も改善。
GEによると、福島第1原発にも反映された。
しかし、福島第1原発の原子炉損傷の可能性が伝えられる今、
ブライデンバーさんは「補強しても基本設計は同じ。水素爆発などで生じた力に耐えられる強度がなかった」とみる。
また「東京電力が違法に安全を見落としたのではない」としながらも、
「電気設備の一部を原子炉格納容器の地下に置くなど、複数の重大なミスも重なった」と分析した。
ブライデンバーさんはGE退職後、カリフォルニア州政府に安全対策について助言する原発コンサルタントとして約20年間働き、現在は引退している。
毎日新聞 2011年3月30日 10時49分(最終更新 3月30日 12時32分)
米原子力規制委:耐震不安「無視」…福島と同型のマーク1
日米のマーク1
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の1~5号機と同型の原子炉格納容器「マーク1」の安全性について、
米原子力規制委員会(NRC)が80年に再評価した際、原子炉格納容器の圧力上昇を抑える圧力抑制プールの耐震強度が十分でない可能性を予測しながら、
米国内の電力会社の意見を参考に「無視できる」と結論づけていたことが、毎日新聞が入手したNRCの「安全性評価報告書」で分かった。
日本の原子力安全委員会もこの報告書と同様の国内指針を作成していた。
しかし、米国のマーク1は地震の少ない東側に集中しており、日本の安全基準のあり方を根本的に検証する必要がありそうだ。【吉富裕倫】
◇米原子力規制委、80年に結論
米国の原発の安全性を監督するNRCの内部文書から、マーク1の問題点が明らかになったのは初めて。
開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社などによると、マーク1は世界5カ国・地域に38基あり、
米国24▽日本10(廃炉決定の中部電力浜岡原発1,2号機を含む)▽台湾2▽スイス1▽スペイン1。
マーク1の世界的販売開始後の70年代、圧力抑制プールの設計が十分な強度を想定していなかったことが、GE社の技術者の内部告発などから発覚した。
報告書によると、同プールは、格納容器内に高温高圧の水蒸気が充満した時に冷却、圧力を下げて爆発や炉心溶融などを防ぐ役割であることから、
危険情報を知ったNRCは安全性の異例の再評価を決定。
再評価チームは、地震で圧力抑制プールの内壁への振動圧力や水面の揺れによる水蒸気管の露出などから、
水蒸気が冷やされることなく過度の圧力がかかる可能性を指摘した。
しかし、プール内壁に対する最大圧力を「最高95%の確率で0.8PSI(1平方センチあたり56グラム)以下」とする推計値をもとに、
電力会社側は「地震による冷却水の揺動を無視するよう」提案。
NRC側も最終的に「無視できる」とした。
この報告書に基づく形で、日本の原子力安全委員会も、
87年決定の「BWR(沸騰水型軽水炉)・MARK1(マーク1)型格納容器圧力抑制系に加わる動荷重の評価指針」で、圧力抑制プール内の地震揺動を検討項目に含めなかった。
◇日本に10基 技術者「調査必要」
報告書について、福島第1の建設を請け負った東芝で、マーク1の設計を担当した渡辺敦雄・沼津工業高等専門学校特任教授(環境工学)は、
「原発の技術は確率論。冷却材喪失と地震、余震の同時発生は無視できると考えられていた」と語り、
「(日本の指針は)米国の考え方を輸入したもの。私もNRCと同じ意見だった」と明かした。
一連の事故原因と報告書指摘の問題点との直接の関係は明らかになっていないが、
渡辺氏は「地震で圧力抑制プールの水蒸気管が水面から露出して格納容器全体の圧力を高めた可能性がある」と指摘、
事故との因果関係を含めた強度調査の必要性を訴えた。
しかし、東電広報部はマーク1の安全性について「(原子力安全委員会の)評価指針に従った」と、対応に問題なかったとの見解を示した。
NRCのスコット・バーネル広報担当官は、「報告書は米国の原発に対するもので、日本の原発に対するものではなく、米側が見直す必要はない」と述べた。
【ことば】マーク1
米ゼネラル・エレクトリック社が40年以上前に開発した初期型。
電球のバルブのような形状で、沸騰水型軽水炉を収める上部と下部にあるドーナツ形状の圧力抑制プールが特徴。
80年代以降、上部と下部を一体にして容積を増やすなどしたマーク1改良型、マーク2へと移行した。
毎日新聞 2011年6月9日 2時31分
そしてこれは、今や全く役立たずとなった、一日遅れの、どの新聞もきちんと伝えようとしなかった情報です。
★東京電力が19日夜、福島第1原発2号機の原子炉建屋の二重扉を開けはじめ、20日午前に全開します。
そのため、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質がさらに外に出ます。
東電は「環境への影響はない」と判断、経済産業省原子力安全・保安院も周辺への影響は「十分に小さい」としていますが、
8時間で18億ベクレルの放射性物質が放出されると推定。
今日の外出は避けるか、マスク着用を、と呼びかける団体もあります。
風向きによっては、都内の線量も多少増える可能性があります。
わたし達は、わたし達の良心にもっと栄養と力を与えなければなりません。それも早急に。