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石坂洋次郎『陽のあたる坂道』

2007-02-19 16:17:26 | ノンジャンル
 山田詠美さん推薦の石坂洋次郎氏の代表作「陽のあたる坂道」を読みました。
 1章「田代家の人々」では、主人公の大学国文科3年・倉本たか子が、田代家の長女の高校生で足が不自由なくみ子の家庭教師として紹介されます。田代家は父の玉吉、母のみどり、優等生で性格もいい長男の雄吉、いたずら好きな次男の信次にくみ子の5人で構成されています。
 2章「新しい隣人」では、アパートの隣人の中年女性トミ子が田代家の住所のメモを持っているのをたか子が見つけ、たか子の近辺を探る男が出現します。そして、家庭教師を紹介してくれた山川氏はたか子に、信次はトミ子の子であり、田代夫婦と自分とが以前三角関係だったことを語ります。
 3章「父と子」では、玉吉は信次から自分の母の安否を聞かれ、くみ子にも母に自分の出生の事実をつきつける、と言います。雄吉はたか子の部屋で、トミ子のもう一人の異父息子の民夫に会い、信次に似ている事に気付きます。
 4章「『オクラホマ』」では、たか子はくみ子に誘われて行ったジャズバーのボーカルが民夫なのに驚きます。3人は食事をし、民夫とくみ子は意気投合します。玉吉と山川は民夫のことを相談し、銀座で民夫とたか子とみく子の三人組を目撃します。
 5章「犬小屋と野球場」では、犬小屋の中で、たか子は信次から母のことを打ち明けられ、トミ子のことをしゃべらされます。そして信次の部屋で、田代負債と山川の関係を聞きます。雄吉は、民夫とくみ子を会わせないでほしいと言いますが、たか子は反対します。
 6章「正月風景」では、正月にトミ子が出かけた後、信次が訪ねてきて、民夫を彼をつけます。信次はトミ子の宴会に参加します。たか子はくみ子の足のケガは信次のせいではなく、実は雄吉のせいだということを知ります。
 7章「約束」では、雄吉がたか子にプロポーズを受け入れてもらえますが、キスは拒否されます。
 8章「そよぐ風」では、たか子は民夫に信次が兄さんであることを教え、玉吉は家族の前で信次の母がみどりでないことを発表します。雄吉はたか子に強引にキスします。
 9章「たたかい」では、山川とみどりの密会を玉吉は目撃します。玉吉はバーのマダム雪子に50万貸す代わりに、クリスチャンの山川を誘惑してくれるように頼みます。
 10章「あいよる魂」では、トミ子、民夫、たか子が住むアパートに信次が来て、自分がトミ子の子であることを認めさせます。
 11章「取引き」では、雄吉と間違われた信次は、雄吉に2度も子供を堕ろされ、今は玉吉の愛人のゆり子の家に連れてこられます。ゆり子のいとこ上島は雪子のバーのバーテンです。信次は雄吉にゆり子の件の身代わりになる代わりに、たか子との交際を認めさせます。
 12章「波紋」では、雄吉と信次はみどりに100万円出させることに成功しますが、ウソはすぐにばれます。
 13章「ダブル・プレイ」では、病気の山川を民夫と雪子が訪れ、雪子の店にはゆり子が入ります。雪子の企みで、玉吉とゆり子と雄吉がラブホテルではち合わせします。
 14章「曇後晴れ」では、くみ子とたか子が引き合わせた民夫と信次は、けんかの末、和解します。その夜、信次はたか子にキスします。
 15章「わが道を」では、たか子は信次を憎めないと民夫に言います。そして雄吉と信次の前で、信次を愛してると言います。くみ子は手術でびっこが治ることを民夫に知らせ、喜ばせます。

 という小説なのですが、昭和30~40年代の山の手の男たちが、表面は道徳的な家庭の一員という顔をしながら、裏ではいかに性的に汚れていたか、が分かります。その汚れた世界を若い人たちがすがすがしく乗り越えて行くというある種の青春ドラマになっている訳です。
 ただ、会話が古い!「おじさま、私はそう言う事は決して許せません」などと平気で言う。これは当時の映画にも言える訳で、本当にこういう会話を当時の若者はしていたのか、それとも小説や映画の世界の中だけの話なのか、よく分かりませんでした。
 純真な若さを信じることのできる人には楽しく読めるでしょうし、そうでない人には唾棄すべきものかもしれない、そんな小説でした。