ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

池田香代子さんからの質問です。「ずっとウソだった」ってマジで言ってる?

2011年06月28日 | 日本とわたし
以前にも一度紹介した、池田香代子さんのブログ記事より『ずっとウソだった』ってマジで言ってる?を紹介したいと思います。

この記事は、先日の6月11日に行われた『脱原発100万人アクション』で、全国ネットを構築し、朝から晩まで中継を行った岩上安身氏の応援のために、池田さんがスタジオまで行かれた後に書かれたもので、
3.11から今日までの、わたしの心の中のわだかまりを、ぎゅっと鷲掴みして外に引っ張り出してくれました。


斉藤和義 ずっとウソだった


『斉藤さんは岩上さんのインタビューで、「なにも考えずにきてしまった自分にへこんだ」というようなことをおっしゃっていました。
私にも、原発の危険性を知りながら、これといってなにもしてこなかった自分への腹立ちがあります。

けれど、それだけだろうか、私たちはずっとウソに騙されていただけなんだろうか、というわだかまりがありました。
今もあります。
もちろん、25年前のチェルノブイリ事故からずっと原発を不安な気持ちでながめてきた私と、
あまり意識してこなかった斉藤さんたち若い世代の方がたでは、立場が違います。
また、原発立地道県と、そうではない都府県、さらには自分が住む市町村に原発がある人とない人とでは、情報量も思いも異なるでしょう。
つまり、ウソに騙されてきた、と言い切れる度合いが、人によって違うということです。

原発は、いったん事故が起きるとたいへん危険なものだから、絶対安全でなければならない、だから絶対安全に運転している──これが、私たちの多くがなんとなく納得してきた論法でした。
それで、スリーマイルで冷却材喪失事故が起きようが、チェルノブイリで炉心爆発事故が起きようが、あるいはそのたびに世界が原発に慎重になろうが、このくには独立独歩、原発推進にいそしんできました。
この奇観を許したのは、技術立国だという、また秘密国家ではない主権在民の民主主義国家だという自信があったからだと思います。

けれど、危険だから絶対安全とは、すこし冷静に考えれば、論理矛盾もはなはだしいことに気づきます。
しかもこのたびの震災原発事故で、このくには地震や津波に他国に数倍して、もしかしたら世界一脅かされていること、
そうした天災に、原発は技術的にも運営組織的にも、まったく抗う術をもたなかったことを、私たちは思い知らされました。

「危険だから絶対安全」が言い過ぎなら、「危険だけど私たちのもとでは絶対安全」と言い換えてもいいでしょう。
でも、まやかしであることに変わりはありません。
私たちのもとではという自信には根拠がなかった、ただの思い上がりだったということがばれてしまいました。
けれど、なぜこんな見え透いたまやかしがまかり通ってきたのでしょう。
なぜ私たちは、こんなウソにずっと騙されてきたのでしょう。

メインスタジオにいた間、思い出していた文章があります。
伊丹万作「戦争責任者の問題」です(こちらの「青空文庫」で読めます)。
これは1946年、敗戦翌年のエッセイですが、戦後、戦争に協力した責任が各方面で問われました。
伊丹が属する映画界も例外ではありません。
むしろ、戦意高揚のために劇映画やアニメーションを作り、テレビのない時代の映像ニュースを一手に引き受けていた一大メディア産業です。
いきおい、協力者追求もきびしくなります。
でも、と伊丹は立ち止まります。
みんなが、自分は騙されていた、と怒っている、
けれど、子どもはともかくとして、すべてのおとなは騙されると同時に騙してもいたのではないか、
これは正義の戦争だ、絶対に勝つ戦争だ、と。
そして、それにすこしでも背くと見られる言動を、お互い同士が身近であればあるほどきびしく批判しあい、締めつけあってきたのではないか。

「いうまでもなく、これは無計画な癲狂戦争の必然の結果として、国民同士が相互に苦しめ合うことなしには生きて行けない状態に追い込まれてしまつたためにほかならぬのである」

伊丹はきびしくたたみかけます。
「だまされるということはもちろん知識の不足からもくるが、半分は信念すなわち意志の薄弱からくるのである。」
そして極めつきは、「『だまされていた』といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう」

この暗澹とした伊丹の予言はあたったのです。
絶対安全な原発というウソで塗り固められた、経済成長という名の一本道を、私たちはむしろ意気揚々と突き進み、世界のトップに躍り出るかと思われた時期もありました。
けれど、人口減少や世界情勢といった状況に、有効な手も打たずにのみこまれ、1人あたりGDPは08年には17位、2位のシンガポール、4位の香港のはるか後塵を拝することになっています。
幸せ度ランキングだと、順位はもっと下がります。

そこへきて、今回の大地震津波による原発事故です。
私たちは半世紀かけて滅びの支度をしてきたのかもしれません。
地震と津波の被災地への支援復興に投入したいエネルギーもお金も、原発事故のために大幅に削られ、それでもとうてい足りるはずのない後始末費用に、私たちは日々怯えています。
それ以前に、すでに降り積もってしまった、これからも降り積もるかも知れない放射性物質や、それを含んだ食品に怯えています。
豊かな暮らしどころか、次世代に命をつなぐことができるのだろうか、と。

「わがくにの原発に限って、重大な事故を起こすはずがない、
なぜならわがくには世界に誇る技術立国なのだから、
人材は優秀でアメリカのオペレーターのようなミスは起こさないし、
管轄する官僚や原子力エリートも優秀で旧ソ連のようないいかげんなことはない」
と、
「わがくにに限って、戦争に負けるはずがない、
なぜならわがくには神の国なのだから、きっと神風が吹くし、精神力では絶対に負けないのだから」。
1945年を鏡としたような、そっくりの精神構造です。

だけど、もうやめませんか、騙されるのは。
伊丹は書いています。
「現在の日本に必要なことは、まず国民全体がだまされたということの意味を本当に理解し、だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始めることである」
この「現在」は、残念ながら2011年でもあることを認め、思い切りへこんだらそれをバネにして、これからはすこしでもましな選択を重ねていきませんか。
なによりも、このていたらくにたいして責任の軽い、なのにより放射能に影響を受けやすい若い人びとや子どもたちのために。
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『心無い政府』の埋め合わせをする、目覚めた人々による『心ある政府』

2011年06月28日 | 日本とわたし
ダイヤモンド・オンライン「災害ユートピア」著者レベッカ・ソルニットさんへの、インタビュー記事からの一部です。

電力会社の、大株主によって粗方のことは決まっていた株主総会、政府が決定する様々な案件、変更し放題の基準値などなど。
このところ特に、がっかりしたり凹んだりのわたしには、彼女の言葉が心にしみました。



災害が起こってはじめて、人々は政府とは何か、いったい政府に何が期待できるのかを知ることができるし、深く考えることになる。

民主主義における政府の質の向上は、何といっても国民の圧力の大きさいかんにかかっている。

たいていの民主主義社会では、人々が積極的に政治参加していないので、国民のことを眼中に入れず自己利益の追求に走る政治家が多くなるものだ。
その意味でも、政府の過失を指弾し、国民への責任遂行を求める災害時の人々の怒りは極めて生産的なものだと言える。
また、機能不全に陥った政府のひどい姿を見て、一体政府とは何かを考えるようになることも悪いことではない。

政府は官僚制度で成り立っており、よくオバマ大統領がオーシャンライナー(スケジュール通りに大洋を渡る船)にたとえるように、大きくて動きが鈍い。
方向を変えるだけでも、計算とやりとりに大変な時間がかかる。

それに対して、災害時の最初の救援者は、市民社会、コミュニティ、近所の住民、あるいは、そこにたまたま居合わせた人々だろう。
普通の人々は、自己組織化に長けている。

ところが、政府は、地震や二次災害の火事が起こると、そのすべてに対応するリソースを持たない。

サンフランシスコ市は1906年と1989年に大地震に襲われ、その経験から非常に美しいことを言っている。
つまり、救済者は市民であって政府ではない、と。
だから、市民を管理すべき対象や敵としてではなく、協力者とみなし、彼らに訓練をほどこして必要な道具も与えている。
訓練を受けた市民の数はまだまだ十分ではないが、救援や消火、トリアージ(災害時の治療優先順位分け)を市民が自分たちで行えるようにしているのだ。

つまり、こういうことだ。
政府や企業など公式の組織は冷徹で、貧困を生み出し、食糧や医療や住まいに恵まれない人々を生み出す。
だが、非公式な組織がその埋め合わせをし、ホームレスの人々を助けたり、病院でボランティア活動をしたりしている。
目覚めた人々がいて、彼らが非公式な制度として、隠れた「心ある政府」として機能しているのだ。

災害は、彼らの存在を求めるだけでなく、顕著に光をあてるのだ。
この世は資本主義だと言われるが、こうした非公式な制度が多くの生命の持続を可能にしていることを忘れてはならない』


彼女は他にも、いろいろと気づかせてくれる言葉を、たくさん述べておられます。
上記の彼女の名前をクリックして、記事の全文を読んでみてください。
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