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天童荒太『あふれた愛』

2007-03-30 16:39:52 | ノンジャンル
 今日紹介する天童荒太さんの作品は4つの短編からなる「あふれた愛」です。
 「とりあえず、愛」は、妻が「子供を殺してしまいそう」と告白し、実家に帰されると手首を切り自殺未遂を起こし、入院します。退院して元気に生活を送れるようになると、離婚を持ち出し、今度は夫が倒れ入院し、2日に1度は見舞いに来てくれる妻を見て、自分の身勝手さにようやく気付く男の話。
 「うつろな恋人」は、過労で倒れた彰二40才は、ストレス・ケア・センターに入院中、センターの正面の店で働く智子と知り合います。智子の彼が彼女のことを書いた詩集を読まされますが、ひどいポルノでした。純真な彼女が男に利用されていると思った彰二に、センターの職員は智子も家庭環境と恋愛の失敗からセンターに入院していて、男は彼女の中だけに存在するものだと告げ、医師ともども彼女に干渉するなと警告されますが、彼女の幻想を正すため、彼女を尾行し、彼女が彼の部屋だと思っている部屋へ侵入し、肉体関係を持ってしまいます。彼女は詩人の男と彰二を同時に愛することで苦しみ、自分に火を放ち、跡の残る大ヤケドを負いますが、やがて、二人の男が1人の人格に統合され、退院できるようになる、という話。
 「やすらぎの香り」は、ストレス・ケア・センターに入院中の男女が愛しあい、医師から6ヶ月外界のアパートに同居し、毎日日記を書くことができたら、結婚を認めるという条件を出され、支えあいながら生活していく様子を描いた話。
 「喪(うしな)われゆく君に」は、コンビニでバイトする浩之の前で、客がいきなり倒れ、死んでしまいます。後日、未亡人が訪ねて来て、その時の話を聞きたいというので、時間と場所を指定して会うことにしますが、デートで6時間遅れたにもかかわらず、彼女は待ってくれていました。それから度々彼女の部屋を訪れるようになり、過去に夫婦で各地で撮った写真を見せられ、自分も彼女を連れて同じ場所で写真を撮り、追体験しますが、やがて彼女が嫌がり始め、未亡人も引っ越し、元の生活に戻ります。そしてコンビニで倒れ、最後の追体験をする、という話です。
 一話は、読んでる最中から夫の身勝手さに腹が立ち、二話も、やってはいけないおせっかいをする主人公に腹が立ち、ラストで「ざまなみろ」といった感じでした。三話は、精神病院に入院した人たちがいかにして社会復帰して行くかをドキュメンタリーを見ているように描けていて、大変貴重な小説だと思ったので、「Favorite Novels」の「天童荒太」の項に詳しいあらすじや紹介をアップしておきました。興味のある方は、ぜひご覧ください。