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角田光代『キッドナップ・ツアー』

2007-02-01 16:28:23 | ノンジャンル
 「Presents」が気に入ったので、しばらく読む事に決めた角田光代さんの作品「キッドナップ・ツアー」を読みました。
 夏休みの初日、路上で小学生の少女ハルは別居している父親にユウカイされます。ファミレスで食事をしショッピング・センターで服を買ってもらい、古い旅館に泊まると、父はさっそく家に電話して何らかの交渉をしていますが、うまくいってないようです。翌日車を返すと、釣り堀を業とする神林さんという父の学生時代からの友人と合流し、その人の車で駅まで送ってもらい、列車で海の近くの民宿に向かいます。翌日の朝、父はまた家に電話をしていますが、「フェアじゃない」と父が言っているのが聞こえます。ハルは同じ民宿に泊まる「ちず」という名の女の子と友達になります。二人は住所の交換を約束しますが、その前に父は民宿を発ってしまいます。ハルは父の勝手さに腹がたち、路上で「誰か、助けて~」と絶叫し、二人とも警察に連れて行かれ、夕方には釈放されます。その夜、ハルは母に電話をし、無事を伝え、父の要求を聞きますが、母は答えず、ハルもどこにいるかは言いません。そしてその夜、父に誘われて夜の海に浮かんでいると、誰ともつながってない、でも寂しくない不思議な快感を味わいます。翌日、列車を乗り継いで、夕食抜きの状態で苦労して長い上り道を歩いて辿り着いたのは、小さな寺でした。無理矢理頼み込んで、泊まらせてもらい、おばあさんから人を探す女性の幽霊の話を聞き、親子は肝試しに向かいます。次の日、バスと急行電車を乗り継いで、大きな町に来ますが、薄汚れた格好の二人はキャンプ場で寝ます。翌日の長い電話で、父母の取り引きは成立し、電車賃もなくなった父は捨ててある自転車を直して、それで家へ帰ろうとします。途中、子供3人と猫6匹と暮らす父の知り合いの家に寄り、金を借りて、電車で帰ろうとしますが、ハルがこのまま逃げようと父に言い出します。父は責任転嫁の醜さを説き、ハルは晴れ晴れした気持ちで父と別れます。
 最後まで、父の母への要求は明かされません。父はすぐふざける軽く明るいキャラクターで、ハルとの珍道中が楽しく語られます。が、読んでいて何か物足りなさを感じます。予定調和的なものが物語りを支配しているせいなのではないか、と思います。何か次に起こることが読めるような、そんな感じです。設定はとても面白いのに、それなりの小説で終ってるのは残念でした。