今日は昨日とうってかわって快晴、暖かな秋晴れです。
わたしがマンハッタンに行くってぇと、必ず付いてきてくださる?旦那。今日も今日とて、運転手をしてくれました。
ナンシーのアパートメントがあるアッパーイーストまで送ってもらい、そこでひとまずさよならしました。
雲ひとつない、細長の青空。
窓ガラスに映った向かいのビルがぐにゃぐにゃに見えて面白かったので。写真だと今いちでした。残念!
ナンシーのアパートはとっても大きくて、ロビーなんてもうホテルみたい。今日は子供達のためのハロウィーンパーティしてました。
アパートの中庭。ちっちゃなパンプキンが芝生の上に散りばめられておりました。
ロビーではお姫様やバットマンに仮装したチビちゃん達のためのゲームがいっぱい。
楽しい気分でナンシーの部屋がある11階まで上がり、なぜか部屋の前で立っていたナンシーの熱烈歓迎を受けて部屋の中に入りました。
……
ここからは多分、ブログに書くことではないと思います。
とてもプライベートなことだし、なんといっても個人的な悪口になるからです。
でも、このことはわたしにとってはとんでもなくショックな、信じ難いことだし、人生的に書き留めておきたいことなので、そうします。
彼女は彼女の娘さんと同居でその部屋を借りているようでした。
ワンルームの、そこそこの大きさのその部屋には、シングルベッドが二台、アップライトピアノが二台、それにハープが二台、
それらの周りには、乱雑に積まれた本、洋服、日用品、シーツや布団などがごちゃごちゃに置いてあり、いったいどこをどうやってピアノまで歩いて行けばいいのか分からない状態なのでした。
大袈裟ではなく、まるでわたし達が引っ越しした日の、ただただ荷物を中に詰め込んでしまったあの夜の部屋みたいに。
床には新聞紙の欠片や埃が散らばり、部屋の中には、ずっとそこから動かずに薫製されてしまったようなすえた空気の臭いがしました。
わたしはもうそれだけでクラクラしてしまって、ここで長い時間居ることは耐えられないかもしれないと思いながらピアノの方に向かいました。
まずは再びピアニッシモの話があり、彼女の音楽論の披露があり(あんまり分からなかったけど)、遅れてくるタイソンを待つ間、適当に練習して、と言われたので、わたしも観念してピアノを弾き始めました。もちろんピアニッシモで。
彼女の娘さんはその間もずっと、これまた荷物が山と積まれた部屋の片隅にノート型パソコンを置き、こちらをチラリとも見ません。
大人なのか子供なのか、ついさっきまで布団に潜って寝ていたみたいな様子で、背中を丸めて画面を見入っています。
変な感じというより、だんだん恐くなってきた頃、タイソンがやってきました。
ナンシーは手を叩いて喜び、わたし達に弾いて弾いてとせがむのだけど、タイソンがひとり立つ場所さえも無いので、またまた荷物の大移動。
本当に、彼女達はこの部屋で暮らしているんだろうか……。さすがに写真を撮らせてとは言えなかったけれど、マジで記念に撮りたかったです。
再びタイソンにもピアニッシモ要請があり、彼は彼で予め自分のヴァイオリンにミュートをかけてあったので、とりあえず演奏を始めました。
すると……、
「ちょっとごめんねタイソン、わたしのメールを理解してくれてないみたいだけど」とナンシー。
「いや、ボクは分かってるつもりだけれど」
「でも、さっきの音はピアニッシモじゃないと思うけど」
本気なんだ……本気で、どこもかしこもピアニッシモで演奏しろって言ってるんだ。
それから奇妙なピアニッシモアンサンブルが始まりました。
お互いに、強弱が伴う表情をつけるのはあきらめて、息づかいやタイミングのことだけに絞って合わせることにしました。
ところが、わたし達が演奏を途中でやめて、もう一度気になる部分を合わせようとすると決まって、ナンシーが手を挙げるのです。
「ねえ、わたしからの意見聞きたい?」
もちろん聞きたくないけど、そんなこと言えないわたし達。はあ~と返事すると、
「あのね、わたしが思うに……」それからたっぷり5分はしゃべりまくるナンシー。話はわたし達の演奏とは全く関係の無い世界に。
三度目の挙手があり、「わたしの意見だけど、ピアノとヴァイオリンの語り合いが感じられないわ。表情が平坦っていうか……」とナンシー。
この時ばかりはタイソンがキレて、「ピアニッシモに抑えているから、できることもできない!」と反論してくれました。
とりあえず、タイソンとわたしは音楽的に性格が合うと分かって嬉しかったし、彼のヴァイオリンはやっぱり素晴らしかったし、
彼の音楽的なこだわりや表情のつけ方にとても刺激を受けたし、なによりも、たとえピアニッシモ限定でも、やっぱり一緒に演奏するのがとても気持ち良かったのだけど……。
それで、わたし達がなぜ彼女のアパートに居るのか、その当の目的であるハープとの演奏をしようということになって初めて、
彼女は実は、ほとんど弾けないのだということが分かったのでした。
彼女には、わたしやタイソンと一緒に演奏したい、という望みがある。そういうことだったのでした。
彼女があちこちの山を崩して引っ張り出してくる埃だらけの楽譜を、我々は初見で演奏できるのだけど彼女が弾けない。
それでも次々に「これをやってみたい」、と言うので試すのだけど、やっぱり弾けない。
だんだん、もしかしたら彼女は心のどっかが壊れているのかもしれない……そんなことまで思えてきてしまいました。
わたしは彼女の見えないところでタイソンに「もうこの部屋から出た方がいい」と言い、
それでも彼も心配してくれてるのか、ナンシーがわたしと合わせたいと言う、ハープとピアノのための曲を弾いている間居てくれました。
タイソンが部屋から出てから、彼女はわたしに、「これからもここに来て一緒に演奏してもらえないか」と頼むので、
「それはいいけれど、まずはちゃんとあなた自身が弾けるようになってから連絡してね」とはっきり言いました。
すると、「わたし、つい先日仕事を失ったのね。けれども音楽は続けたいし、まうみのような人に演奏を聞いてもらいたいのね。ハープの先生に月謝を払うので精一杯なので、悪いけどまうみ、練習がてらここに来て教えてもらえないかしら、無料で」とナンシー。
同じ協会の仲間として練習するんだから、無料もなにもありません。みんなそうやって、互いの時間とお金を費やして練習しています。
でも、彼女の部屋に入ってからずっと、わたしの心を占領している『怖れ』を無視するわけにはいきません。
なにかが壊れている……そんな気がしてならないのです。
それに、なによりも、わたしは埃アレルギー。喉はほとんど詰まった状態になっていたし、前頭部がドンヨリと重たくなっていました。
ここに来るのは今日が最後にしよう。
彼女にはっきりそうは言わなかったけれど、上手なウソを考えて、できるだけ彼女を傷つけないように、あの世界から離れたいと思います。
ナンシーはタイソンとわたしに、あの部屋を練習部屋に使って欲しいと何度も何度も言ってきてくれたのだけど、
多分彼も、もはや二度と行こうとは思っていないと思います。
不思議な、そしてちょっと恐ろしい、ピアニッシモ限定のリハーサルなのでした。
帰りの車の中から、ちょっとニューヨークっぽい写真が撮れました。エンパイアステートビルと昔のニューヨーカー誌のビルです。
まだ少し放心状態ではありましたが……それにしちゃなかなかのショット、でしょ?
わたしがマンハッタンに行くってぇと、必ず付いてきてくださる?旦那。今日も今日とて、運転手をしてくれました。
ナンシーのアパートメントがあるアッパーイーストまで送ってもらい、そこでひとまずさよならしました。
雲ひとつない、細長の青空。
窓ガラスに映った向かいのビルがぐにゃぐにゃに見えて面白かったので。写真だと今いちでした。残念!
ナンシーのアパートはとっても大きくて、ロビーなんてもうホテルみたい。今日は子供達のためのハロウィーンパーティしてました。
アパートの中庭。ちっちゃなパンプキンが芝生の上に散りばめられておりました。
ロビーではお姫様やバットマンに仮装したチビちゃん達のためのゲームがいっぱい。
楽しい気分でナンシーの部屋がある11階まで上がり、なぜか部屋の前で立っていたナンシーの熱烈歓迎を受けて部屋の中に入りました。
……
ここからは多分、ブログに書くことではないと思います。
とてもプライベートなことだし、なんといっても個人的な悪口になるからです。
でも、このことはわたしにとってはとんでもなくショックな、信じ難いことだし、人生的に書き留めておきたいことなので、そうします。
彼女は彼女の娘さんと同居でその部屋を借りているようでした。
ワンルームの、そこそこの大きさのその部屋には、シングルベッドが二台、アップライトピアノが二台、それにハープが二台、
それらの周りには、乱雑に積まれた本、洋服、日用品、シーツや布団などがごちゃごちゃに置いてあり、いったいどこをどうやってピアノまで歩いて行けばいいのか分からない状態なのでした。
大袈裟ではなく、まるでわたし達が引っ越しした日の、ただただ荷物を中に詰め込んでしまったあの夜の部屋みたいに。
床には新聞紙の欠片や埃が散らばり、部屋の中には、ずっとそこから動かずに薫製されてしまったようなすえた空気の臭いがしました。
わたしはもうそれだけでクラクラしてしまって、ここで長い時間居ることは耐えられないかもしれないと思いながらピアノの方に向かいました。
まずは再びピアニッシモの話があり、彼女の音楽論の披露があり(あんまり分からなかったけど)、遅れてくるタイソンを待つ間、適当に練習して、と言われたので、わたしも観念してピアノを弾き始めました。もちろんピアニッシモで。
彼女の娘さんはその間もずっと、これまた荷物が山と積まれた部屋の片隅にノート型パソコンを置き、こちらをチラリとも見ません。
大人なのか子供なのか、ついさっきまで布団に潜って寝ていたみたいな様子で、背中を丸めて画面を見入っています。
変な感じというより、だんだん恐くなってきた頃、タイソンがやってきました。
ナンシーは手を叩いて喜び、わたし達に弾いて弾いてとせがむのだけど、タイソンがひとり立つ場所さえも無いので、またまた荷物の大移動。
本当に、彼女達はこの部屋で暮らしているんだろうか……。さすがに写真を撮らせてとは言えなかったけれど、マジで記念に撮りたかったです。
再びタイソンにもピアニッシモ要請があり、彼は彼で予め自分のヴァイオリンにミュートをかけてあったので、とりあえず演奏を始めました。
すると……、
「ちょっとごめんねタイソン、わたしのメールを理解してくれてないみたいだけど」とナンシー。
「いや、ボクは分かってるつもりだけれど」
「でも、さっきの音はピアニッシモじゃないと思うけど」
本気なんだ……本気で、どこもかしこもピアニッシモで演奏しろって言ってるんだ。
それから奇妙なピアニッシモアンサンブルが始まりました。
お互いに、強弱が伴う表情をつけるのはあきらめて、息づかいやタイミングのことだけに絞って合わせることにしました。
ところが、わたし達が演奏を途中でやめて、もう一度気になる部分を合わせようとすると決まって、ナンシーが手を挙げるのです。
「ねえ、わたしからの意見聞きたい?」
もちろん聞きたくないけど、そんなこと言えないわたし達。はあ~と返事すると、
「あのね、わたしが思うに……」それからたっぷり5分はしゃべりまくるナンシー。話はわたし達の演奏とは全く関係の無い世界に。
三度目の挙手があり、「わたしの意見だけど、ピアノとヴァイオリンの語り合いが感じられないわ。表情が平坦っていうか……」とナンシー。
この時ばかりはタイソンがキレて、「ピアニッシモに抑えているから、できることもできない!」と反論してくれました。
とりあえず、タイソンとわたしは音楽的に性格が合うと分かって嬉しかったし、彼のヴァイオリンはやっぱり素晴らしかったし、
彼の音楽的なこだわりや表情のつけ方にとても刺激を受けたし、なによりも、たとえピアニッシモ限定でも、やっぱり一緒に演奏するのがとても気持ち良かったのだけど……。
それで、わたし達がなぜ彼女のアパートに居るのか、その当の目的であるハープとの演奏をしようということになって初めて、
彼女は実は、ほとんど弾けないのだということが分かったのでした。
彼女には、わたしやタイソンと一緒に演奏したい、という望みがある。そういうことだったのでした。
彼女があちこちの山を崩して引っ張り出してくる埃だらけの楽譜を、我々は初見で演奏できるのだけど彼女が弾けない。
それでも次々に「これをやってみたい」、と言うので試すのだけど、やっぱり弾けない。
だんだん、もしかしたら彼女は心のどっかが壊れているのかもしれない……そんなことまで思えてきてしまいました。
わたしは彼女の見えないところでタイソンに「もうこの部屋から出た方がいい」と言い、
それでも彼も心配してくれてるのか、ナンシーがわたしと合わせたいと言う、ハープとピアノのための曲を弾いている間居てくれました。
タイソンが部屋から出てから、彼女はわたしに、「これからもここに来て一緒に演奏してもらえないか」と頼むので、
「それはいいけれど、まずはちゃんとあなた自身が弾けるようになってから連絡してね」とはっきり言いました。
すると、「わたし、つい先日仕事を失ったのね。けれども音楽は続けたいし、まうみのような人に演奏を聞いてもらいたいのね。ハープの先生に月謝を払うので精一杯なので、悪いけどまうみ、練習がてらここに来て教えてもらえないかしら、無料で」とナンシー。
同じ協会の仲間として練習するんだから、無料もなにもありません。みんなそうやって、互いの時間とお金を費やして練習しています。
でも、彼女の部屋に入ってからずっと、わたしの心を占領している『怖れ』を無視するわけにはいきません。
なにかが壊れている……そんな気がしてならないのです。
それに、なによりも、わたしは埃アレルギー。喉はほとんど詰まった状態になっていたし、前頭部がドンヨリと重たくなっていました。
ここに来るのは今日が最後にしよう。
彼女にはっきりそうは言わなかったけれど、上手なウソを考えて、できるだけ彼女を傷つけないように、あの世界から離れたいと思います。
ナンシーはタイソンとわたしに、あの部屋を練習部屋に使って欲しいと何度も何度も言ってきてくれたのだけど、
多分彼も、もはや二度と行こうとは思っていないと思います。
不思議な、そしてちょっと恐ろしい、ピアニッシモ限定のリハーサルなのでした。
帰りの車の中から、ちょっとニューヨークっぽい写真が撮れました。エンパイアステートビルと昔のニューヨーカー誌のビルです。
まだ少し放心状態ではありましたが……それにしちゃなかなかのショット、でしょ?